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第3章 準備を整えよう
第21話 脅迫状
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矢は、俺たちを狙ったものなのだろうか。とにかく、ファリスが押してくれなかったら危なかった。飛んできた矢を拾う。よく見ると、手紙のような物が巻き付けられていた。
「矢文……か?」
俺は、その手紙を開いた。
《
亜人アリシアと高級な獣車は預かった。返して欲しければ金貨100枚を日が落ちる前に『干からびの沼』までもってこい。お前達が報酬をたんまり持っていることは知っている。もし、持ってこなかったらアリシアをひどい目に遭わせるぞ。
》
それは、脅迫状だった。獣車を盗むならまだしも、俺たちの稼いだ金を要求するなど、もってのほかだ。だが、アリシアという人物が気になる。
「アリシアって……誰だ?」
何か、もやっと引っかかる名前だ。
「許せないっスね、大将に喧嘩うるなんて」
「ケンタ君がいないな……無事逃げたのか……それとも、一人で獣車を追ったのか。お気に入りの獣車とかいってたからな、取り返そうとして無茶しなければいいんだけど」
「状況はこうっスね、どこかの誰かがケンタ君の獣車とアリシアって女をここから持ち去り、金貨を要求。ケンタ君は、獣車を取り戻そうと後を追った。ってなとこっスかね」
関係ないやつまで巻き込むとは、なんて卑劣な奴等なんだ!
「ずいぶん計画的だな……俺たちは何者かに見張られていたのか?」
「干からびの沼はここから結構距離があるっス、ミツユスキーの旦那に頼んで足の速い獣車を用意してもらうっス」
俺たちは、ギルド施設の店にいるミツユスキーに脅迫文を見せ、馬車の準備をお願いした。
「今、高級獣車は出払ってます。荷車ならありますが、乗り心地は保証できません」
あったのは、幌なしの荷車だった。
「ああ、それでいい。急ぎの用事だ」
「これは急がないと……オルトロスを4匹つけます。速度はかなり出るでしょう」
ミツユスキーは、慌ててオルトロスを固定し御者台に乗り込む。その荷台にファリスも飛び乗る。
「容赦は禁物っスよ、大将」
ファリスの言うとおりだ。俺たちに喧嘩を売った奴らを、ただで済ますわけにはいかない。二度とこういう輩が出ない様に叩きのめさなければならない。
「準備ができました。いつでもいけます」
俺たちは、ミツユスキーとファリスと共に、干からびの沼へ出発した。
念のため、取引用に金貨をミツユスキーに用意してもらった。もちろん、タダで渡す気はない。金貨袋の中は、一枚だけ『ココココのコイン』が混ざっている。ココココのコインは、今でいえば発信機のようなものだ。
それと、レーダーの役割をする『ココココ羅針盤』というものがある。これを使えば常にコインの場所を確認できるというすぐれものだ。
ミツユスキーは万が一のためにと、いつも自分の持ち金にそのコインを忍ばせているのだが、今回、それを使わせてもらった。商人の用心深さには深く感心する。
みすみす相手に金貨をくれてやることはない。コインで居場所を突き止めて、脅迫状を送った奴らを一網打尽にするだけだ。
荷車は草原の小道を、悲鳴をあげながら走る。たまに突き出た岩に車輪が乗り上げると、弾かれたように車体が浮く。ファリスは、平気そうに座っているが、俺にとっては胃がえぐられそうな振動だ。
「まだか、ミツユスキー」
「この草原を抜けた先の林の奥です」
少し、安心した。ふと、矢文にあった名前のことを思い出す。
「そういえばミツユスキー。アリシアって知ってるか?」
「アリシアさん? ……ああ、ケンタ君の事ですか?」
と、ミツユスキーが即答した瞬間、自分の中にあったもやもやがはじけ飛んだ。
──思い出した! ケンタ君の名前は、出会った時に俺が勝手に命名した名だ。うかつだった。本当の名前はケンタウロス・ノアリシア……いや、ケンタウロスのアリシアだ!
「ミツユスキー、速度を上げてくれ」
「落ちないように気を付けてください」
ミツユスキーは、オルトロスを鞭で叩き、荷車を加速させた。
一時間ぐらい荷車を飛ばすと、目的地の干からびの沼に着いた。俺たちは獣車を降り、沼地へと足を運ぶ。
沼は、名前のとおり水気がなく、乾燥して割れた地面をむき出しにしていた。その沼の跡地を囲むように林がある。敵が潜んでいてもおかしくはない場所だ。
獣車を盗み、ケンタ君をさらったのは、いったいどんな奴等なのだろうか。俺たちは警戒しながら、奴等が姿を現すのを待ち続けた。
「矢文……か?」
俺は、その手紙を開いた。
《
亜人アリシアと高級な獣車は預かった。返して欲しければ金貨100枚を日が落ちる前に『干からびの沼』までもってこい。お前達が報酬をたんまり持っていることは知っている。もし、持ってこなかったらアリシアをひどい目に遭わせるぞ。
》
それは、脅迫状だった。獣車を盗むならまだしも、俺たちの稼いだ金を要求するなど、もってのほかだ。だが、アリシアという人物が気になる。
「アリシアって……誰だ?」
何か、もやっと引っかかる名前だ。
「許せないっスね、大将に喧嘩うるなんて」
「ケンタ君がいないな……無事逃げたのか……それとも、一人で獣車を追ったのか。お気に入りの獣車とかいってたからな、取り返そうとして無茶しなければいいんだけど」
「状況はこうっスね、どこかの誰かがケンタ君の獣車とアリシアって女をここから持ち去り、金貨を要求。ケンタ君は、獣車を取り戻そうと後を追った。ってなとこっスかね」
関係ないやつまで巻き込むとは、なんて卑劣な奴等なんだ!
「ずいぶん計画的だな……俺たちは何者かに見張られていたのか?」
「干からびの沼はここから結構距離があるっス、ミツユスキーの旦那に頼んで足の速い獣車を用意してもらうっス」
俺たちは、ギルド施設の店にいるミツユスキーに脅迫文を見せ、馬車の準備をお願いした。
「今、高級獣車は出払ってます。荷車ならありますが、乗り心地は保証できません」
あったのは、幌なしの荷車だった。
「ああ、それでいい。急ぎの用事だ」
「これは急がないと……オルトロスを4匹つけます。速度はかなり出るでしょう」
ミツユスキーは、慌ててオルトロスを固定し御者台に乗り込む。その荷台にファリスも飛び乗る。
「容赦は禁物っスよ、大将」
ファリスの言うとおりだ。俺たちに喧嘩を売った奴らを、ただで済ますわけにはいかない。二度とこういう輩が出ない様に叩きのめさなければならない。
「準備ができました。いつでもいけます」
俺たちは、ミツユスキーとファリスと共に、干からびの沼へ出発した。
念のため、取引用に金貨をミツユスキーに用意してもらった。もちろん、タダで渡す気はない。金貨袋の中は、一枚だけ『ココココのコイン』が混ざっている。ココココのコインは、今でいえば発信機のようなものだ。
それと、レーダーの役割をする『ココココ羅針盤』というものがある。これを使えば常にコインの場所を確認できるというすぐれものだ。
ミツユスキーは万が一のためにと、いつも自分の持ち金にそのコインを忍ばせているのだが、今回、それを使わせてもらった。商人の用心深さには深く感心する。
みすみす相手に金貨をくれてやることはない。コインで居場所を突き止めて、脅迫状を送った奴らを一網打尽にするだけだ。
荷車は草原の小道を、悲鳴をあげながら走る。たまに突き出た岩に車輪が乗り上げると、弾かれたように車体が浮く。ファリスは、平気そうに座っているが、俺にとっては胃がえぐられそうな振動だ。
「まだか、ミツユスキー」
「この草原を抜けた先の林の奥です」
少し、安心した。ふと、矢文にあった名前のことを思い出す。
「そういえばミツユスキー。アリシアって知ってるか?」
「アリシアさん? ……ああ、ケンタ君の事ですか?」
と、ミツユスキーが即答した瞬間、自分の中にあったもやもやがはじけ飛んだ。
──思い出した! ケンタ君の名前は、出会った時に俺が勝手に命名した名だ。うかつだった。本当の名前はケンタウロス・ノアリシア……いや、ケンタウロスのアリシアだ!
「ミツユスキー、速度を上げてくれ」
「落ちないように気を付けてください」
ミツユスキーは、オルトロスを鞭で叩き、荷車を加速させた。
一時間ぐらい荷車を飛ばすと、目的地の干からびの沼に着いた。俺たちは獣車を降り、沼地へと足を運ぶ。
沼は、名前のとおり水気がなく、乾燥して割れた地面をむき出しにしていた。その沼の跡地を囲むように林がある。敵が潜んでいてもおかしくはない場所だ。
獣車を盗み、ケンタ君をさらったのは、いったいどんな奴等なのだろうか。俺たちは警戒しながら、奴等が姿を現すのを待ち続けた。
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