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第1章 異世界転移と旅立ち

第7章 剣での訓練と戦闘

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 今日も6時には目が覚め、パンとスープの朝食を食べてから今日の予定を考える。

 (ヤスト、昨日はアイテムボックス作成だけでもMP消費が大きいうえに、魔法を連続で使ってしまったのが魔力欠乏の原因ですね。魔法にだけ頼るのではなく剣で戦う事も必要だと思いますが、剣の経験は無いですよね?)

 《剣道なら少しはあるぞ。》

 おれは中学校の時に剣道部で初段まで、高校の時には柔道部で初段までと意外に体育会系だった。 実はその時ハマった漫画の影響で部活を選んでいただけで、大学ではチャラチャラサークルだったけど。

 (剣道を3年でも学んでいれば全くの素人ではないですね。魔法は教えることは出来ますが剣や武術に関しては全く教えることが出来ないのでどうすればいいのか悩んでいました。)

 《試してみないと分からないが、記憶では20年ほど前だから大丈夫かなぁ。》


 剣を振るだけなので、マーサに許可をもらい裏庭に来た。

 ロングソードを竹刀のように構え素振りをしてみる。

 (キレイに振れていると思いますが・・)

 大昔の事なのに、握り方や素振りの仕方を覚えている。しかもこの若返った身体のおかげか、鉄のロングロードもそこまで負担無く振ることが出来ている。

 剣道は上半身にしか攻撃判定が無いため腰より低い標的が狙いにくいのだが、夢中になり素振りを続けながらいろいろと動いてみると徐々に剣を振る音が変化してきた。


 『スキル剣術を取得しました。』 


 スキルを取得したとたん動きが滑らかになり、剣が振りやすく下段への剣さばきもぎこちなさが無くなってきた。

 (ヤスト、すごいですよ!!)

 アリスの声で剣を振るのを止めれば、汗をびっしょり掻いていた。

 《剣道を思い出しながら動いていたらスキルの剣術を覚えたみたいだ。 こんな早くスキルを覚えるとは神様の加護はありがたいな。》

 (加護もあるでしょうが、もう3時間は動きっぱなしでしたよ。剣道の動きが基礎となりスキルをとりやすかったのでしょう。)

 《そんなに動いていたか?? 確かにかなり疲れたが筋力も体力も相当上がっているみたいだな。》

 話をしながら、アリスがクリーンをかけてくれたおかげで汗もキレイになったようだ。
 
 《ありがとう。部屋で休憩をしたら、雑貨屋に昼食を買いに行こう。》


 部屋でゆっくり休憩し雑貨屋へ向かう。

 今回は水袋を2つと、パン5つを2,500クローナで購入し、昨日魔法を練習した辺りまでゆっくり歩いて向かった。

 食料は全てアイテムボックスに収納してみたが、時間停止は分かりにくいと思ったので、道に生えている雑草も収納してみた。

 昨日魔法練習をした地点で取り出したパンを食べながら、

 「さて、アイテムボックスの検証もだが、今日は少し実践をしてみたいな。」

 (そうですね。経験を積む事も必要ですが、一緒にレベルアップもおこなっていきましょう。)

 そう言いながらアリスは周囲を検索していた。

 (森の入り口辺りに1つ魔物の反応がありますね。まだ経験が少ないので焦らず1匹ずつ対応していきましょう。)

 昨日無理をしてしまったので、今日からは焦らず安全第一でいくことに、せっかくの異世界転移なので死んでしまっては元も子もない。

 反応のあった所に近いていくと、角を生やしたウサギが草を食べていた。

 《ホーンラビットだな。ソッと近いて、剣で切りつけてみる。》

 アリスに念話で話しかけ、ホーンラビットの背後から近くと、後1メートルくらいでホーンラビットがこちらを向いた。

 一瞬逃げるかと思ったとたん、角をこちらに向けて突進をしてきた!

 慌てて横に身をかわしながら、剣道の抜き胴の要領で剣を横に振ると、見事にホーンラビットは吹き飛んで動かなくなった。

 (おめでとうございます。ホーンラビットは大体の個体が危機管理のスキルを持っているので、気付かれましたが上手くいって良かったです。)

 「こちらを向いて突進してきた時はさすがに焦ったよ。」

 そうアリスに話しかけながらも、ホーンラビットに近づいて見ると、死んではいるがあまり出血はしていないのが確認出来た。
 疑問に思った事があり、自分のロングソードを改めて観察しようとしていると【魔眼】が発動し、おれの知りたい情報が出てきた。

 ロングソード
 ランク E
  切れ味 F
  耐久性 D
  レア度 E
  属性 なし
  特殊 なし
 攻撃力    +15
 素材 鉄

 ランクはレア度や耐久性・属性等の総合力で決まるようだ。
 思った通り切れ味はF(悪い)だ。 ロングソードの様な剣は、切ると言うよりも叩き切る事を目的に作られているので日本刀とは全く違う考え方作り方をしている。
 武器についても考えていかないといけないとは思いながらも、今は魔物退治に集中しなければいけない。
 ホーンラビットをアイテムボックスに収納してみると、すんなり収納出来た。

 「安全第一だが、どんどん行こうか。」

 (本当に安全が一番でお願いします。魔物が複数いる所は避けて、単体のみを相手にしていきましょう。)

 
 3時間ほど時間が経過し、だんだんと戦闘にも慣れてきた。
 その間に討伐した魔物は、スライム4匹、ホーンラビット3匹、ゴブリン1匹、
 スライムは魔核を壊して討伐したので何もなし(スライムのような不安定形態の魔物は魔石を核として存在するため魔核と呼ばれる。)、ホーンラビットはそのまま、ゴブリンはナイフで魔石を取り出してから魔石を収納し、身体はファイアで火葬しておいた。


 「弱い魔物ならロングソードだけでも十分だな。」

 (ヤスト自体が一般冒険者よりも強いからですよ。ゴブリンはFランクで初心者冒険者の試練と言われています。ちなみにスライム・ホーンラビットはGランクです。)

 「なるほどな。ちなみに魔物のランクは品物とかと同じでS~Gランクか?」

 (そうです。Sランクについては品物なら価値を、魔物なら強さを計り知れないと言う意味です。上限が計れないものがSランクなので、上限は無いと考えればいいかと思われます。)

 「今のレベルでSランク魔物に会えば確実に殺られるな。」
 
 (間違いないでしょうね。そうならないためにも地道にがんばっていきましょう。)

 
 その言葉で本日の狩りを終えて、村の宿屋に向かった。

 
 「マールさん。このホーンラビットを料理に使ってくれないか?」

  「あら、こんな立派なホーンラビットを2匹も良いのかい?」

 「あぁ、今のところ焼いて食べるしか方法も無いし、美味しいご飯にしてもらえればおれもアリスも嬉しいよ。」

 「分かった。ありがとうね。もらってばかりじゃ悪いから、明日からは出かけるときに昼食を渡すようにしてあげるよ。パンを買って食べた事は聞いているからね。」

 ウインクしながらこちらを見てくるマールに、なぜ知っているのか不思議そうな顔をしていると、

 「私は雑貨屋のマーサとは姉妹だよ。まあそうじゃなくても今は村人以外はヤストしかいないから分かるけどね。」

 またウインクしながらこちらを見ていたが、アリスにも目を向けて、大事にされて良かったねと声をかけながら、食堂に戻って行った。

 その日の夕食はホーンラビットが煮込み料理に使われており、おれもアリスも大満足で眠りについた。
 
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