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人食い花に転生しました ~復讐~~その人を食べる日まで~

濃霧……盤上の戦闘 後編

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 生成した村人『ボウガン部隊』の残りの3人は、長期戦の末、《魔法使い》に撃破されました。そして、TPは、残り1000ポイントしかありません。

 結局、『ボウガン部隊』の中で《魔法使い》にダメージを与えられたのは《おじいさん》だけでした。他の3人は、有効射程距離内でも、矢が当たりません……使い物になりません……。練度が足りなかったようです。

 私は、マップを見ながら《魔法使い》の500メートル以内に入らないように移動を続けます。無駄に【移動】でTPを消費してしまいました。

 対策を考えなければいけません…………そうです《勇者》を使えばいいのだと思います。ですけど……彼女の魔法で《勇者》が偽物とバレる可能性も否定できません。

 いったいどうすれば…………。

 私はマップを見て、作戦を考えながら待機していました。《魔法使い》がこちらに近付きそうになった場合には、《逆人魚》を索敵範囲500メートルぎりぎりの場所に配置して《魔法使い》を逆方向に誘導します。うまく射程外に逃げながら誘導すれば、《逆人魚》は消失せずに済み、TPを温存できます。

 索敵魔法を使ってくる間隔も大体わかりました。一度使うと、最低3分は索敵魔法を使わないようです。このことから、索敵魔法のクールタイムを3分と見ることにしました。

 この条件で考えられる作戦は、『《魔法使い》が索敵魔法を使った瞬間、索敵範囲外から【複製】した《勇者》を走らせ、次の索敵魔法を使う前に《魔法使い》の視界に入る』これが理想的だと、私は考えました。

 重要なのは、《勇者》の姿が《魔法使い》に認識されること。そうすれば……あとは抱きつくなりして《魔法使い》のMP回復ポーションを奪取し、罠にハメることができるわけです。

 ですが……実際にフルプレートの《勇者》を、この足場の悪い森で500メートルを3分で走らせるには、ちょっと無理があるような気がします。平地ならどうにかなりそうな気はしますが……微妙です。でも、ここはやってみるしかなさそうです……。

 私は《勇者》を【複製】しました。《魔法使い》の索敵範囲ギリギリに配置し、次の索敵魔法で走らせます。

 魔法が放たれました。《魔法使い》を中心に波紋が広がります。そして……波紋が消えました。

 私は、すぐに《勇者》を《魔法使い》に向かって走らせました。

《勇者》は一直線に《魔法使い》に向かって物凄い勢いで走ります。

 さすがは勇者です! 足場の悪い森をフルプレート装備で100メートル30秒を切りました。この分なら余裕です!

 ────と、思ったのですが、《勇者》は250メートル進むと動かなくなってしまいました。一体何が……!

 時間は過ぎていきます。250メートル地点で残り一分です……絶望的です。

 残る方法は……。

 一時撤退……これはうまくありません。逃げても索敵範囲につかまります。

 大声で呼ぶ……うまくいく可能性もありますが……警戒されていればやはり、索敵されて撃破される可能性も……。

 【複製】リストをあきらめる……これしかないでしょう……。普通に倒して食べてしまった方がいいかもしれません。

 そろそろ時間です……。

 …………。

 4分が経過……。

 …………。

 5分が経過……。

 おかしいです。《魔法使い》は索敵魔法を使ってきません。いったいどうしたのでしょう……。

 …………。

 ふと、私は周囲を見渡しました。霧が晴れています……。見通しが良くなっていました。

《魔法使い》は視界が確保できたので索敵魔法を使う必要がなくなった……と、そう考えてもいいのでしょうか……。

 ──安心はできません。私は即座に【収縮】を使い、《勇者》の所に行きました。

《シュカ》(HP4600/4600:TP583/2300)

《勇者》の所に着きました。勇者は、大きな木の根の段差に引っかかっていました。このマップでは段差が分かりづらいです……高さがわかる線みたいなものが欲しいところです。

 とにかく私は、引っかかっている《勇者》を救助して《魔法使い》の元へと連れて行きました。

 偶然を装って、近づかせます。

「アラン……いったいどこへ消えてしまったのよ…………」

「サ、サラか?」

《勇者》は《魔法使い》の前にヒョコっと現れます。

「アラン! 無事なの!」

「ああ。それより……肩、貸してもらえないか」

「どこか、怪我でもしているの? わかったわ。つかまりなさい」

《魔法使い》が《勇者》に肩を貸した瞬間、《勇者》は《魔法使い》の死角からMP回復ポーションの入った袋を奪取しました。作戦成功です!

「いったい、何があるの……この森……」

「ここには……罠があるんだ」

「ええ、あったわ。私もそれにやられるところだった。それより、何かいるのよ……この森」

「ああ……何かいる……すぐ近くに……」

「すぐ近く? あれ……ちょっとアラン……魔族の力が感じられない……何があったの?」

【ヒトバサミ】を《魔法使い》のすぐ後ろに配置しました。《勇者》は《魔法使い》を抱えて、そこにめがけて、倒れ込みます。

《シュカ》(HP4600/4600:TP483/2300)

「危ない、サラ!」

「キャッ! 何!」

「罠だ!」

【ヒトバサミ】を作動させました。《魔法使い》が挟み込まれます。

「クッ……あなた……本当にアランなの? 魔族の力がないのはどうして?」

「ああ……いいんだ、それはもう……。俺は《シュカ》様の配下になったんだ」

「《シュカ》様? 一体どういうことよ……私たちは、封印した邪神を仕留めるために、魔族の血まで飲んで強くなったはずよ……」

「いいんだよ……それより、君も《シュカ》様のお役に立てるんだよ。これほど素晴らしいことはないぜ」

「いったい何なのよ、《シュカ》様って!」

【毒の霧】【茨の篭】を使います。『ダイナミックコンボ』です。

「いやああああぁぁぁぁ!」

《魔法使い》は身動きが取れなくなり、毒と棘の攻撃を受けます。《魔法使い》の体力がどんどん低下します。

《『エルフ』魔法使い》(HP200/2580:MP1300/2580)

「【エクスチェンジ】!」

《魔法使い》が叫びました。HPが回復し、MPが減ります。予定通りです。

《『エルフ』魔法使い》(HP1200/2580:MP300/2580)

「トラップ破壊の詠唱をしないと……ポーションは……あれ……何で……何でないのよ……」

「サラ、これのことかい」

《勇者》はMP回復ポーションの入った袋を見せびらかします。

「返してよ! 私を……どうするつもり……こんな……」

《『エルフ』魔法使い》(HP100/2580:MP300/2580)

《魔法使い》は、何もできずにHPを失っていきました…………頃合いです。私は【収縮】を解除します。そして、《魔法使い》の目の前で獰猛な《人食い花》の姿を晒しました。

「なに……この……植物の……化け物は……」

 い・た・だ・き…………

「【ファイヤーサイクロン】!」

《『エルフ』魔法使い》(HP100/2580:MP0/2580)

 突然の出来事でした。《魔法使い》は最後の力を振り絞って攻撃してきました。

《シュカ》(HP2600/4600:TP2283/2300)

 炎の渦が、私の体を焼きます。かなりのダメージを受け、同時にTPは回復しました。

 本当に危なかったです。ですが、私の体は炎に弱いことがわかりました。収穫です。

 では、改めて…………。

「いやああああぁぁぁぁ!」

 い・た・だ・き・ま・す!

 ────パクッ。


《魔法使い》の『エルフ』……。人間よりおいしいとはいえません……《まずい健康食》以下です。ですが、魔族の味がソースのように絡みついて、旨味があります。まあ、あまり好んで食べれるものではないですね…………はやく人間が食べたいです……。


【エナジークリスタル数 x 77】
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