SUN×SUN!

楠こずえ

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第4話:魔法の杖と呪文(その12)

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『そっか・・桐島もそうだったんだ・・』

蛍には、
自分と同様にコンプレックスを抱えて
ずっと苦しんできた太陽の気持ちが
痛いほど伝わってきた。

「でもさ」

太陽は天を見上げる。

「結局、そんな薬も手に入らなかったわけで、
今のこの状況もおれだけじゃ何もできないけど、
あきらめたら終わりじゃん。
おれは絶対、あきらめないからな!」

そう言って笑った太陽の笑顔に、
蛍は一瞬ドキッとした。

全く興味がなかった男なのに。

いつも学校で見ていた太陽は、
女の子に囲まれてヘラヘラした様子で、
ただのチャラチャラした男にしか見えなかった。

でも、こうやって話してみると
それだけの人間ではなかったようだ。

真っ暗だった蛍の心の中に、
ポウッと明るい光が灯った瞬間だった。


その頃、
降りしきる雨の中、
ひまわりは草むらの上に倒れた状態で
意識を失っていた。

だが、頭の中に
かすかに誰かの声が聞こえる。

耳をすます。

男の人の声が聞こえる・・・

『結界も長く時間が経つと
張り巡らせている魔力が弱まってきます。
でも、大丈夫。
ちょうどいい時に、
魔力を充電するチャンスがやってきますから。
いい獲物がね・・・・』

全身、真っ黒の衣装をまとった
男の人の姿が
ひまわりの頭の中にフッと浮かんできた。

「獲物・・・」

その時、ハッと目が覚める。

「あれ・・・、
私、いったい何をして・・・」

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