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『腸』――15日目

148.『投票と夜の時間(10)』

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 ――――AM01:10、由絵の部屋の前

白百合 美海
(…………あたしたちは、由絵の部屋のドアを開けた。
 ……………………開いてしまったのだ)



千景 勝平
「くっそ!! なんで!!」

白百合 美海
「どうして……どうしてぇ…………」

小田切 冬司
「念のため他の部屋も見てきたけど、やっぱり開かないよ…………。
 決まったね、用心棒が裏切ったんだ」

千景 勝平
「由絵…………」

八木沼 由絵
「勝、平……?」

白百合 美海
(…………由絵は、目を擦ってベッドから起きたがった。
 …………あたしたちの姿を見て、……愕然としていた)

八木沼 由絵
「…………そっか、勝平たちが人狼だったんだね。
 用心棒は由絵を、守ってくれなかったんだね……」

白百合 美海
「――――――――由絵!」

八木沼 由絵
「…………美海……、美海ぃぃ!
 嫌だ、怖いよ、死にたくないよぉおぉ」

白百合 美海
「由絵…………、大丈夫、大丈夫……、
 由絵を殺したりしない、そんなことできない」

千景 勝平
「……………………っ」

小田切 冬司
「…………でも、そうしないと、八木沼さんだけじゃない、
 みんなが死ぬんだ……」

千景 勝平
「てめえっ――――!」

小田切 冬司
「なに…………?
 …………いいよ、俺は、それもありだと思うよ。
 どっちにしたって俺たちか、村人のどちらかしか生き残れないんだ。
 なら、ここで、3人で心中でもいいよ。
 でも……、でも! アキラは言ったよ、白百合さんを守ってくれって!
 ここでみんな死んだら昨日のアキラの死はどうなるの? アキラを殺した君の手は、俺たちはどうなるの……?
 そこまでさせたアキラを白百合さんは裏切るの?」

白百合 美海
「それでも、それでも!
 由絵はあたしの大切な友達だし、勝平くんにとっては大切な彼女なの!
 ……できないよ…………、そんなことできない!!」

八木沼 由絵
「美海…………、勝平…………」



八木沼 由絵
「…………いいよ」

白百合 美海
「…………え?」

八木沼 由絵
「だって、勝平には死んでほしくないし、由絵を殺さないとみんなが死んじゃうんでしょ?
 そんなわがまま言えないよ~」

千景 勝平
「わがままなんかじゃねえよ!
 死にたくないって、普通のことだろ、殺したくないってのも、当然のことじゃねえか!」

八木沼 由絵
「勝平…………、
 …………あたしのこと、好き?」

千景 勝平
「なんだよ、こんな時に……」

八木沼 由絵
「言って…………?」

千景 勝平
「…………、…………好きだよ。
 初めて真剣に好きになれたのがお前だった。
 俺たち、卒業したら結婚するんだろ? そんな約束お前としかしない。お前としか」

八木沼 由絵
「覚えててくれたんだね…………もう、十分」

千景 勝平
「…………由絵」

千景 勝平
「大好きだよ、勝平。
 …………ごめんね。由絵、勝平の気を惹きたくて、こんなことしちゃったの……。
 だから…………生きて。
 そして、新しい恋をして、その人と結ばれて、……幸せになって」

千景 勝平
「由絵っ!」

八木沼 由絵
「あたしからのお願いだよ、勝平」

千景 勝平
「…………っ……」

八木沼 由絵
「美海、ありがとう。勝平をよろしくね」

白百合 美海
「由絵…………由絵ぇ…………」
(…………あたしは、また涙が止まらなかった。
 しっかり抱き合う勝平くんと由絵を…………見守ることしかできなかった……)

小田切 冬司
「…………もう、時間がないよ。
 ……勝平くん」

千景 勝平
「………………」

小田切 冬司
「…………勝平くんは、白百合さんと外に出てて。
 …………俺が、やるから」

千景 勝平
「他人に殺されてたまるか。
 ……………………出てけ」

小田切 冬司
「………………………………。
 白百合さん……、行くよ」

白百合 美海
「うう……うぅう……」
(あたしは、小田切くんに手を引かれて、…………泣きながらその場を後にした)
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