アカネ・パラドックス

雲黒斎草菜

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【第三章】追 跡

  優衣の欠けた記憶  

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「それですよ!」
 俺と茜の会話を横から聞いていた優衣が忽然と大声を上げた。

「な……何だよ!」
 溜め込んでいた胸のしこりが取れた、みたいな爽やかな声だった。

「それですよユウスケさん!」
 背中を開けたままの姿で勝手に興奮するが、誰も何も言っていない。

「なにが言いたいんだよ、ユイ?」

「ねえ、ねえ」
 問い掛ける俺の肩を後ろからつついてくる、もう一人の人物。
「わたしのモジュールを使ってくらさーい」
 人物と言っていいものか、いやコイツの場合は言ってもいいな。茜。
「ねえ、使ってぇ」
 柔らかい体で後から飛び付いて来た。

「これですよ。コマンダー。やっと謎が解けました」
 二人のガイノイドに迫られて、俺は両手を振り上げる。

「あー。うるさい! 何が言いたいんだ? ちょっと落ち着け、優衣」

 優衣の説明はさらに俺を困惑させた。
「今回起きた出来事のど真ん中のデータが抜け落ちていた原因が理解できました」

「データって、記憶のことか?」
「そうなんです。明日一日分の記憶がそっくりそのまま抜け落ちていたんです」

「う──。それってまずい事なのか。故障したと言ってるのか?」
 上着の袖を通しながら顔を上げる優衣の表情は、この数時間の中で最も明るく楽しげだった。

「故障ではありません。時間のパスが切れた理由が解かったんです。その間、アカネはパワーモジュールを抜かれていて機能停止中だったということです」

「よっしゃ。よう解った、ユイ。そこで収めときなはれ。今は時間が無い」
 ハゲオヤジはやんわりと興奮する優衣をなだめ、シロタマを真正面から捉えて訊いた。
「ほんでどないや、シロタマ。アカネのモジュールを使って欲しいものは作れますんか」

『自己細胞による移植手術と同じで、最も安全で拒絶反応も起きません』

「まわりくどいな。できまんのか? できまへんのか?」

 シロタマは即座に口調を反転させる。
「宇宙の帝王にまかちぇるでしゅ。不可能は無いのラ!」
 こいつ俺の話を聞いてやがったのか。

「ほな掛かりなはれ。すぐや!」
「了解した、ゲイツ!」
「呼び捨てにしなはんな! いつもゆうてるやろ、アホっ!」
 久しぶりにスキンヘッドを真っ赤に染め、天井に向かって腕を振り上げる社長に後ろから問いかける玲子。少し焦りぎみな声で疑問符をもたげた。
「あのー。それじゃあ、アカネはどうなるんですか?」

 瞬間、静寂に沈み。
 幼げで愛くるしい面立ちは何も変わらず、
「今回、わたしはお休みでーす」
 玲子とそろってずっこけた。
「バイトみたいに言ってんじゃねえよ。まったく」

 こいつのお気楽さは3500年経っても何にも変わらない。
 そう言えばナナもえらくお気楽な奴だった。管理者のコンベンションセンターをバイト感覚で辞めて、いきなりドゥウォーフ族のスフィアに乗って行っちまいやがった。
「……待てよ」
 もしかして、この日のためにナナはスフィアに乗りこんだのか?
 いーや。ナナがそんな先を読んで行動したとは思えない。と考える反面。

 しかし優衣が未来からそうなるように企てた。と言う理屈ならあり得る。なにしろ嘘か本当か、ナナは優衣に命じられて、このミッションを随行するために武器を作っていたぐらいだから……。

 一筋の汗をコメカミに感じつつ、懐疑的に優衣の横顔を見るのは仕方のない行為だった。




 さて話は変わって、それからだ。
 茜と社長はシロタマと一緒に時間跳躍抑制装置の作成、ついでにシロタマ製作の麻痺ビームも準備すると張り切って第二格納庫へ。

 優衣はスフィアの出現から元の時代に戻るまでの一連のプロセスをコンピューター上でシミュレーションするために、プログラムのコーディング中。その横では玲子が応援と称して、「へー」とか「ほぉー」とか感嘆の声を上げつつ、優衣の仕事を妨害中だ。

 田吾は念のためメッセンジャーの船が近くにいないかセンサー探査を続けている。
 ……で、俺だ。

 暇だ――。
 シロタマの難しい講義にはついていけないし、あとで茜の体から何とかって言うモジュールを外すときだけ、コマンダーの承認コードを告げに来てくれたらいいと、何とも情けない仕事を仰せつかった。仕方が無いので、さっきからミカンと一緒に栽培室で野菜に水をやっていた。

「これだと隠居ジジイだよ」
 俺の独りゴチにミカンが「きゅい」と鳴いて顔を覗き込んで来たので、
「お前はどうなんだ? 野菜に水やってて楽しいのか?」
「きゅぅぅぃ」
 丸い顔に付いた黒い瞳を大きく広げて反応した。それが肯定なのか否定なのかさっぱり解からない。

「コマンダー?」
 プランター前でしゃがんでミミズの頭を突っついていたら後ろから声を掛けられた。振り向くとそこに茜がいた。

「なーんだ。お前もヒマしてんのか」

 茜は見開いた目で居場所無さそうにキョロキョロしている。
「どうしたんだ?」
 何だかいつもと異なる雰囲気を感じた。

「ま、まさかお前……」
 そう、こいうことは初めてではない。直感した。
「お前、異時間同一体だろ?」
 思ったとおりそいつは顎を小さく前後に振った。

 生唾を飲み込み。
「何かあったのか?」
「ううん」
 俺と二人きりになったときだけに見せるこの幼げな雰囲気はミッションが始まる前の茜か?
 いや、待てよ……この頼り無さ。

「お前! ナナか!」
 ミカンが「きゅい」と鳴いて小首をかしげた。

「あ、はーい」
 俺は腰が砕けそうになり、そばにあったデスクにしがみ付いた。

「な、な、なんでお前がここに……」

「えっとぉ……」
 俺の息が続かないほどの間を空けてから。
「なんでコマンダーがここにいるんですか?」
 ナナは体を傾けて俺の顔を凝視。
「てぇ―。お前、その間の空け方やめろ。疲れるんだって。それより俺の質問に答えろ。なんでここに来たんだよ?」

「えへっ。あのね、コマンダー」
「何だよ?」

「ここどこですか?」
「かぁー。相変わらずのんびりしてやがんな」

「わたしはぁ、これからおじいちゃまと新天地へ飛ぶつもりで転送してもらったのに……ここってコロニーじゃないですよね」
「あの時か……」
 1回目のミッションが失敗して2回目を始めた間際だ。過去の銀龍からスフィアに転送される直前のナナを誘導して、ミッション決行を伝えるあの瞬間だ。ナナはその後3500年過去へドゥウォーフ族と飛び武器を拵えて、未来からの呼び出しをひたすら待っていたのだ。

 だがこの戸惑い方はまだミッション決行の命令を受けていない。瞳の輝きは何も知らない無垢なままだ。

「何しにここに来たんだよ。ユイ、じゃないアカネ、じゃない、ナナ」
「うふっ。コマンダーおもしろーい。どぉしたんれすかぁ? あれ? これは何でしょ?」

 楽しげに俺に近寄るナナが手のひらに異物を感じ、俺に広げて見せた。
「ありゃりゃ。ギンリュウにあった何かを持って来てしまいましたぁ」
 それは四つ折りになった紙切れだった。
 ナナは俺に手渡すと、背中に腕をやってクルリと後ろに広がる畑へ視線を移した。

「へぇ。なんだか楽しそうなことをやっていますね」

 ひと通り一巡させていたナナ。横から胡乱に見つめるミカンに気付き、
「この子可愛い……」
 優しく頭を撫でる健気な振る舞いに心が動かされ、柄でもないセリフが並び出た。

「ナナ。これからいろいろあると思うけど頑張るんだぜ。お前の人生を楽しめよ」

 受け取った紙切れへ視線を移し「今日のコマンダー、なんか変ですよー」と言う声を聞き流しつつ、折られた紙切れを広げて見た。
「なんか書いてある。メモか? ナナ、これは誰に、」
 もらったんだ? と、依頼主を尋ねようとして目線を戻したときは、ミカンの顔と入れ替わっていた。

「きゅぅぅ?」
「うぉぉっ! びくっりするじゃないかよ」

 執拗に紙切れを覗き込もうとするミカンの肩を向こうへ押しやり、
「ナナ! どこ行った?」
 格納庫内は静寂そのものだった。最初は幻でも見たのかと思った。明日、俺たちの存続を決定づける次元転移プロセスが行われる。成功するか失敗するかはナナのEM輻射波と同期させる必要があると、タマが言うもんだからこんな幻が生まれたんだと……。

 だけど手のひらに残るメモがそうじゃないと物語っていた。

「お前は水やりを続行しろ。俺は手渡されたこの暗号命令を解読しなけりゃならん。お前の相手はしてられん」
 ミカンは素直にひと鳴きして反転すると背中を見せ、俺は紙を広げる。

『ヒマだったら急いで防護スーツのメンテナンスを終えろ 絶対やれよ サボると大変なことになる』
 と汚い字が書かれてあり、最後には一行空けて、
『玲子を怒らすな』
 と当たり前のことが書かれて終わっていた。

「何だこりゃ? 俺のメモじゃないか」
 汚い走り書きの筆跡は間違いなく俺だ。しかしこんなものを書いた記憶は無い。 
 質問したいが、肝心のナナはすでに消えているし……。
 俺の疑念は晴れることなく、当たり前のことが書かれたメモを丸めてプランターの中に放り込んだ。

「別にそれって野菜の種じゃないぜ」
 ミカンがその上から土を被し、水を撒く姿をぼんやり見る俺は本当にヒマだった。

 もう一度、俺の書いた走り書きの内容を確認しようと、濡れた土を掘り起こし広げて見る。
 ミカンが「きゅりり」と鳴いて、文句を言たげな態度で俺の腰を突っつくので、
「ああ。ちょと確認だ。すぐに埋め戻しておくから。そんなすぐに枯れないから安心しろって」
 俺の言葉に気を許したようで、再び水やりに専念し始めた後ろ姿を1秒ほど見てから紙面へと視線を戻す。

 ヒマだったらメンテナンスを終えろ? 玲子を怒らすな? 何だそりゃ。
 取り立てて何か急を知らせるモノでもなさそうだった。

 防護スーツのメンテナンスは俺の仕事だし、いつも社長から同じ小言を喰らっている。最後に付け足された『玲子を怒らすな』なんか。言われなくても分かってらー、と声に出したいほどだ。

 何だってこんな物をナナは持っていたのだろ?
 あの様子では偶然手にしたようだったし。
 結局、過去体が持ってきた意味までたどり着くことなく、再びメモ用紙を地面の中に埋め戻した。



 で、結局やることも無かったので、第一格納庫の脇にあるロッカー室でバラバラになったまま並べていた人数分の防護スーツのパーツを1組分だけ持ち出し、栽培室の奥に置いてあるデスクの上で組み立てることにした。

「やることも無いからな……」
 水やりを終えたミカンが覗き込んで来たので、そいつに言い訳めいたセリフを吐き、「きゅー」と鳴く丸い頭を撫でつつ、組み立てていく。

「そう言えば、お前にやったアカネのキーホルダーはどうした?」
 キングスネールでザリオン人がヲタから巻き上げたキーホルダーをさらに俺が貰い受け、ミカンの頭のところにある変な出っ張りに付けてやったのに、それが無くなっていた。

 どうせ田吾に上手く言くるめられて、取り上げられたんだろう。
「今度取り返してやるからな」
 俺の言葉が通じるのかは定かではないが、ミカンはうなずくような仕草と鳴き声を出して、俺の手の動きを見ていた。

 スーツ自体のメンテナンスはすべて終わっていて後は組み立てるだけだが、それが結構メンドイのだ。一つ組み終わるのにそうだな、十数分は掛かる。

「ミカン。見ておけよ。今度はお前にやらせてやるからな」
 とつぶやいたのは時間つぶしと、ミカンの教育にちょうどいいと踏んだからだ。

 俺は15分ほど掛けて組み立て工程を見せて、
「どうだミカン、お前の指は短くて2本しかないけど、器用に動くのでこれぐらいの組み立てはできるだろ。さ、俺のやったのを再現して見せてくれ」

 もう一組持って来るのがメンドイので、今組んだヤツをもう一回バラした。バラすときはあっという間さ。

「さ、やってみな」
 ミカンはひとうなずきすると、スーツのパーツを掻き集めて1個ずつ確認するかのように2本の指で摘まんでは、丸い頭をかしげ、デスクの上へ並べ始めた。組み立ての順序どおりにパーツをそろえる気のようだが、最後まで見届けないと怪しい。下手をすると土の中に埋めて水を掛けてしまうかもしれない。

《裕輔どこにいてまっか? 第二格納庫まで出頭や!》

 監視と言う暇つぶしの時間は、壁に取り付けられた船内通信のスピーカーから轟く社長の声で中断を余儀なくされた。

「出頭って……」
 さっさと行かないと何を言われるか分からないので、ミカンの監視は帰ってからやることにして、俺は第四格納庫から第二格納庫へと歩んだ。と言ってもすぐ向かいの部屋なんだ。大声で呼べば聞こえるハズなのに、人を容疑者扱いしやがって……。


 野菜栽培室である第四格納庫を一歩出て足止めを喰らった。
「うぉっと!」
 俺の進行を妨げる人物。それは優衣だった。

「さっき起きた事象は他言無用です。時間規則に反します」
 これまで見たことも無い真剣な目で言われれば、ちょっちビビってしまうと言うもので、
「な……なんだよ、優衣。おっかないな。今って、ナナが現れたことか? あれは……」
 喋り続けようとする俺の唇に、優衣は細い指を当てた。

「ユウスケさん。よく聞いて……」

 頭を振って指を払いのけて飛び付く。
「ま、まさか、明日の次元転移は失敗するのか?」
「うふふふ。相変わらず心配性ですね。あたしが存在する理由を思い出してください」

 安堵を促す言葉を綴ったあと、またもや真剣な輝く目をした。
「これより先で未来はブランチします。ですので、そちらの時間流の異時間同一体は異次元同一体となり直接干渉できなくなります」
「はぁ? 意味解んねえ……あっ!」
 背筋に寒いモノが走った。
「そちらの異時間同一体って……お前、この時間域の優衣じゃねえのか! 直接干渉ができないってどういう意味だよ?」
「それと、さっきのことをアカネに訊いてもあの子は何も知りません。ここに飛ばされた経緯は記憶されないように細工してあります」
「だ、誰が細工したんだ?」
「ワタシです」
「お前、なに言ってんの?」
 優衣の言葉はとんでもない事を語っていたのだが、この時の俺にはそう応えるのが精一杯だった。

「うぉっ!」
 それだけ言うと異時間同一体の優衣は閃光と共に消えた。

「…………………………」
 鼓動を早鐘のように打たせた俺がそこに立ち残されていた。

 異時間同一体が異次元同一体になる?
 異次元同一体……。
 別次元でありながら同じ人物……とでも考えたらいいのか?
 意味解んねえよ。

《こらっ! 裕輔、どこにおるんや! 早よ来んかい!》
 壁の船内通信のスピーカーから響き渡るがなり声に我を戻し、すぐに第二格納庫のハッチをくぐった。

「なんすか?」
 椅子(いす)に座った茜が足をプラプラさせていて、入って来た俺に笑顔をくれた。


 頭の中は暗雲と霧と靄(もや)と噴煙が立ち込めて思考力ゼロだと言うのに、ハゲ茶瓶は俺に命じる。

「跳躍抑制周波のテストをしてみたいんや。せやからアカネのパワーモジュールが欲しい。メンテナンスポートを開けくれまへんか?」
 過去のナナが持ち込んだメモと、優衣の異時間同一体の意味ありげな言葉を反芻するヒマがない。ひとまず今は目の前の仕事をこなし、明日の次元転移を成功させるのが先決だと結論付け、
「本当にいいのかアカネ? ホールト(停止)するんだぜ」
「あ、ぜんぜんかまいませーん。お昼寝の時間だと思えば何ともありませーん」

「寝たことなんか無いくせに」
 と言う俺のセリフに愛らしい笑いを返してくれる茜にコマンド認証を送り、背中を開けさせる。

「もっと腰のほうに丸い物があるはずでシュ」
 ぱかりと開いた白い背中から腕を突っ込む社長に、宙に浮かんだシロタマが指示を飛ばすが、その光景は何とも言い難い不気味な感じだった。

「ミカンちゃんは畑仕事してましたかぁ?」
 背中から腕を突っ込まれているにもかかわらず、当の本人はニコニコしたまま、椅子に座った姿勢を崩さず足をプラプラさせて、
「ミカンちゃんは新しい種を別のプランターに植えるって言ってたでしょ?」
 ミカンと会話できるのは茜だけだ。俺には「きゅ」と「きゅら」ぐらいにしか聞こえない。

 それにしてもおかしな光景だ。俺に向かって質問するアカネの背中には社長の腕が入っている。
 別に痛みは無いんだろうが、中で腕がごそごそするたびに茜の首が揺らぐ、たまに腹部が膨らんだりするのは、社長の手の甲が内部の何かを押すからだ。

「しゃ、社長。あんまり乱暴にしないでくれよデリケートなモンだぜ」
「分かってますけどな。結構いろんな物が詰まっててな……。手が入らへんのや」

『円柱状の物はキネマティクス制御関係ですので決して抜かないでください』
「解かってまっけどな……よっこらせっと。ん。これか、ふむ、球状の物が手に当たってまっせ。これでっか?」
 この手の仕事がこの人の本職なので、俺が首を突っ込むより安心ではあるのだが、気が気でないのは確かだった。

『パワーモジュールをホットスワップ(活線挿抜)する事は禁止されています。先に停止プロセスを経てから行ってください』
 茜のシステムボイスがそう注意するので、慌てて手の動きを止める社長。
「どないしたらええねん、コマンダー」
 と渋い顔をするけど、俺なんか形だけのコマンダーだ。何も知らない。

 結局、司令室にいた優衣を連れてきて、無事茜のパワーモジュールが外され、試験的に抑制装置が起動されたが問題なく優衣のDTSDの効果が消せることが確認できた。

 これで銀龍に現れたメッセンジャーの時間跳躍を抑制できる。ただしその間、優衣はDTSDを外されたわけだから、時空間の跳躍はできないが、もっともこれはお互い様なので問題は無いはずだ。

 そして優衣の時空転移のドサクサに紛れる計画のシミュレーションもどうやら完璧のようで、ケチらハゲの機嫌が終始良く、これで後は明日の本番を迎えるだけとなった。

「で……。問題はお前だな。お前……」
「なんですかぁ?」
「何でパワーモジュールが外されてんのに動けるんだ?」
「非常用のバックアップがあるんでーす」

「ちょっとアカネ! みなさん今日は疲れているんです。ジャマをしないでちょうだい。非常用パワーは非常時に取っておくものでしょ。明日は大事な日なの。あなたも早くホールトしなさい(寝なさい)」

 もはやこいつらをアンドロイドと呼ぶのは、やめたほうがいいかも知れない。
 二人の会話を聞いて、溜め息を吐かざるを得なかったのは、言うまでもない。
  
  
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