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レーザー兄妹と呼ばれる二人
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俺とあかねは大久保を連れて、テーブルを挟んで司祭と四人だけで、向かい合っている。
「いやぁ。助かりましたよ。
お嬢さんはお芝居がお上手ですねぇ」
ステージの上の態度とは打って変わって、司祭は目いっぱい下手に出てきている。なにしろ、あかねのあんなくさい三文芝居を上手だと言って、おだてるくらいなんだから。
「さっきの約束は覚えているよね?」
「もちろん、覚えていますよ」
「当然よね。
忘れたなんて言ったら、二度と人前に出れないようにしてあげるんだから」
一方のあかねは態度がでかい。へたをしたら、目の前のテーブルの上にドカンと足を乗せて、威張り散らしそうなくらいの勢いだ。
「それだけは、ごかんべんを。
そう言えば、どうして私の神の力が通じなかったんでしょうかねぇ」
「まだ、そんな事言ってるんなら、ばらしちゃってもいいんだけど。
知らないとでも、思ってるのこの仕掛け。
ただの科学技術じゃん」
「えっ?
ご存じだったんですか?
どうして?」
司祭はあかねが装置の事を知っていると知って、一層動揺しているようだ。
「そんな事より、教えて欲しい事があるんだけど」
そう言うと、あかねは一枚の写真を取り出した。それは俺たちがこの世界にやって来るきっかけとなった首都崩壊直後に撮られた画像をプリントアウトしたものだ。
「この二人知ってるかな?」
テーブルの上にその写真を置き、そこに写る俺たちの父親と凛をあかねが指さした。司祭がその写真を手に取り、視線をそこに向けた時、少し目が見開いたようにも見えたが、すぐにテーブルに戻して否定した。
「いえ。残念ですが、知りません」
「本当か?
写真を見た瞬間、なんか表情が変わったような気がしたが」
「め、め、滅相もありません。
本当に知りませんよ」
凛の事を知らないのは当然として、あんな装置を使っているくらいだから、俺の父親の事は知っている可能性がある。俺的にはこんなうさん臭い教会とつながりがあって欲しくはないが、この司祭の態度はちょっと怪しすぎる。
「じゃあさ、あの装置が何なのかは知ってるのかな?」
「教団から言われるまま使っているだけで」
「そう言う事か」
ただ言われるがまま使っているだけで、開発者の事は知らないと言う可能性はあり得る話で、信じたくはない事実を突きつけられるより、無難な答えを俺は信じたくなっていて、その言葉に納得した態度をとった。
「あんた、使えない人なのね」
一方のあかねは「使えない奴」と言うとどめの一言を司祭に放った。確かに、この司祭は俺たちにとっては使えない奴だが、それを相手に面と向かって言ってのけるなんて、妹が悪になっていく気がしてならない。
「なら、教祖の名前を教えてもらえないかな?」
なんで教祖の名前に興味があるのか知らないが、大久保が割って入ってきて、そう質問した。
「教祖様は、教祖様であって、名前では呼ばれてませんよ」
「そうなの?
水野とか」
「だから、知らないんですよ」
大久保の言葉を司祭は淡々と否定したが、俺の方はそこに出た名前に動揺した。
それ、俺の苗字なんだけど。大久保さん、俺の父親の事疑っているの?
そんな視線を向けた俺に大久保は気づいた。
「例えばだよ。例えば」
どんな例えなんだ!
ちょっと戸惑う俺にお構いなしに、大久保は質問を続けた。
「じゃあ、高山とか、金山とか」
「いえ。だから、全く知らないんですよ。
名前では呼ばれてませんから」
「じゃあ、教会の本部のあるコロニーはどこかな?」
「分からないんです」
「それって、あり得なくない?
お兄ちゃん、この人、あの装置にかけちゃわない?」
「そっかぁ。それが速いか」
そうだった。あのシステムは本人の意思とは関係なく、人の記憶を読み出せるのだ。隠そうとしていても、暴くことができる。もっとも、マジなところでは、その装置の操作方法は知らないのだが、知っている風を装うと言うのはこの司祭へのプレッシャーにはなる。
「そ、そ、そんな事しても、知らないものは出てこないですよ」
うろたえ気味に、司祭は椅子から立ち上がった。
「逃げる気じゃないよね?」
恫喝っぽい言葉とは裏腹に、にこりとした笑みを浮かべているあかね。これは悪女だ、悪女になって行くような気がしてならない。
「は、は、ははは」
引き攣り気味で、司祭は後ずさりを始めた。やっぱ逃げる気らしい。
「待ちな!」
俺がそう言った時、部屋の扉が開き、大勢のいかつい男たちが入って来た。
「えぇーっと。穏便に話をするって雰囲気じゃないよな」
椅子から立ち上り、男たちを見渡しながら俺が言った。
「当たり前だろ。
知られちゃならない事を知られたんだ。
お前たちには消えてもらう」
司祭はそう言うと、男たちの背後に回った。
「仕方ない。やるか、あかね」
「うん。お兄ちゃん」
あかねもやる気らしい。俺もあかねも、あかねソードを構えて見せた。
この世界に来るまでは、あかねは俺が守る! 的な考えでいたんだが、剣道をやっていた訳でもないのに、なんでだか分からないがあかねは結構強いのだ。下手をしたら、俺よりも強いんじゃね? と言う気持ちが沸き起こってくるくらい。
しかも、あかねは敵を斬る事に躊躇を見せない。確かに普通の刀と違い、焼き切る感じな分、流血は少なめだが、それでも精神的な負担があるはずだと言うのにだ。
そんな俺たち二人はこの武器を手に、すでに幾多の戦いを潜り抜けてきていて、世間からは「レーザー兄妹」と呼ばれ、恐れられている。実際のところこの武器はレーザーではないのだが、イメージ的にはそうなんだろう。
「ま、ま、まさか、お前たちがあのレーザー兄妹だったのか」
司祭も俺たちの事を知っていたらしく、上ずった声で言った。
「そうだよ。
こんな武器、他に持ってる奴はいねぇし」
「や、や、やってしまえ」
司祭は男たちにその言葉を言い放つと、ドアを目指して駆けだして行った。逃げていく司祭に代わって、男たちが俺たちに襲い掛かって来た。
とは言え、力だけの男なんて、敵じゃない。
武器を持たずに襲い掛かってくる者を相手にするのは気はひけるが、敵である以上、情けは無用。それが、この世界の掟。向かってくる男たちをあかねソードでぶった斬る。
一振り、必殺。返り血は少ないが、肉が焦げる臭いや、切り裂く場所によっては髪が焦げる臭いに鼻を塞ぎたくなる場合もある。
男たちを倒すのに時間はかからなかった。はっきり言って、瞬殺である。命を落とさずにすんだ男たちも五体満足ではなく、戦意も失い、俺たちに背を向けて震えながら、逃げようとしている。
「終わったね」
あかねがあかねソードをポケットにしまい、にっこりとした表情で俺に言った。
「だな。
だが、逃げたあいつも捕まえに行くか。
どうせ、ドアは一つしかないんだしな」
「あの人、使えないのに?」
あかねの言葉を司祭が聞いたら、助かったと喜ぶだろうか?
それとも、使えない奴と言われて泣くだろうか?
微妙なところだが、まあ俺的にはどっちでもいい。
「どっちにしても、行くか」
そう言った時、ドアが開いた。
司祭が戻って来たのか、はたまた新たな敵か?
ちょっと身構えた俺の視界に入ったのは、俺たちと同じ年頃に見える黒髪ツインテールの一人の少女だった。誰なのか分からないが、教会側の人間と言うのは確実なはず。だと言うのに、自分たちの味方の男たちの惨状を目の前にして、表情一つ変えずに近寄って来る。
危ない奴かも知れない。
俺の本能がそう訴えるので、ポケットに一度しまったあかねソードに、ポケットの中で手をかけ、いつでも戦える準備に入った。
近づいてきていた少女の足が止まった。その視線はテーブルの上に向かっている。そこには、さっきあかねが取り出した俺の父親と凛が写っている写真が置かれたままだった。
「この写真は?」
少女が聞いてきた。
「私の大切な人たちの写真。この人たちを探しているの」
あかねがそう答えると、少女は少し考え込んでいるのか、小首を少し傾げた状態で動きを止めた。もしかしたら、何か知っているのかも知れない。
「知っているのか?」
「いいえ」
俺に視線を向け、きっぱりと少女が言ってのけた時、ドアの向こう側が一気に騒がしくなった。
「司祭様が殺されているぞ」
どうやら、ドアの向こう側で司祭が殺されているらしい。この建物の造り、司祭が出て行ってから目の前の少女がここに入って来た事などから言って、この少女は司祭が殺されているのを目にしている可能性が高い。だと言うのに、そんな素振りも見せていなかった。
司祭を殺ったのはこの少女なのか?
そんな疑いの目を向けた時、ドアが開いて信者たちがなだれ込んで来た。
「司祭様を殺ったのはお前たちか」
違うと言って、信じてもらえる訳もない。話して分かる相手でも無さげ。
としたら、力で突破しかないかと思った時には、あかねはすでにあかねソードを構えていた。
早っ! ていうか、力で突破、即決かよ。
なんて、驚きの視線を向けて、遅ればせながら、俺もあかねソードを構えた。
「こ、こ、こいつら、レーザー兄妹だ」
一人の声に、信者たちの間に動揺が走った。
「そうよ。
あなたたちじゃあ、私たちには勝てないんだから」
そう言って、あかねは冷たい笑みを浮かべている。そんな危ない女の子の姿にぞくぞくしてしまう。って、妹にぞくぞくしてどうする!
「そうだぞ。
死にたくなかったら、そこを開けろ」
気を取り直して、俺も一喝する。信者たちは一歩引き下がったが、そこで踏ん張り堪えている。やっぱ、強行突破しかないか。
そう思った時、あかねが動いた。
あかねが信者たちに向けたあかねソードの切っ先をぐるぐる小さく回しながら、近づいていく。その表情は、「おらおら、死にたいのはどいつだ」的な笑みに見える。
あかねの気迫に負けた信者たちが逃げ始めた。一度崩れ始めると、もう止める事はできやしない。蜘蛛の子を散らすように、俺たちの視界からはみんないなくなった。
「お兄ちゃん、道開けてくれたよ」
にこりと俺に言った。自分が恫喝したと言うのに、この言い草と輝くような笑顔。妹が悪になってしまう。でも、そんな風に思いながらも、ぞくぞくしてしまう。って、妹にぞくぞくしてどうする!
「いやぁ。助かりましたよ。
お嬢さんはお芝居がお上手ですねぇ」
ステージの上の態度とは打って変わって、司祭は目いっぱい下手に出てきている。なにしろ、あかねのあんなくさい三文芝居を上手だと言って、おだてるくらいなんだから。
「さっきの約束は覚えているよね?」
「もちろん、覚えていますよ」
「当然よね。
忘れたなんて言ったら、二度と人前に出れないようにしてあげるんだから」
一方のあかねは態度がでかい。へたをしたら、目の前のテーブルの上にドカンと足を乗せて、威張り散らしそうなくらいの勢いだ。
「それだけは、ごかんべんを。
そう言えば、どうして私の神の力が通じなかったんでしょうかねぇ」
「まだ、そんな事言ってるんなら、ばらしちゃってもいいんだけど。
知らないとでも、思ってるのこの仕掛け。
ただの科学技術じゃん」
「えっ?
ご存じだったんですか?
どうして?」
司祭はあかねが装置の事を知っていると知って、一層動揺しているようだ。
「そんな事より、教えて欲しい事があるんだけど」
そう言うと、あかねは一枚の写真を取り出した。それは俺たちがこの世界にやって来るきっかけとなった首都崩壊直後に撮られた画像をプリントアウトしたものだ。
「この二人知ってるかな?」
テーブルの上にその写真を置き、そこに写る俺たちの父親と凛をあかねが指さした。司祭がその写真を手に取り、視線をそこに向けた時、少し目が見開いたようにも見えたが、すぐにテーブルに戻して否定した。
「いえ。残念ですが、知りません」
「本当か?
写真を見た瞬間、なんか表情が変わったような気がしたが」
「め、め、滅相もありません。
本当に知りませんよ」
凛の事を知らないのは当然として、あんな装置を使っているくらいだから、俺の父親の事は知っている可能性がある。俺的にはこんなうさん臭い教会とつながりがあって欲しくはないが、この司祭の態度はちょっと怪しすぎる。
「じゃあさ、あの装置が何なのかは知ってるのかな?」
「教団から言われるまま使っているだけで」
「そう言う事か」
ただ言われるがまま使っているだけで、開発者の事は知らないと言う可能性はあり得る話で、信じたくはない事実を突きつけられるより、無難な答えを俺は信じたくなっていて、その言葉に納得した態度をとった。
「あんた、使えない人なのね」
一方のあかねは「使えない奴」と言うとどめの一言を司祭に放った。確かに、この司祭は俺たちにとっては使えない奴だが、それを相手に面と向かって言ってのけるなんて、妹が悪になっていく気がしてならない。
「なら、教祖の名前を教えてもらえないかな?」
なんで教祖の名前に興味があるのか知らないが、大久保が割って入ってきて、そう質問した。
「教祖様は、教祖様であって、名前では呼ばれてませんよ」
「そうなの?
水野とか」
「だから、知らないんですよ」
大久保の言葉を司祭は淡々と否定したが、俺の方はそこに出た名前に動揺した。
それ、俺の苗字なんだけど。大久保さん、俺の父親の事疑っているの?
そんな視線を向けた俺に大久保は気づいた。
「例えばだよ。例えば」
どんな例えなんだ!
ちょっと戸惑う俺にお構いなしに、大久保は質問を続けた。
「じゃあ、高山とか、金山とか」
「いえ。だから、全く知らないんですよ。
名前では呼ばれてませんから」
「じゃあ、教会の本部のあるコロニーはどこかな?」
「分からないんです」
「それって、あり得なくない?
お兄ちゃん、この人、あの装置にかけちゃわない?」
「そっかぁ。それが速いか」
そうだった。あのシステムは本人の意思とは関係なく、人の記憶を読み出せるのだ。隠そうとしていても、暴くことができる。もっとも、マジなところでは、その装置の操作方法は知らないのだが、知っている風を装うと言うのはこの司祭へのプレッシャーにはなる。
「そ、そ、そんな事しても、知らないものは出てこないですよ」
うろたえ気味に、司祭は椅子から立ち上がった。
「逃げる気じゃないよね?」
恫喝っぽい言葉とは裏腹に、にこりとした笑みを浮かべているあかね。これは悪女だ、悪女になって行くような気がしてならない。
「は、は、ははは」
引き攣り気味で、司祭は後ずさりを始めた。やっぱ逃げる気らしい。
「待ちな!」
俺がそう言った時、部屋の扉が開き、大勢のいかつい男たちが入って来た。
「えぇーっと。穏便に話をするって雰囲気じゃないよな」
椅子から立ち上り、男たちを見渡しながら俺が言った。
「当たり前だろ。
知られちゃならない事を知られたんだ。
お前たちには消えてもらう」
司祭はそう言うと、男たちの背後に回った。
「仕方ない。やるか、あかね」
「うん。お兄ちゃん」
あかねもやる気らしい。俺もあかねも、あかねソードを構えて見せた。
この世界に来るまでは、あかねは俺が守る! 的な考えでいたんだが、剣道をやっていた訳でもないのに、なんでだか分からないがあかねは結構強いのだ。下手をしたら、俺よりも強いんじゃね? と言う気持ちが沸き起こってくるくらい。
しかも、あかねは敵を斬る事に躊躇を見せない。確かに普通の刀と違い、焼き切る感じな分、流血は少なめだが、それでも精神的な負担があるはずだと言うのにだ。
そんな俺たち二人はこの武器を手に、すでに幾多の戦いを潜り抜けてきていて、世間からは「レーザー兄妹」と呼ばれ、恐れられている。実際のところこの武器はレーザーではないのだが、イメージ的にはそうなんだろう。
「ま、ま、まさか、お前たちがあのレーザー兄妹だったのか」
司祭も俺たちの事を知っていたらしく、上ずった声で言った。
「そうだよ。
こんな武器、他に持ってる奴はいねぇし」
「や、や、やってしまえ」
司祭は男たちにその言葉を言い放つと、ドアを目指して駆けだして行った。逃げていく司祭に代わって、男たちが俺たちに襲い掛かって来た。
とは言え、力だけの男なんて、敵じゃない。
武器を持たずに襲い掛かってくる者を相手にするのは気はひけるが、敵である以上、情けは無用。それが、この世界の掟。向かってくる男たちをあかねソードでぶった斬る。
一振り、必殺。返り血は少ないが、肉が焦げる臭いや、切り裂く場所によっては髪が焦げる臭いに鼻を塞ぎたくなる場合もある。
男たちを倒すのに時間はかからなかった。はっきり言って、瞬殺である。命を落とさずにすんだ男たちも五体満足ではなく、戦意も失い、俺たちに背を向けて震えながら、逃げようとしている。
「終わったね」
あかねがあかねソードをポケットにしまい、にっこりとした表情で俺に言った。
「だな。
だが、逃げたあいつも捕まえに行くか。
どうせ、ドアは一つしかないんだしな」
「あの人、使えないのに?」
あかねの言葉を司祭が聞いたら、助かったと喜ぶだろうか?
それとも、使えない奴と言われて泣くだろうか?
微妙なところだが、まあ俺的にはどっちでもいい。
「どっちにしても、行くか」
そう言った時、ドアが開いた。
司祭が戻って来たのか、はたまた新たな敵か?
ちょっと身構えた俺の視界に入ったのは、俺たちと同じ年頃に見える黒髪ツインテールの一人の少女だった。誰なのか分からないが、教会側の人間と言うのは確実なはず。だと言うのに、自分たちの味方の男たちの惨状を目の前にして、表情一つ変えずに近寄って来る。
危ない奴かも知れない。
俺の本能がそう訴えるので、ポケットに一度しまったあかねソードに、ポケットの中で手をかけ、いつでも戦える準備に入った。
近づいてきていた少女の足が止まった。その視線はテーブルの上に向かっている。そこには、さっきあかねが取り出した俺の父親と凛が写っている写真が置かれたままだった。
「この写真は?」
少女が聞いてきた。
「私の大切な人たちの写真。この人たちを探しているの」
あかねがそう答えると、少女は少し考え込んでいるのか、小首を少し傾げた状態で動きを止めた。もしかしたら、何か知っているのかも知れない。
「知っているのか?」
「いいえ」
俺に視線を向け、きっぱりと少女が言ってのけた時、ドアの向こう側が一気に騒がしくなった。
「司祭様が殺されているぞ」
どうやら、ドアの向こう側で司祭が殺されているらしい。この建物の造り、司祭が出て行ってから目の前の少女がここに入って来た事などから言って、この少女は司祭が殺されているのを目にしている可能性が高い。だと言うのに、そんな素振りも見せていなかった。
司祭を殺ったのはこの少女なのか?
そんな疑いの目を向けた時、ドアが開いて信者たちがなだれ込んで来た。
「司祭様を殺ったのはお前たちか」
違うと言って、信じてもらえる訳もない。話して分かる相手でも無さげ。
としたら、力で突破しかないかと思った時には、あかねはすでにあかねソードを構えていた。
早っ! ていうか、力で突破、即決かよ。
なんて、驚きの視線を向けて、遅ればせながら、俺もあかねソードを構えた。
「こ、こ、こいつら、レーザー兄妹だ」
一人の声に、信者たちの間に動揺が走った。
「そうよ。
あなたたちじゃあ、私たちには勝てないんだから」
そう言って、あかねは冷たい笑みを浮かべている。そんな危ない女の子の姿にぞくぞくしてしまう。って、妹にぞくぞくしてどうする!
「そうだぞ。
死にたくなかったら、そこを開けろ」
気を取り直して、俺も一喝する。信者たちは一歩引き下がったが、そこで踏ん張り堪えている。やっぱ、強行突破しかないか。
そう思った時、あかねが動いた。
あかねが信者たちに向けたあかねソードの切っ先をぐるぐる小さく回しながら、近づいていく。その表情は、「おらおら、死にたいのはどいつだ」的な笑みに見える。
あかねの気迫に負けた信者たちが逃げ始めた。一度崩れ始めると、もう止める事はできやしない。蜘蛛の子を散らすように、俺たちの視界からはみんないなくなった。
「お兄ちゃん、道開けてくれたよ」
にこりと俺に言った。自分が恫喝したと言うのに、この言い草と輝くような笑顔。妹が悪になってしまう。でも、そんな風に思いながらも、ぞくぞくしてしまう。って、妹にぞくぞくしてどうする!
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