棗

のんびりちまちま書いてます。基本溺愛系が多いです。

↓の続き


「見世物としては最高に面白いよ。シエル様もお腹を抱えて笑えばいい」
「……一応、それなりの振る舞いはしないとならないから遠慮しておくよ」
「そう? じゃあ、俺だけの楽しみにしておくよ。帰ったら沢山話してあげる。……俺達で楽しもうよ」
「……悪趣味」

よくヴェレッドに言われる台詞だ。シエルから言う時は、心底そう思う時。 

「まあでも、王太子様がシエル様に王様みたいな顔をして近付いて来るのが目に浮かぶ。ふふ……モテモテだね」
「……」

ヴェレッドは根に持つ。故にこうやってシエルの癪に触る台詞をさらさら紡ぐ。天上人の如き美貌が険しくなっていく。
一線を越えそうになったと察知したヴェレッドはからかうのを止め小さな欠伸をした。
夜空に浮かぶ満月を眺めながら甘いお菓子を食べたい気分となり、戻ったらマカロンを大量に作って月を楽しもうと決めた。
馬車が王城に到着した。御者が扉を開けた。シエルが先に降り……

「はいはい降りる」
「はーいはい」

降りてこないヴェレッドに痺れを切らしたシエルが馬車内を覗いた。面倒くさげに降りたヴェレッドはシエルの斜め後ろを歩いた。既に誕生日パーティーは始まっている。
会場前の警備兵はシエルの姿を見ると姿勢を正し敬礼した。

全ての貴族の入場も済んでおり、今更自分が入るだけで目立つなのは嫌ということでアナウンス無しにしてもらった。

「ねえ、そういえばさ、シエル様は踊るの? きっと沢山の令嬢達がシエル様に群がると思う」
「その前に陛下や王太子殿下に挨拶だよ」
「あっそ。そういう所はきちんとするんだ」
「ヴェレッドは好きなように過ごしたら良い。帰る時声を掛けるから」
「ふーん」

面白い見世物は果たしてあるのか……
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登録日 2020.05.26 12:40

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