らんね

らんね

BLジャンルで小説書いています。

「僕のΩ~」バレンタインSS

~~ハッピーバレンタイン!~~

帰ったら、香坂が不機嫌だった。
 理由はわかる、僕がこの手に持っている紙袋だよね。

「ナンだよソレ?」
「……チョコレートです」

僕は背中に汗をかきながら正直に話す。そうだよな、小さめとはいえ紙袋入りでキレイにラッピングされたのって、「義理です」って言われても「は?」って思うよな?

「僕もね、貰うのはどうだろうって思ったよ? けどね、女子の集団って圧が怖くてね?」

ヘタレαな僕はその圧に負けたんだよ。マジでゴメンって。

「……ん」

香坂が無言で手を差し出してくるのに、僕は素直に紙袋を渡す。香坂はそれを持ってキッチンへ行って、サッサとラッピングを開けて中身を確認すると、可愛らしい花の形のチョコレートをまな板の上に並べ、ガンガンと包丁を叩きつけて砕いていく。その音が怖い、本当にすみませんでした!
 僕が部屋着に着替えている間に、チョコレートは跡形もなく溶けていた。それに卵やら粉やらをサクサクと混ぜてオーブンに突っ込まれ、放置されている間に夕食の準備だ。

「わ、ローストビーフ!」
「……作った」

香坂がテーブルの上で切ってくれるのが、レストランっぽくていい。ってか、こうしてバレンタインでご馳走を作ってくれるだろうからって、早く帰ってきたんだってば、僕も。

「美味しそう、嬉しい、ありがとう!」
「ふん、コレもまあ役に立ったな」

香坂は僕のテンションが上がったのを見て機嫌が多少戻ったみたいで、さっきのチョコレートの残りで作ったソースをお洒落にかけてくれた。そして忘れた頃にオーブンから取り出されたものは、ブラウニーに変身していた。出先で女から貰ってきたチョコレートなんて本当は捨てたいけれど、食べ物を捨てるのは料理人として許せない。その相反する気持ちの答えがコレってことだろうな。

「付き合いがあるのはわかる。けど、やっぱクッソ気分悪ぃ」
「ゴメンってば」
「お返しは俺が用意する」
「へ……? ああうん、わかった」

アレか、あの女子集団に「僕の恋人が用意してくれました♪」って言わないといけないヤツね? OK、そのくらいはもちろんやらせていただきます!
 そうそう、明日、ローストビーフの残りでお弁当作ってくれるってさ。やったね!
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登録日 2025.02.14 17:40

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