クリスにとっては、比較的、警備が手薄な１００ｍはあろうかという断崖絶壁をよじ登って行くしかなかった。さすがのクリスも日に夜をついで、ここまでやってきたため、何度もその崖から落ちそうになった。そして、ついにオーバーハングの崖に宙吊りになってしまい、もう腕に力が入らなくなってしまった。ぶらさがったまま、意識が遠のいていった。
「美鈴、ごめんな。もう、だめだ」
クリスは、心の中で呟いた。
と、その時、彼の通信装置であるブレスレットに震えを覚えた。
彼のコンタクトレンズをまばたきパターンで受信モードに切り替えると、何やら光りだした。そして、連動してピアスから花火の音が響いていた。もうほとんど入らなくなった力をふりしぼって、意識を取り戻すと、マチュピチュに花火があがっていた。ドラマのようにクリスに不思議な力がわいてきた。
「スリ、ペテン師、サギ師のオレ１人に人類がたくされているのか。お笑いだな」
笑いながらクリスは呟いた。