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歴史・時代 連載中 短編
千葉県富津市、東京湾岸に残る造海城。この城には次のような伝説が伝わっている。 戦国の三英傑が物心つかぬ赤子かまだ生まれてすらいなかった天文二年(1537年)のこと、当時上総国に勢力を誇っていた真里谷家で跡目争いが発生し、敗れた真里谷信隆は造海城に立てこもった。そこへ安房国より里見家の軍勢が押し寄せる。進退窮まった信隆は里見勢に対し、造海城を歌った和歌を百首詠めば城を引き渡そうと申し出た。すると里見勢はたちまち百首の和歌を示してみせたので、信隆は城を引き渡し、相模へ逃走していった……。 率直に言って疑問の多い伝説である。 言われた通り和歌を百首詠んで参りました、城をお引き渡しくだされと頼んだところで素直に応じる者がいるのだろうか。むしろ軍勢の消耗がひどく、正面から攻め取る自信が無くなっているからあんな戯れ言にも飛びついてきたのだろうと勘ぐられれば逆効果であろう。 ではこの伝説、全くの事実無根か? そうとも筆者には思えない。ここから先は、筆者なりに翻案した物語をご覧いただきたい。 戦国時代前期の南房総で繰り広げられる明日なき戦い。その帰趨やいかに。
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文字数 21,609 最終更新日 2025.05.04 登録日 2025.05.04
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