八木山

八木山

横浜平牧絵画館に行った。楽しかった。

言いたいことは題の通りなのだが、横浜平牧絵画館と言う場所について語りたい。
公式サイト:https://www.yh-g.org/collection.html
この場所は、いわゆる絵画における超絶技巧である「トロンプルイユ」において、日本人の大家である岩田栄吉さんに焦点を当てた私設美術館である。
トロンプルイユとは、まるでそこにあるかのような大きさと写実性を持って絵を描く技法であり、だまし絵の一種として扱われている。
ただ、だまし絵と言ってもエッシャーのように絵画単体で完結するのではなく、鑑賞者が手を伸ばすほどにそこにあるようなリアリティと言う点。
つまり鑑賞者の世界に干渉する点で他のだまし絵とは一線を画す、というものなのだ。
飛び出す絵、と言えばわかりやすいかもしれない。
2025年7月21日まで、岩田さんと現代の作家が描いたトロンプルイユの作品が展示されている。
ぞっとしたのは、どう見ても壁に付箋が張られているようにしか見えない作品だ。
山本大也先生と言う画家によるものなのだが、その絵の下には付箋が落ちており、入り口から見たときには本当に付箋の張られた壁にしか見えなかった。
入り口をくぐる時にはもう、ここがそう言う絵しかない場所だと知っていたにもかかわらずである。
思ったのは、サイズが絵の前の鑑賞者視点でより現物に近いものほど、言い換えれば遠近法が絵の前の鑑賞者の感覚に近いほど、そして現実的な具象であればあるほど、うっかり手が届くのではと思う名画に仕上がっているということだ。
例えば壁に貼られたトランプのカードのように、額縁に近い面に描かれていれば、その特性はさらに増す。
ほら、こういうのがあったんですよ、と言う写真芸術とは、それがあくまで「現実ではなく書き手の内的世界の出力」である点で全く異なるのだ。
ホキ美術館のような写実的絵画はそこに書き手の理想が詰まっている。
えちえちな女の子がいたのだ、という理想が。
それが手に届くかもしれないとさえ思わせる点で、トロンプルイユ絵画はその先にある
これが面白いのだ。
だって、実際我々は、描かれたものに手が届くのだから。
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登録日 2025.06.08 23:09

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