早瀬晶

早瀬晶

メラヴェル女男爵第2部の相続と財産の話

作品をお読みくださりありがとうございます。
お気に入り等にもいつも励まされています!

メラヴェル女男爵シリーズ第2部の【出題編】は次回投稿分で終わりになります。
今回投稿した分で一応手がかりは揃っていて、次回はミステリーの手がかりまとめ・ヒント及びロマンスの回になる予定です。

今回投稿した章「テディ・グレイストーン」では、現代日本人になじみのない20世紀初頭のイギリスの相続や財産の制度に言及があったので、少し解説を試みます。(第2部本編のネタバレや推理の手がかりは含まれません。)
私も専門家ではないので、あくまで"ざっくりとした理解のため"ということでご容赦ください。

文字数が多すぎると言われてしまったので、コメントに続きます。

早瀬
登録日 2025.07.11 01:22

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3
2025.07.11 01:24
早瀬晶
早瀬晶

■おまけ:女男爵と卿の財産は?
ロマンス短編でその内言及したい(婚約までたどり着けば……)と思っているのですが、現時点での彼らの設定です。

・メラヴェル女男爵
メラヴェル男爵位と男爵家の財産を相続しています。また、実家のグレンロス家の財産も父から相続しています。
主な収入は地代収入ですが、先代男爵の気まぐれによる鉱山投資が大当たりしていて、男爵家にしては多い収入を得ている設定です。
おそらく年収5000ポンドくらい(現代の日本円でだいたい1億円弱のイメージ)。
しかし、女男爵はまだ未成年(当時のイギリスの成人は21歳)なので、財産は母が管理しています。
女男爵自身は、成人したら、農業に頼りきりで減少する一方の地代収入をなんとかしたいのと、鉱山投資の調子が良い内に次の有望な投資先に変更したいということを考えているようです。
領地とロンドンに屋敷を所有していますが、特にロンドンのメイフェアにタウンハウスを所有(間借りではなく)しているのは男爵家の中では幸運だと思われます。

・アルバート卿
成人した際に父から信託財産からの利益と二三の屋敷を与えられている設定です。
主な収入は信託財産からの収入でおそらく年収2000ポンド+α(現代の日本円でだいたい5000万円程度のイメージ)。
屋敷の中には所有権を有しているものもありますが、一番価値のあるロンドンのピムリコの屋敷については一代使用権のみ認められていて、彼の死後はその時点の侯爵に返還しなければなりません。
当然、彼は父の屋敷を出て自分の屋敷に住むことも可能なのですが、侯爵夫人亡き後に社交界デビューした妹の付き添い役を効率的に務めるために父の屋敷に住み続けていたようです。
長兄の子爵が結婚した今は付き添い役はほとんど子爵夫人が担ってくれていますが、おそらく、時々妹を訪ねて来るある女性と顔を合わせる機会を捨てがたく、まだ父の屋敷に残っているのだと作者は思っています。

解除
2025.07.11 01:23
早瀬晶
早瀬晶

■相続税
19世紀以前のイギリスでは不動産に相続税がかからなかったので、土地を所有している貴族は相続税の心配をする必要はほとんどなかったようです。
しかし、19世紀末以降、徐々に不動産にも相続税が課されることになります。
特に、物語の舞台である1910年には、相続税率の大幅引き上げを含む「人民予算」と呼ばれる法案が貴族院を通過しています。
(ただ、この辺を細かく書くと複雑になるので、物語上は最近相続税の状況が厳しいことへの言及に留めています。)

■信託財産
イギリスでよく使われる制度らしく、ミステリーに頻繁に登場する印象です。
イギリスは判例法の国なので厳密な定義は困難らしいのですが、すごく簡単に言うと、財産を持っている人が他の人の利益のためにその財産を管理する制度です。
作中の例で言うと、先代シルヴァリー伯爵は自分の死後、伯爵未亡人の利益のために管理されるべき信託財産を設定していました。
先代伯爵の死後、信託財産の元金自体は当代のシルヴァリー伯爵(息子)の所有になりますが、その財産から生まれる利益(運用益など)は伯爵未亡人のものになります。

解除
2025.07.11 01:22
早瀬晶
早瀬晶

■限嗣相続
作中で「爵位と共に相続される財産」等と言われているのは、「限嗣相続の対象となる財産」のことです。
ドラマ「ダウントン・アビー」やジェイン・オースティンの小説が好きな方はよくご存じかもしれません。
(ミステリーへの集中を妨げないようできるだけ専門用語を使わずに表現しようとしていますが、かえってわかりづらいかもしれません……改善の余地がありそうです)

「限嗣相続」とは、特定の相続人にのみ爵位や財産を相続させることで財産の散逸を防ぎ、家系を維持する制度です。
通常は相続人は男性のみに限定されていて(メラヴェル男爵家は条件次第では女性相続人も可の珍しい家です)、相続した人ですら限嗣相続の対象となる財産を売却したり分割したりすることはできません。
ただ、その財産に「使用権」(あくまで"使う"ことができる権利。売却等はできない。)を設定することはできるので、作中では先代シルヴァリー伯爵が自分の死後、伯爵未亡人が住まいを失わないように限嗣相続の対象となる屋敷に「使用権」を設定して、それを彼女に与えることにしたようです。

解除
3

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