オッドアイの伯爵令嬢、姉の代わりに嫁ぐことになる~私の結婚相手は、青血閣下と言われている恐ろしい公爵様。でも実は、とっても優しいお方でした~

夏芽空

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【6話】ブルーブラッド家での初仕事

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 ルシルの部屋を出たアリシアは、近くにいたメイドに声をかける。
 
「メイド長に話したいことがあるのだけど、どちらにいるのかしら?」
「今でしたら一階の通路にいらっしゃるかと。ちょうど私も一階へ行くところでしたので、ご案内いたしますよ」
「ありがとう。とても助かるわ」

 三階から一階へと降りた二人。
 メイドの後ろについて、アリシアは通路を歩いていく。

 通路の掃除をしている気さくな雰囲気をしたメイド。
 その人物の前で、案内してくれたメイドの足が止まった。

「メイド長。奥様からお話があるようです」
「分かったわ。ご苦労様」
「それでは、失礼いたします」

 ここまで案内してくれたメイドは、アリシアとメイド長に頭を下げ、この場を去っていった。
 
「初めまして、奥様。メイド長をしているエイラです」
「私はアリシアよ。よろしくね、エイラ。それで話のことなんだけど、あなたに頼みたいことがあるの」

 家事仕事をしたい旨を伝える。
 
 エイラは驚いていたが、すぐに笑顔になった。
 
「家事をしたがる令嬢に、初めて会いました。このエイラ、とても感激しております」
「ふふふ、そんなに立派なものじゃないわ」
 
 気持ちの良いエイラの笑顔につられて、アリシアも笑顔になる。
 
「奥様には私のお手伝いをしていただこうと思いますが、それでよろしいでしょうか?」
「ええ、構わないわ」
「それではまず、掃き掃除からお願いいたします」
「任せて」

 エイラから箒を受け取ったアリシアは、慣れた手つきで掃除をしていく。
 
 掃き掃除は、フィスローグ家で何回もやってきたことだ。
 迅速丁寧に掃除をするコツは、体に染み込んでいる。
 
「おお……!」

 アリシアの掃除ぶりを見たエイラが感嘆の声を上げた。
 
 そしてそれは、彼女だけではない。
 近くにいた他のメイドたちも、アリシアの掃除ぶりに感動しているかのような素振りを見せていた。
 
「なんという素晴らしい仕事振り! 旦那様はものすごい方を妻に迎えられたようですね」
「ありがとうエイラ。お世辞でも、そう言ってくれると嬉しいわ」
「いえいえ、決してお世辞などではありません。みんなもそう思うわよね?」

 エイラの声に、他のメイドたちは大きく頷いた。
 
「エイラさんの言う通りだわ」
「とっても可愛らしい上に掃除もできるなんて、なんてすごい奥様なのかしら!」

 数々の称賛の声を受けたアリシア。
 少し恥ずかしいながらも、顔には大きな笑顔が浮かんでいた。
 こうして仕事振りを評価してもらえるというのが、素直に嬉しかった。
 

 それからもテキパキと家事を行っていく。
 時間はどんどん過ぎていき、気づけば外が暗くなり始めていた。
 
「今日の仕事はここまでです。お疲れ様でした奥様」
「エイラもお疲れ様。色々とありがとうね」
「いえいえ、感謝するのは私の方です。奥様の家事テクニックのおかけで、かなり捗りましたから」

 エイラがニコリと笑った。

「そろそろ夕食の時間になります。食堂に参りましょう」
「分かったわ」

 エイラと一緒になって、アリシアは食堂へ向かった。
 
 
 食堂の食卓テーブル。
 ルシルの対面に座ったアリシアは、夕食を食べ始めた。
 
「家事仕事はどうだった?」
「とても楽しく仕事ができました!」
「旦那様、奥様はとっても優秀な人材ですよ! メイドに欲しいくらい!」
「残念だがそれはできない。アリシアの本業は公爵夫人だからな」

 壁際に立つエイラのべた褒めの声に、ルシルは楽しそうに答えた。
 
「ルシル様。私、ここでの家事仕事が気に入りました。ですから、明日以降も今日と同じくエイラの補助をしてもよろしいでしょうか?」
「君がやりたいなら、俺は止めるつもりはない。エイラもそれでいいよな?」
「もちろん! 大歓迎でございます!」

 エイラの弾んだ声が食堂に響いた。
 大いに喜んでくれているようで嬉しい。

 アリシアの明日からの予定が決まったところで、ルシルが「そうだ」と呟いた。
 
「君に伝えておかなければならないことがある」
「はい」
「実は今、書類仕事がかなり立て込んでいるんだ。その影響で、しばらく一緒に食事できなくなるかもしれん。君は気にせず、一人で食事を摂っていてくれ」
「……承知しました」

 ルシルとの食事の時間は、アリシアにとって楽しいものだった。
 だから、少し寂しい、なんて感じてしまう。
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