【完結】まずは結婚からで。〜出会って0日、夫夫はじめました〜

小門内田

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第一章

day.3

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何とか諏訪を部屋に入れることなく、10分以内で最低限必要な物を用意した俺は、汗だくになりながらも、今度はベンツに乗り込む。
そして、役所に婚姻届を提出した後、諏訪の住む家に向かって、車は走っていった。

それにしても、このベンツのシート、ふっかふかで気持ちいい~。
エンジンも静かだし、空調も完璧だ。
………そして癪だが、諏訪の運転も、実にスマートだ。
それに、ちらっと盗み見たその横顔は、とても凛々しくて男前だった。

「着いたぞ。」

その言葉にハッとして前を見ると、どデカいタワマンが、目の前にドドーンとそびえ立っていた。

「……まさかとは思うんだけど、アレ?」

「そうだ。」

………あれはどっからどう見ても、億ションじゃねーか!?
某都内の一等地のタワマンかよ!?

これだけで、凄い資産家であることは、容易に想像できる。

「あのさ、賃貸じゃないよな?」

「違うな。」

諏訪はこちらを一切見ることなく、淡々と答える。

「ローンは?」

「ない。」

………マジで社長なんだ。
マジで金持ちじゃん!!
これぜ~んぶ俺の物になるなんて、最っ高~!
一体、家にはどんなお宝があるんだろ!?

テンションが爆上がりした俺は、車を降りると、足取り軽くノリノリで家に向かっていった。

俺の新居は、このオートロック式でかつ、コンシェルジュのいるタワマンの上層階で、そして、ワンフロア全部だった。

それだけでも驚いていたのに、いざ部屋に入ると、あまりの広さに目を見開く。
これ、本当に1人暮らしだったのかよ?

中に進んでいくと、リビングの真ん中には大きなソファが置いてあり、それ以外はピシッと整理整頓されている。
その生活感のなさに、今度は愕然とした。

「…もしかして、つい最近住み始めた?」

「いや。もう3年は住んでいる。」

そっかと呟き、改めて部屋を見渡す。
1人で住むには広過ぎるそこには、一応暮らせるだけの家具や家電は置いてある。
しかし、使用された形跡がないものも、ちらほらと見受けられた。

「今日からここがお前の家だ。好きに使え。俺はもう仕事に戻る。」

「えっ!?おいっ!ちょっと待てよ!!」

鍵はこれだと机に置き、俺の呼びかけに振り返ることもなく、諏訪はスタスタと出ていってしまった。
見知らぬだだっ広い部屋に1人取り残された俺は、呆然と立ち尽くす。

「嘘だろ……。」

このクソ野郎!と心の中で悪態を吐きながら、仕方なく各部屋を見てまわる。
寝室にはクイーンサイズのベッドが1つ、別の部屋にはワインセラーがあった。
全く使用していない部屋もあり、多分その内の1つが、俺の部屋になるのだろう。
どこの部屋も、塵一つ落ちておらず、整理整頓されている。
もしかして、綺麗好きなのだろうか。

冷蔵庫には水や炭酸水、お酒といった飲料しか入っておらず、台所には鍋や包丁といった調理器具はない。
どうやら、食事は全て外食のようだ。

広いくせに、置いている物がなさ過ぎて、探索はすぐに終わってしまった。

あーあ、お宝はなかったし、つまんねーの。

暇を持て余していると、突然、疲労感に襲われ、目の前にある大きなソファに、ボフッと倒れ込んでみる。
ふかふかのそれは寝心地がよく、いつの間にか、そのまま眠ってしまったようだった―。





「ん……。」

目を開けると、辺りはすっかり暗くなっており、だだっ広くて、ふかふかのベッドの上に横たわっていた。

あれ?
俺、確かソファにいたような気が……?
まぁいいか。

ふぁ~と欠伸をし、寝ぼけ眼を擦りながら部屋を出ると、リビングのソファにワイシャツ姿の諏訪が座っていた。
帰ってきたばかりなのだろうか。

「おかえり~。もう帰ってきたんだ。」

「もうって、お前、今何時だと思っているんだ?」

はあっと溜息を吐き、冷たい目で見てきた諏訪が、見ろと言わんばかりに時計を顎で差した。
はぁ?と思いながらも、渋々時計を見ると、なんと短針が夜の11時を指しているではないか!

「やべッ!寝過ぎた!そういや、アンタ晩飯」

ぐうぅっと腹の虫が大きく鳴ったことで、昼から何も食べていないことに気が付いた。
そりゃ、腹も減るよな。

頭を抱え、はああっと盛大に溜息を吐かれたと思ったら、どこかから買ってきた弁当を、ぐいっと押し付けられる。

「…これ食ってさっさと寝ろ。ベッドはお前が使え。」

「やった!弁当サンキュー!でも、ベッドはアンタのだろ?俺がソファで寝るよ。」

押し付けられた弁当を、早速開けた。
中身を見ると、どうやらコンビニや弁当屋のものではなく、どこかの料亭で包んでもらったもののようで、具材が豪華で美味しそうだ。

「今日は俺がソファで寝るから、お前が使えと言っている。どうせ明日には、お前のベッドが届く予定だからな。」

「ふーん。じゃあ、遠慮なく使わせてもらうわ。ってか、この弁当めっちゃ美味ぇー!」

ガツガツと弁当を腹の中にかき込みつつ、風呂場に向かっていく諏訪の背中を、ちらっと横目で追う。
………何だ、ちゃんと釣った魚に餌をやるタイプなんだ。
俺が食べていないかもって、弁当を用意してくれるなんて。
それに、ベッドの用意まで。

案外、悪いヤツでは無いのかも………?

俺は案外単純なのかもしれない。
たったこれだけのことで、絆されそうになっている。

食べ終わってソファで寛いでいると、風呂場から諏訪が戻ってきた。

「おい。」

「何?」

振り返ろうとする前に、突然、目の前にドサッと“何か”が落ちてきた。

こ、これは―!?
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