【完結】まずは結婚からで。〜出会って0日、夫夫はじめました〜

小門内田

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第一章

day.2

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突然、目の前の男に、嫁にならないかと勧誘された。

「………………はい?」

だが、何を言われたのか全く理解できなかった俺は、再度聞き直す。
すると、ふうっと溜息を吐かれた。

「2度も言わせるな。俺の嫁にならないか、と聞いている。」

まさか言語が通じないわけではないよな?という視線を投げつけられたが、この時ばかりは、できれば通じたくなかった。

「いやいや、俺達今日会ったばっかだぜ?さすがに嫁とか冗談キツい」

「毎月の小遣いとして50万渡すと言っても?」

提示されたその金額に、ピクッと耳が動いた。
バッと諏訪を見る。

「他に条件は?」

「毎月小遣い50万、もし契約中に俺が死ねば、遺産は全部お前のもの。但し、俺の家で一緒に住んでもらうこと、俺が望む時に抱かせること、どれだけの金額を積まれても、他の奴には抱かれないこと、俺の事に干渉しないこと……以上が条件だ。」

…変な条件が2つ程あるが、1つはまぁいいだろう。
だがもう1つは抗議させてもらう。

「今言った条件の内、1つは飲めないね。アンタの望む時に好きなだけっていうのは、無理。俺にも人権があるんでね。最低でも2週間に1回なら付き合ってやる。」

「ならば、最低でも1週間に1回なら?」

コイツ無表情で性欲薄そうな見た目なのに、強過ぎだろ!
言う通りにしてたら、俺の尻が爆破してたところだ。

「2週間に1回。これ以上は譲らねぇ。」

俺が折れないとみた諏訪は、はあっと溜息を吐いた。

「…いいだろう。」

よし、何とか尻を守ることができたと、ほっと胸を撫で下ろす。

あとは、問題の遺産の額だ。

「ちなみに、遺産っていくらぐらいになんの?」

「10億はくだらんな。」

じゅ、10億だと!!??
きっと俺が生涯必死に働いても、手にすることの無い金額だろう。

「提示された条件以外は、何してもいいんだよな?」

「あぁ。それ以外は自由だ。好きにしろ。」

ギュッと強く拳を握る。

「………わかった。俺、アンタの嫁になる。」

真っ直ぐに諏訪を見つめる。
しかし、表情を全く変えない諏訪は、静かに頷いただけだった。

「では、改めて。俺が死んだら、遺産の全てをお前に渡すと誓おう。だから、俺と結婚してもらえないか?」

「喜んで!」

すると諏訪は、鞄から何やら紙を2枚取り出した。
渡されたその紙は、婚姻届と離婚届だった。
離婚届には、既に署名がされている。

「明日お前の家まで迎えに行く。それまでに書いておけ。それと、嫌になったらいつでも契約破棄してくれて構わない。但し、契約破棄した場合は、お前の報酬は0だ。」

つまり、離婚届を勝手に書いて提出してもいいけど、遺産はおろか、財産分与もないってことか。

いつの間にか部屋に届いていたスーツを着て、スタスタと部屋を出ていこうとした諏訪が、ドアの前でピタッと足を止めた。

「…そうだ、もう1つ、重要な条件を言い忘れていた。俺から離婚を切り出したら、お前は離婚に応じること。但し、その際のお前の報酬も0だ。」

「は、はぁ~!!??アンタ、その後出しはズリぃだろ!?」

だが、諏訪は俺の抗議には一切耳を傾けず、それだけ言い残すと、バタンと部屋を出ていってしまった。

「完っっ全に早まっちまったよ、俺……。」

その後ろ姿をぽかんと見送った後、ボフッともう一度ベッドに倒れ込んだ。

勢いで承諾してしまったが、あの無神経な男と仲良くなれる気がしない。
明日から突然の結婚生活が始まるが、不安しか存在しなかった―。




結婚の契約を結んでしまった次の日。
俺は大学を休んで自宅にいるが、気持ちが落ち着かず、自分の家の中なのに、あっちへ行ったりこっちへ行ったりして、そわそわとしていた。

確か、諏訪が今日家まで迎えに来るって言ってたよな。
だけど、アイツに住所は教えてねぇのに、どうやって来るんだろ?
もしかして、あの契約は幻になる!?

なんて期待半分、残念半分で悶々としていたら、ピーンポーンとチャイムが鳴った。
玄関に飛んで向かい、恐る恐るドアスコープを覗くと、なんと住所を知らない筈の諏訪が、目の前に立っているではないか。

ホラーかよ!

もう一度チャイムを鳴らす諏訪に、内心ゾッとしながらも、渋々この重い扉を開けた。

「遅い。出るのにどれだけ時間がかかるんだ。」

開口一番に文句を言ってきたこの男は、今日も今日とて仏頂面だった。
腕を組み、冷たく俺を見下ろしている。

「来て早々うっせぇなぁ。ってか、マジで来たんだ?」

ヒクッと口元を引き攣らせても、諏訪は眉一つ動かさない。
それどころか、当たり前だとでもいうように、平然と答えやがった。

「昨日迎えに行くと伝えた筈だが?」

どうやら、コイツは俺がドン引きしていることに気付いていないようだ。
いや、それとも、わかっていて無視してんのか?

「いやいや、俺、アンタに住所伝えてなかったと思うんだけど。どうしてここがわかったんだよ?」

くだらない質問だと言わんばかりに、はあっと盛大に溜息を吐かれた。
そして、相変わらず感情の読めない目で、俺を見据える。

「お前、昨日ホテルの床に、財布を落としただろう。その時に中身を少し覗かせてもらった。無論、盗ってはいない。ちゃんと返してあっただろう?」

「………マジ?」

クソッ、一生の不覚!!

いつ落としたんだろうか。
………全く記憶にねぇ~!
まさかその一瞬だけで、ここに辿り着かれるなんて……!

ギリッと奥歯を噛み締めて、キッと目の前の男を睨みつける。

「ところで、用意はできているんだろうな?」

俺の睨みをスルーした諏訪が、そのまま部屋に入ってこようとするのを、バッと両手を広げ、それをブンブンと上下に振りまくりながら、必死で阻止する。

「うわぁー!今やってる!今やってるから!あと15分だけ時間をくれ!」

「遅い。10分だ。それなら、このまま外で待っていてやる。」

コイツ鬼か。

まさか来るとは思っていなかったから、実は何の準備もしていない。

だが、絶対に、入ってこられたくはない。

「わかったよ!そのかわり、絶対入ってくんなよな!」

そう捨て台詞を吐いて、俺はダッシュで用意するハメになってしまった―。
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