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かくして世界は救われた
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一年後。
イザベラ、ジークベルト、そしてマーガレットは、無事に世界を救った。
今宵は、それを祝しての皇帝主催の晩餐会。
帝国中の貴族たちが集まり、口々にイザベラたちに祝いの言葉を述べる。
「ちょっと、祝いの席よ。笑いなさい」
イザベラは、マーガレットの脇腹を肘でつつく。
「……ええ」
マーガレットは引き攣るような笑いで、周りに応対する。
やがて、先触れが皇帝と皇后、そして皇太子の御成を告げた。
貴族たちが頭を下げる。
皇帝が咳払いをし、「闇の力を払い、世界を救ったこと、礼を言う」と告げた。
今回は前回の舞踏会とは違い、皇帝の言葉は短かった。
次いで皇太子が一歩前に出る。
「イザベラ、そしてジークベルト。その方、二人にはどれほど感謝してもしきれない。お前たちはこの世界の救世主だ」
「光栄でございます」
イザベラたちはうやうやしく頭を下げた。
マーガレットが納得できないという顔で一歩、前に出る。
「お待ち下さい、殿下。わ、私も……いえ、私こそ、世界を救ったのです! 私の聖力がなければ、闇は決して……」
「? マーガレット嬢。いくらなんでもそれは図々しいだろう。世界を救ったのは、イザベラとジークベルト。君はイザベラ嬢の仲間かもしれないが」
「仲間? 違います! 私が主役なんです! 私の聖力がなければ闇は払えなかったのですよ!?」
しかし皇太子は理解に苦しむと、かぶりを小さく振った。
「その聖力とかいうものだが、君が使っているのを一体いつ、誰が見たと言うんだ。イザベラからの報告書には聖力というものは一切書かれていないぞ」
「は、い……?」
世界を救うにはマーガレットの聖力なくして実現できなかった。
しかし彼女が聖力を使う場面を目撃したのはイザベラたちだけ。これはゲーム中でもそうだった。
たとえば誰も知らぬ未踏の地下神殿であったり、闇の力との最終決戦でもマーガレットの活躍を見ていたのはイザベラと、ジークベルトの二人だけ。
ゲーム中では、同行していた攻略キャラたちが皇帝たちに、世界を救ったのはマーガレットの力だと説明するからこそ、彼女の功績が永遠に語り継がれることになる訳で――。
「ではマーガレット嬢。今ここでその聖力を使ってくれ。そうすれば、君の言葉を信じよう」
「それは」
マーガレットは言葉に詰まる。
それもそのはず。
彼女は最終決戦で聖力を出し尽くし、力を失ったのだった。
ゲーム中では普通の少女に戻ったマーガレットは攻略キャラの中で最も好感度の高いキャラクターと結ばれ、新しい人生を歩むことになる。
しかし今のマーガレットにそんな相手は存在しない。
マーガレットは俯く。
「……マーガレット・ハニーベリー。お前には特別なものを用意してある」
「え……なんでしょう!」
「衛兵!」
突如として、絢爛とした舞踏会場に現れる物々しい兵士たちが、マーガレットを取り囲んだ。
貴族たちが慌てたように、マーガレットを遠巻きにする。
「殿下、これはどういう……」
「お前は、フリード伯爵をけしかけ、公爵夫人イザベラ嬢を殺害しようとした! その罪は免れるものではない!」
マーガレットは目を見開く。
「世界を救えば、罪は不問にするお約束のはず! 陛下が発行された文章を持っています……!」
昂奮していたのだろう、マーガレットは懐から、くだんの文章を取り出す。
「どうか、ご確認を!」
衛兵に皇帝の名前の記載された命令書を衛兵に手渡す。
衛兵から、皇帝は文章を受け取った。
「余のサインとは全く異なる。こんな偽造文章で言い逃れをしようとは笑止千万!」
イザベラ、ジークベルトはレオポルドと意味ありげな視線を交わす。
マーガレットは、イザベラを睨んだ。全てが仕組まれたことに気付いたのだろう。
「ふざけんな、クソ女ぁぁぁぁっ!」
逆上したマーガレットがイザベラに襲いかかろうとするが、兵士たちによってあっという間に取り押さえられてしまう。
「は、離せぇ! 離しなさいよぉ! わ、私はこのゲームの主人公よ!? 世界を闇から守った救世主なのよおおおおおお! ざけんなああああああああ……!!」
マーガレットの本性に、貴族たちは見てはいけないものを目の当たりにしたように、目を背ける。
「なんて怖ろしい女だ。さっさと連れて行け!」
「ありえない、こんなのありえないわよおおおおおおお……! 畜生ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……!!」
最後まで絶叫しながら、マーガレットは連行されていった。
皇太子がにこりと柔らかな笑みをたたえ、前に出た。
「場の空気を変えるとしよう。――音楽を!」
王立楽団が美しい音色を奏でる。皇太子に「さあ、思う存分、この夜を楽しもう」と促されて、貴族たちが次々と手に手を取り合い、踊り始める。
「イザベラ、一曲お願いできるか?」
ジークベルトが差し出してくれる手を、イザベラはしっかりと取る。
「はい、喜んで」
きらめく光に包まれた宮廷内で、二人は笑みを交わし、心の赴くがままに踊りに興じる。
(この場面、エンディングシーンで描かれたのと同じだわ)
エンドロールを背景に、ヒロインが意中の攻略キャラと踊る、涙なくしては見られない感動的なシーン。
今、イザベラはまさにそれと同じ場所で、ジークベルトと踊っている。
「……イザベラ、お前と出会えたことが、俺の一生を変えてくれた。ありがとう」
「こちらこそ、ジーク様と出会えて、幸せですっ」
イザベラはジークベルトに体を預け、ゆったりとしたメロディに身を任せる。
微笑んだイザベラの顔は悪女ではなく、ヒロインのように輝くのだった。
イザベラ、ジークベルト、そしてマーガレットは、無事に世界を救った。
今宵は、それを祝しての皇帝主催の晩餐会。
帝国中の貴族たちが集まり、口々にイザベラたちに祝いの言葉を述べる。
「ちょっと、祝いの席よ。笑いなさい」
イザベラは、マーガレットの脇腹を肘でつつく。
「……ええ」
マーガレットは引き攣るような笑いで、周りに応対する。
やがて、先触れが皇帝と皇后、そして皇太子の御成を告げた。
貴族たちが頭を下げる。
皇帝が咳払いをし、「闇の力を払い、世界を救ったこと、礼を言う」と告げた。
今回は前回の舞踏会とは違い、皇帝の言葉は短かった。
次いで皇太子が一歩前に出る。
「イザベラ、そしてジークベルト。その方、二人にはどれほど感謝してもしきれない。お前たちはこの世界の救世主だ」
「光栄でございます」
イザベラたちはうやうやしく頭を下げた。
マーガレットが納得できないという顔で一歩、前に出る。
「お待ち下さい、殿下。わ、私も……いえ、私こそ、世界を救ったのです! 私の聖力がなければ、闇は決して……」
「? マーガレット嬢。いくらなんでもそれは図々しいだろう。世界を救ったのは、イザベラとジークベルト。君はイザベラ嬢の仲間かもしれないが」
「仲間? 違います! 私が主役なんです! 私の聖力がなければ闇は払えなかったのですよ!?」
しかし皇太子は理解に苦しむと、かぶりを小さく振った。
「その聖力とかいうものだが、君が使っているのを一体いつ、誰が見たと言うんだ。イザベラからの報告書には聖力というものは一切書かれていないぞ」
「は、い……?」
世界を救うにはマーガレットの聖力なくして実現できなかった。
しかし彼女が聖力を使う場面を目撃したのはイザベラたちだけ。これはゲーム中でもそうだった。
たとえば誰も知らぬ未踏の地下神殿であったり、闇の力との最終決戦でもマーガレットの活躍を見ていたのはイザベラと、ジークベルトの二人だけ。
ゲーム中では、同行していた攻略キャラたちが皇帝たちに、世界を救ったのはマーガレットの力だと説明するからこそ、彼女の功績が永遠に語り継がれることになる訳で――。
「ではマーガレット嬢。今ここでその聖力を使ってくれ。そうすれば、君の言葉を信じよう」
「それは」
マーガレットは言葉に詰まる。
それもそのはず。
彼女は最終決戦で聖力を出し尽くし、力を失ったのだった。
ゲーム中では普通の少女に戻ったマーガレットは攻略キャラの中で最も好感度の高いキャラクターと結ばれ、新しい人生を歩むことになる。
しかし今のマーガレットにそんな相手は存在しない。
マーガレットは俯く。
「……マーガレット・ハニーベリー。お前には特別なものを用意してある」
「え……なんでしょう!」
「衛兵!」
突如として、絢爛とした舞踏会場に現れる物々しい兵士たちが、マーガレットを取り囲んだ。
貴族たちが慌てたように、マーガレットを遠巻きにする。
「殿下、これはどういう……」
「お前は、フリード伯爵をけしかけ、公爵夫人イザベラ嬢を殺害しようとした! その罪は免れるものではない!」
マーガレットは目を見開く。
「世界を救えば、罪は不問にするお約束のはず! 陛下が発行された文章を持っています……!」
昂奮していたのだろう、マーガレットは懐から、くだんの文章を取り出す。
「どうか、ご確認を!」
衛兵に皇帝の名前の記載された命令書を衛兵に手渡す。
衛兵から、皇帝は文章を受け取った。
「余のサインとは全く異なる。こんな偽造文章で言い逃れをしようとは笑止千万!」
イザベラ、ジークベルトはレオポルドと意味ありげな視線を交わす。
マーガレットは、イザベラを睨んだ。全てが仕組まれたことに気付いたのだろう。
「ふざけんな、クソ女ぁぁぁぁっ!」
逆上したマーガレットがイザベラに襲いかかろうとするが、兵士たちによってあっという間に取り押さえられてしまう。
「は、離せぇ! 離しなさいよぉ! わ、私はこのゲームの主人公よ!? 世界を闇から守った救世主なのよおおおおおお! ざけんなああああああああ……!!」
マーガレットの本性に、貴族たちは見てはいけないものを目の当たりにしたように、目を背ける。
「なんて怖ろしい女だ。さっさと連れて行け!」
「ありえない、こんなのありえないわよおおおおおおお……! 畜生ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……!!」
最後まで絶叫しながら、マーガレットは連行されていった。
皇太子がにこりと柔らかな笑みをたたえ、前に出た。
「場の空気を変えるとしよう。――音楽を!」
王立楽団が美しい音色を奏でる。皇太子に「さあ、思う存分、この夜を楽しもう」と促されて、貴族たちが次々と手に手を取り合い、踊り始める。
「イザベラ、一曲お願いできるか?」
ジークベルトが差し出してくれる手を、イザベラはしっかりと取る。
「はい、喜んで」
きらめく光に包まれた宮廷内で、二人は笑みを交わし、心の赴くがままに踊りに興じる。
(この場面、エンディングシーンで描かれたのと同じだわ)
エンドロールを背景に、ヒロインが意中の攻略キャラと踊る、涙なくしては見られない感動的なシーン。
今、イザベラはまさにそれと同じ場所で、ジークベルトと踊っている。
「……イザベラ、お前と出会えたことが、俺の一生を変えてくれた。ありがとう」
「こちらこそ、ジーク様と出会えて、幸せですっ」
イザベラはジークベルトに体を預け、ゆったりとしたメロディに身を任せる。
微笑んだイザベラの顔は悪女ではなく、ヒロインのように輝くのだった。
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