昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ

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三章

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 大学を終えたあと、健を伴ってアパートを目指す。今日はれみが来る日じゃないから、スーパーで買い物をしてから。実験室でのことで決意が固まったからか、買い物途中でもれみに矯正されたことが発揮されている。値段とか安さ、それから作れるレパートリー。献立を考えながら。健にツッコまれながら慎重に吟味していたらいつもよりだいぶ遅くなってしまった。

 部屋に着いてから、布団と洗濯物を取り込んでおく。教わった畳み方でしまって料理しようとしたら健が目を丸くしていた。ゲームしている手も止まっている。

「なんだよ」
「お前、変わったな。そんなきっちりしてなかったじゃねぇか」
「れみのおかげかな」
「彼女自慢かよ殺すぞこのリア充」

 急に嫉妬と殺意に満ちた形相に。人の気も知らないで勝手なやつめ。居間から移動しようとすると、健がズボンを掴んできた。

「なんだよ」
「もがせろ」

 は?

「お前の男をもがせろ。もしくは袋のほうを去勢させろ。そうすればお前はもうれみちゃんと終わりだ」
「なにほざいてんだお前は」

 健がどんな精神状態でどんな感情なのかもう判別したくない。ただ本気でズボンを脱がせようとしてきてるのはたしかだ。乱暴に揺さぶって引きずり落とそうとして、抵抗しなければいけなくなる。というかこいつちょっと酒飲んでる。

「ちょ、お前やめろ! まず空き缶ちゃんと水洗いして潰しておけ!」
「うるせぇええええ!! ついこの間まで仲間だったのに運がよかっただけで一抜けして幸せになりやがってえええええええ!! しかも無意識的に彼女いますだから幸せですアピールしてきてマウントとりやがってええええええええ!!」
「歪んだ解釈しすぎだろ! そんなつもりじゃなかったわ!」
「無自覚系かよおおおおおおお!! どこの主人公だあああああああ!!」
「なんの話をしてんだ!」

 健は俺の膝裏ごと掴んで押し倒した。そのまま二人でドタバタと揉める。プロレスさながらだけど、どこかおふざけが加わっている。友達で遠慮がない相手同士でできる、やり慣れたいつものやりとりだけど相手が酔っているから力が強くて面白さよりもお互い真剣味がある。

「いい加減にしろ!」
「エンッッッ!!」

 張り手をおもいきり頬にぶち込んで少し吹き飛んだ。息を整えながら休むけど、とんでもない状態だ。抵抗しつつも、完全に防ぎきれなかったから俺はズボン一丁だけじゃなくて上半身裸になっているし。健なんて半ケツだし。なんで半裸の男二人で室内でいるんだろう。
 
 インターフォンで、来客の存在に気づく。のぞき穴から見るとれみだった。

「どうして今日来たんだ? 予定になかっただろ?」
「抜き打ちです。早く入れてください」
「ああ、ちょっと待っててくれ。今服着てくるから」
「え? 兄さん今裸なんですか? もしかしてお風呂にはいってましたか? すいません」
「いや、違くて。実は今人が来てるんだよ大学の」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は・・・・・・・・・・・・?」
「それで、そいつと飯食おうとおもってたんだけどいろいろあって。そいつも今半裸なんだ。とにかく――」
「どういうことですか?」

 声の質が変わった。おもわず固まってしまう。足が縫いつけられたように床から動かない。底冷えしてしまう恐怖がれみにはあった。

「どうして兄さんも裸で一緒にいる人も半裸なんですか? その人とどういう関係なんですか?」
「い、いや今それどころじゃなくて。とりあえず服着させてくれ」
「どうしたら二人で裸になれるんですか? 室内でなにをしていたんですか?」
「い、いや――」

 ちゃんと説明すればわかってくれる。なのに舌がもつれて上手くできない。

「と、とりあえずちょっと待っててくれ! 服着てくるから!」

 れみを待たせて、居間に戻る。けど急がなきゃいけないって焦っていたからか上手く足がズボンを通らず、そのままうつ伏せで倒れている健の上に覆い被さるように倒れた。

「いてて・・・・・・・・・・」
「これはどういうことですか!」

 え!? と驚いて顔をあげると、れみが室内に入っていた。仕切り戸の前で立ち尽くしている。

「ちょ、なんで入れたの!?」
「大家さんからもらったんです! 妹だと説明したらもらえました!」

 あのくそ大家ああ! 管理意識ガバガバすぎんだろうが! 訴えてやる!

「そんなことは今はどうでもいいんです!」
「俺にとってはどうでもよくないことだよ!」
「うるさいです! それよりも兄さんがまさか男の人とそんな関係になっていることのほうが問題なんです!」

 え? どういうこと?

「兄さんがそっちの道に進んでいたとは・・・・・・敵は小田先輩じゃなくて長井先輩だったんですね・・・・・・・・・予想できなかった伏兵です・・・・・・・・・。これじゃあもうどうしようもないです! 矯正不可能です!」
「え? え?」
「別に恋愛対象が同性だからではありません! 昨今そういった問題は世界的にみても広がっているので完全に否定するつもりはありません!」
「ちょっとれみ? ほんとなにいってんの?」
「むしろBLや男性同士の恋愛は日本でも戦国時代衆道と呼ばれてたしなみとされていました! 私もそれについては個人的に理解しています! ええ! おおいに!」
「BL? なんのことだよ。わかるように言ってくれ」
「まだ白をきるんですか! 兄さんと長井先輩は交際しているんでしょう!」
「は?」
「だから二人で裸でいて私が来て焦って今もそんな体勢でいるんでしょう!」

 ゆっくり、ゆっくり、とまった思考を再開させてようやくれみの勘違いを把握し納得する。

「いや違う違う。俺と健はそんな関係じゃない」
「素直に言えないのはわかります! やはりいまだろいろと波紋を生んでいる問題ですし、差別・偏見もあるでしょう! けど私にまで隠さないでください!」
「だから違くて」
「けど大学生にはまだ早いです! ちゃんと二人で世間と戦える立場になってからでないと! 大学でも噂になりますよ! むしろ私が噂を流します! そして二人を別れさせます!」
「お前ほんとちょっと落ち着け! 意味不明になってるぞ!」
「私だって衝撃を受けているんです! 兄さんに恋人がいてその人が男で既に肉体関係があったなんて複雑すぎます! 一気にとカウンターとドラゴンフィッシャーブローとデンプシーロールを喰らいました!」
「お前以外とマニアックだな! とにかく落ち着け!」
「つまり私の本当の敵はこの長井健二郎ということです!」
「頼むから話を聞いてくれえええ!」

 もう収集不可能。混乱の極みにあるれみは聞く耳もたない。健が目を覚まし、二人で事情を説明するけど、れみは納得していない。それから夕食を作ることになったけど、俺と健を二人っきりにしたくないのか距離をとらせる。食事中も肩と肩で触れあうくらいの近さで。逆に健とは距離をとらせる。

「兄さん、あ~んです」

 ブフォ、とご飯粒を吹き出しそうになった。

「いつもしていることではないですか。恋人なんですから普通です。それとも長井先輩の前ではしたくないと? やはりなにか特別な関係が?」

 れみの誤解を終わらせるためにも、満足するまで付き合うしかないらしい。けど、それがイチャイチャを見せつけられているとおもったらしい健は、呪い殺しそうな眼光で俺を睨んでくる。箸をガジガジと噛み続ける仕草はマナーどうこうではなく、誰のせいでこうなったかわかってんのかって苛立ちすら覚える。

「れみ、もう遅いし帰ったらどうだ?」

 食事を終えて食器を洗ったあと、俺の改善点をレクチャーし、諸々の指導を終えたれみにそう提案した。

「やはり長井先輩と二人で過ごしたいんですか? だから私が早く帰るように、もう来ないように真剣に話を聞いているのですか? 最近、生活が改善の傾向にあるのはそういうことですか?」

 めんどくせぇ・・・・・・・・・。そこはかとなく・・・・・・・・・。

「もう、どうすればわかってくれるんだよ。俺は健と付き合ってないし。女性にしか興味ないし。第一れみに嘘つくわけないだろ」
「・・・・・・・・・え?」

 ん? なんか反応示した?

「私に嘘はつかない?」
「ああ。そうだよ。れみは俺にとって大切な存在だし」

 れみはどうかわからないけど、俺はれみを今でも妹だっておもってる。

「れみと、れみとの関係を大切にしたいし」

 昔、俺は自分を優先した。そのせいでれみを泣かせて、悲しませた。もう二度とそんなことしたくない。それにいつ終わるかしれない、れみと過ごす時間も楽しくて嬉しい。ずっと続いてほしいと願っていながら今現在終わらせようとしているけど。だからこそ貴重で大切なんだ。今まで会えていなかった妹と、もう会えなくなるこの関係が。

「そうですか。それが兄さんの本当の気持ちなんですね。今は信じます。信じたいです。私も・・・・・・・・・いえなんでもありません」

 最後言い淀んだのが引っかかったけど、けど納得したらしい。というかなんか機嫌がよくなってる。

「まったく、仕方ない兄さんです。けど、もう少し時と場所を選んでください。私だってまだ答えが決まっていませんしいきなりそんな大胆な告白なんて」

 答え? 告白? なんのこと?

「なぁ瞬、俺もう帰るわ」
「お、そうか」

 いい具合で健が帰ろうとしてほっとする。これでれみはより安心するだろう。

「そうだ、れみちゃん。よかったら連絡先交換しない?」
「あ?」

 と油断していたら最後にこいつとんでもない爆弾を。

「どうしてですか?」
「それは――」

 健の口を塞いでそのまま移動、事情聴取にうつる。

「お前どういうつもりだ」
「なんだよ。別にれみちゃん狙ってるわけじゃねぇ。れみちゃんとお前付き合って間もないだろ? だからアドバイスとか相談とかできる相手必要じゃないかって俺なりの配慮だよ」

 ヘラヘラしながら流暢な説明。それが本当ならいい。けど、こいつ健だしなぁ。なんか魂胆があるんじゃないかって気がしてならない。

「まぁそうやって女子高生と仲良くなって友達紹介してもらったり、お前が捨てられたときおこぼれに預かれないかな~って」

 うっわ、最低。

「だめだ」

 妹とこいつが連絡を取り合うのは、絶対よくない。れみが悪影響を受けるだろうし。それに、健の申し出は俺とれみが恋人関係っていう前提のもの。恋人じゃなくて元義理の兄妹という複雑な事情があるとはいえ、俺とれみの関係は近い将来終わる。絶対に。そんな背景を鑑みれば健とれみが今後も連絡を取り合える間柄っていうのは喜ばしくない。

「なんだよ嫉妬か? ん? 恋人が異性と連絡し合うのは認めないってやつか? 束縛激しい男は嫌われるぜ?」

 面白がって肘で小突く健を、どうやって諦めさせるか。

「健、今の女子高生について知ってるか?」

 名案が浮かんだ。

「れみから聞いた話だけど、今の女子高生ってやばいらしいぞ」
「どうやばいんだよ」
「まず友達だろうと恋人だろうと三十分に一回は連絡を取り合うって暗黙の了解があるらしい。それに少しでも返信が遅れたりできなかったりするとそのままブロック、仲間内からもハブられて孤立するらしい。恋人でも更に酷くなる」


 女子高生に幻滅させるでたらめを吹き込めばいい。れみという現役の女子高生と付き合っていると健はおもっているし、だからこそ誰より情報を持っているという立場の俺が教えることは信憑性が高くなる。こういえば下心がある健は諦めるだろう。

「それくらい俺は受け入れるよ。講義だろうとバイトだろうと女の子を優先する」

 くそ、菩薩みたいに微笑みやがって。まぁいい次だ。

「あと女子高生って下の毛今剃らないらしい」
「つまり皆あそこ剛毛なのか。興奮する」
「それに、定期的に一万円のお小遣いを渡さないといけない」
「それで信頼と恋人関係を得られるなら安いものだ」
「恋人以外の異性と口をきくのも同じ空間にいるのも大人数で遊ぶのも禁止だ」
「大学やめてお坊さんになる覚悟はある」
「女子高生の言うことが絶対でわがままだろうとなんだろうと口答えはだめ。ドタキャンされても受け入れないといけない」
「大人の余裕を見せてやんよ」
「あと、皆未だにおねしょしてておむつ付けてる」
「最近聖水プレイと幼児プレイに興味持ってる」
「へこたれねぇなお前は!」

 そしてとんでもねぇやつだ! 引けよ! 諦めろよ! なんで答えるごとに熱意が強くなっていくんだよ! どんだけ恋人ほしいんだ!

「あと――」
「兄さん? なにを話しているんですか?」

 それかられみに嘘をついていることがバレ、正座で説教。れみと健が連絡先を交換するのを黙って見ているしかできなかった。

「お前、どうしてあいつと交換したんだ?」
「兄さんは、私とあの人が連絡しあうのがいやなんですか」
「それはそうだろ」
「ですよね。あんな嘘をついてまで拒んでいたくらいですから。けど、私にも私の考えがあるのです」

 正直、不安だ。今後変なことにならなければいいけど。

「大丈夫です。兄さんの気持ちがあの人にないのはさっきはっきりと教えてもらいました。だから、嫉妬しないでください」
「ん?」
「まったく、兄さんは本当に仕方がない人です」
「・・・・・・・・・・・・なにかあったら言ってくれ」

 まぁれみが嬉しそうだから、いいかな。 
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