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三章
Ⅴ
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黒ずんだ汚れが小さくなっていく。見渡してから使い古したボロボロの歯ブラシを置き場所にセット。換気扇を回して戸を開けっぱなしにしてから達成感が遅れてやってくる。排水溝のヌメリも確認してまだ大丈夫だけど念のため手入れをしておく。普段から奇麗さを保つことが大切だというのはれみから教わったことだけど、最近は習慣づいていて風呂上がりにも軽く掃除することを心がけている。
空になった洗剤の容器の中身を見て残量から買い足さないといけないからメモ帳に記しておく。見違えた部屋にいると、気分が明るくなってくる。れみに目敏く矯正されてから大学に必要な教科書、書類、用紙類は置き場所を決めて取り出しやすいようにしているし、本とかパソコンとか食器とかも使い終わったら所定の場所に戻す癖がついている。矯正されているときはめんどうだったけど、今までどうしてできなかったかと今では不思議だ。
れみが一からやるんじゃなくて、俺自身にやらせているのが功を奏したんだろう。体を動かすことで習慣化させる。その甲斐あって最近では家に来ても改善点を言わなくなっている。まだ料理とかはれみには勝てないけど、人並みに自炊できるレベルだと自信がある。
布団も干しておかないと寝るとき違和感がするようになった。太陽の暖かさを充分に吸収していると錯覚する布団で寝ると気持ちがいい。逆にそうじゃないと落ち着かない。枕カバーも同様。
最初はどうなるかとおもっていたけど、振り返ってしまえば良いこと尽くめだ。俺にとっては。
だからこそ、もうそろそろれみに聞いてみていいかもしれない。れみが来なくてもう大丈夫なんじゃないかって。けど、迷ってしまう。迷いの正体は明白。また俺は自分の感情を優先しようとしている。れみと会いたい、れみに来てほしい、れみと過ごしたい。最近では一人の女の子として意識しそうになるけど、それでも俺にとっては妹。今まで会えなかった分の時間を取り戻しているように、楽しんではしゃいでいる。
けど、それは俺の勝手な都合でしかない。れみは俺のだらしなさが許せないだけなんだ。昔の関係性から義理立てしている気配もある。だから、俺と一緒に過ごす時間より自分のことを優先してほしい。毎回聞こうとしてなにかとトラブルがあって言えずじまいだけど、もう夏休みも終わる。俺だけじゃなくてれみも学校が再開する。そうなるとお互い忙しくなって自然消滅、また会えなくなるのが当たり前に戻る。終わらせるときは刻一刻と近づいている。
けじめはつけなきゃいけない。けじめが一体どんな形なのか。それは決められていない。過去の謝罪なのか。感謝なのか。れみは納得してくれるか。許してくれるのか。手持ち無沙汰になって、れみに送る連絡の文面を作ったけど送信できない。けじめの形について迷っているからじゃない。れみを優先したいのに、俺の気持ちを優先したがっている心が躊躇わせているんだ。
ポン、と小気味いい携帯音と共に先輩からの連絡が。
〈夏休み明け、抜き打ち試験あるの聞いてる?〉
初耳な内容に、ついそっちに意識をとられる。
〈知らないです〉
〈そっかぁ~。さっき教授とミーティングしているときチラッと聞いたから、どうなのかな~って〉
〈教授って、もしかして・・・・・・・・・〉
〈うん、構造力学の〉
頭が痛くなる。ただでさえ複雑で難しい分野、そして更に複雑化した試験を出すことに定評がある教授が抜き打ちなんて。
〈試験範囲ってわかります?〉
〈後期で使う教科書の最初の数ページじゃないかな。教授が休憩時ペラペラ捲ってたし〉
だとしたら、こっちのスケジュールが大幅に変わる。先輩の手伝い、課題、バイト、試験勉強。一夜漬けでどうにかできるだろうか。
〈ありがとうございました。キツいけど助かります〉
先輩からのサムズアップの絵文字とほぼ間断なく、もじもじした顔文字が連続で届く。こんな面白い顔文字を使ったりするのが小田先輩だってイメージすると先輩と顔文字がどうしても結びついて微笑ましい。
〈どうかしました?〉
〈試験勉強するでしょ? きっと皆で〉
〈ええ。オフコースっす」
〈じゃあ大学でしない? 自習室なら何人でも泊まれるし、申請しなくても使えるし〉
ありがたいアドバイスに文面を打ち返そうとするけど、ピタッととめてしまう。流れが順調すぎる。それに申請しなくても、とか何人でも泊まれるってところが引っかかる。
〈早めに確保したほうがいいとお姉ちゃんおもうなぁ~〉
その後くるチラ、チラ、という顔文字が不安を煽る。それは俺が、俺たちが泊るのを期待しているように見える。
〈なにか企んでます?〉
ビクつき、驚き、最後に汗マークかの顔文字が届いて確信する。
〈実は、私の実験のデータが間違ってたの〉
やっぱり。
〈どこからですか?〉
〈夏休みに入る前にやった風洞実験と湿度の比較実験のやつ、あと計算式も最初から間違ってたから・・・・・・・・・〉
「なにやってんの!?」
つまり、研究内容全体の三分の一。まだ少ない内容だけど、それでも文面ではなく、声で突っ込んだことは褒めてほしい。哀願、泣き顔、土下座。連続してくる顔文字から先輩も切羽詰まっているのが伝わってくる。正直、悩む。だとすると時間はない。けど、先輩にはお世話になってるし。
〈わかりました。手伝いします〉
〈ありがとう、大好きっ〉
大好きに特別な意味はない。先輩は皆によく大好きと言っているのは一緒に過ごして周りと合わせて観察していればわかる。健なんかはおもっくそ勘違いしているけど。自他共に認めているけど、この人は姉気質だしほんわかしているし、うん。つまりこういうことを常日頃自然と言いまくってしまって許されるタイプなのだ。
〈このお礼は今度体で返すね〉
ハートマークとキス顔にも、苦笑いしか出ない。健と数人の同級生にも知らせて予定を決めていく。その最中、チャイムが鳴り響く。のぞき穴からはれみ、瞬間的に開けそうになって隣にいる意外な人物に目をとられる。
「やっほ~。パイセンお久しぶりっス」
「どうしたんだ?」
れみと一緒にやってきた友達、まりあちゃんは太陽に負けない笑顔とともに手土産だとアイスを差しだす。ひんやりとしているけど、外の熱気から中身の心配をしてすぐに冷蔵庫に。そのまま部屋に招き入れる。まりあちゃんは楽しそうだけど対照的にれみは浮かない表情。
「へぇ~。ここが男の人の一人暮らしっスか~」
物珍しいのか室内をキョロキョロと見渡している。夢中になっている合間にれみに耳打ちする。
「実はれみに勉強しようと誘われまして。けど兄さんのところに行くと答えたんですけど。その・・・・・・駄々をこねられまして」
「駄々?」
「ええ。友達よりも男を選ぶとか女同士の友情は脆いとか。あとズッ友だって約束してプリクラとったのに、とか。その流れで兄さんに勉強教えてもらったらいいんじゃないかと。断り切れなくて」
「そうか」
「断ったらネットの掲示板に私のコラ画像とか連絡先とか載せるって」
「女の嫉妬えげつなっっ!」
「それだけじゃなくって学校でも孤立させるとか学校に報告するとか」
「お前ら本当に友達!?」
「まぁ全部私が勝手に想像しただけですけど」
「嫌にリアリティある想像だなおい!」
「それで、どうでしょうか。兄さんがだめだと言ったら諦めるってまりあは」
「別にいいよ」
「え?」
れみは豆鉄砲喰らった鳩そのものの顔に。
「どうしてですか?」
「どうしてって、友達と過ごすのも大切だし」
「けど、兄さんに迷惑がかかるんじゃ」
「迷惑じゃないって」
「そうですか・・・・・・・」
なんだか落ち込んでいるけど、なんで?
「あ、パイセンエロ本とかないんスか?」
「ウチには一切そういうのはない。全部電子書籍としてパソコンに保存してある」
「ほほぉ~。ではパソコンはどちらに?」
「使わせねぇよ流石に!?」
ちぇ、と唇を突きだしてベッドに腰掛けるまりあちゃん。躊躇なくそっち座るのか・・・・・・。とにかく来訪の目的を知っているから勉強の準備を促す。鞄から荷物を取り出しているまりあちゃんを尻目に、れみをチラ見する。まだ落ち込んでいる。
「俺のとこ来たりするだけじゃなくて、友達とも一緒にいなきゃ。俺のことは後回しにしていいし」
「はぁ」
「まりあちゃんだって、この前れみが付き合い悪くなったってさみしがってたし。そういうの犠牲にしちゃあ、な?」
「そうですね」
「それに、こんなことくらいしか恩返しできないし」
「・・・・・・・・・恩返しって? なんですか?」
今度はガラッと変わる。暗い雰囲気と表情からいきなり怒っているって感情に染まっている。
「れみ、俺のところ来てくれてるだろ。いろいろ助けてくれて、ありがたいんだよ」
「・・・・・・・・・」
「今はもう自分でもちゃんとしようって掃除もするようになったし。れみのおかげだって。だからこんな形だけど恩返しできないかな~って」
「・・・・・・・・・私が兄さんを矯正しているのが恩だと?」
説明すればするほど怒りが強くなっていく。こっちがたじたじになるほどの迫力。今のれみを例えるなら背後からオーラが立ち上り、ゴゴゴゴゴゴって擬音をまとっている。
「つまり兄さんは私みたいな年下の女の子に矯正されて喜びをかんじる変態さんなんですね」
「言い方もそうだけど最後の変態さんって悪意しかないよな!?」
れみはぷいっと顔を背けながら机に向かう。なんだかれみは機嫌が悪い。原因は不明だけど、下手に刺激したら爆発する。距離をとってまりあちゃんの隣に腰掛ける。
「・・・・・・・・・どうしてそっちに座るんですか・・・・・・・・・・!」
けど、そんな気遣いも今のれみの火には油を注ぐ結果でしかないようだ。明らかに怒りの度合いが強くなってる。
「れみ、嫉妬っスか? ん? 嫉妬っスか?」
「違います。兄さんは女子高生とみると誰彼構わず発情するのでまりあを心配しているんです」
「え!?」
「ちょ、お前!」
「いやいや、冗談っスよね。それくらいわかるっスよ」
「今日制服じゃなくてよかったですね。まりあ」
「え!? どういうこと!?」
「不穏なワードを意味深に言うな!」
「私とこの前電話してたとき、そういえばまりあちゃんってもう来ないの? ってしきりに聞いてますし」
「ええ・・・・・・・パイセン、いえ上杉さん年下だったら誰でもいいんスか?」
「言い直さないで!」
「兄さん。いえ性欲の権化さんは私と会うとき必ず下着と制服を指定されます」
「不名誉な呼び方やめろ!」
「それと大学の小田先輩っているじゃないですか」
「まさかあの人も毒牙に!?」
「先輩を唐突に巻き込むな!」
「あの人と一緒にいると、この人眼光が鋭くなります。特に胸のあたりをチラ見しています」
「あ~。そういうのって周りと当人には丸わかりっスよね~。最低っス」
「あるある話と絡めて真実味持たせるなぁ! 頼むからもう勉強してくれぇ!」
さすがに疲れてしまった。とりあえず勉強に入るけど、二人にあらぬ疑惑を抱かせないように等分に距離をとる。その甲斐あってか二人は捗っている。れみはスラスラ解いていってるし。
「性欲の権化の上杉さん。ここ教えてもらえるっスか?」
「どれどれ・・・・・・ってナチュラルに呼ぶから答えちまったじゃないか」
「へへ」
「次からちゃんと呼ぶように。それでどこだっけ?」
まりあちゃんが教科書と一緒に近くに。別の紙を用いて解き方を教える。「ふんふん」「ほお~」「成程っス」と感心しながらうんうんと頷くけど、少し近いからか髪の毛の匂いがふわりと漂って鼻腔を刺激する。れみとは違う柑橘系だけど、香水か。それともシャンプーだろうか。判別できない。
ぺキ。
腕が不意に痛くなって反射的にびくつく。どうやらシャー芯が折れてしまったようだ。
「じゃあ次これわかります?」
「ああ、これは――」
ペキ。
シャー芯がまた飛んできて当たった。今度は顔に。れみは筆圧が強いんだろうか。
「じゃあこっちは?」
「まずは自分で解く努力しない?」
ペキ。ペキ。ペキ。
「ええ~。だってれみと違って私頭よくないっスから~」
「最初から諦めて投げだしてたら成長しないよ。努力の姿勢はみせないと」
ペキペキペキペキペキペキペキペキ。
「シャー芯大事にしない!?」
もうシャー芯の嵐かってくらい飛んでくる。わざとかって一瞬疑ったけど、れみがこんな嫌がらせする理由も必要もない。
「麦茶持ってきます。ロリ・ペド・ウェストハイマー・田中さん」
「急に懐かしいやつ持ち出すなおい! しかもパワーアップしてるし!」
「いやぁ、愛されてるっスねぇ」
台所のほうへパタパタと行ってしまうれみを目で追いかけながら、ニヤニヤとこちらを窺っている。この反応、なんでれみの反応がおかしいか知っている?
「愛されてたらあんな態度とらないだろ?」
「いやいやいや。きっと嫉妬してるんスよ。私が先輩に教えてもらってるの間近で。あんなれみ初めてだし。それってパイセンのこと愛してるからじゃないっスか?」
残念だけど、的外れな見解に苦笑い。それはありえない。本来恋人同士だったら通用するだろう。けど、俺たちが恋人だっていうのは嘘。れみが俺との関係を隠したいから咄嗟についてしまった。昔義理の兄妹だったっていう関係でしかない。よくよく考えれば最初から俺たちの関係を隠したいって事は、それだけ嫌なことだったからという証。最近ではそう自覚せざるをえない。
けど、もし仮にれみが嫉妬しているんだとしたら。俺を愛しているんだとしたら。やっぱりありえない。元義理の兄妹を、昔ひどい別れ方をした相手を異性として愛するはずがない。誰だってそうする。俺だってそうする。
れみはしっかりした考えで、異性との距離感についてバグっていたから俺とまりあちゃんのやりとりが不純とか破廉恥とか、そんな風に受取ったのかもしれない。うん、そのほうが自然だ。
「れみって学校だとどんな風なんだ?」
「皆から信頼されてるっスよ。勉強も運動もできるし。欠点もないし誰に対しても優しく接するし。先輩後輩問わずいつも人気者っス」
「へぇ。それはすごいな」
「先生が授業中間違えたこととか指摘するし。誰かが問題おこしたり喧嘩したら相手がどんな人でも止めに入ったり助けたり。まぁスーパーマンってかんじっス」
「スーパーウーマンじゃない? そこは」
「あと家族とも仲がよくて、お母さんともよく出掛けてるっス。料理教えてもらったとか」
「・・・・・・・・・へぇ」
「私もよく家に遊びに行くけど、優しいお母さんっスよ。よく悩み相談したり」
「・・・・・・そうか」
大丈夫だろうか。隠せているだろうか。あの人の話題になると、どうしても過剰に反応せざるを得ない。額のあたりに力が加わるのは血管が浮き出る前兆だろうか。頬が硬いのは愛想笑いを心が拒んでいる証拠か。けど、れみとあの人が仲良く過ごせていればいい。そう言い聞かせればほぐれていく。
「あ、そうだ。ストラップ」
「ん?」
「あれ、れみが携帯に付けてるやつ。あれパイセンがプレゼントしたんスよね?」
一気にあの人に対する感情の一切が抜けていく。予想していなかった話題に、頭がついていかず、カッカしていた熱がスーッ、と冷めていく。
「それどうしたのかって聞いたことあるんス。そうしたら大切な人にもらった、プレゼントされたって照れながら教えてくれたんで。パイセンかな~って。女子高生が付けるようなタイプのものじゃないし。れみもそういうの全然付けないし」
もしかして、こないだガシャガシャで勘違いしてあげたやつ? キモいとか好みじゃないって言ってたやつ? なんだかんだで大切にしてくれてるのか。けど、大切な人からもらったっていろいろな捉え方ができるぞ。まぁ、恋人だと説明しているまりあちゃんには、俺からもらった物を説明するには的確か。
「男女交際とかまったく興味なさそうだったのに。だから驚いたんスよ。恋する乙女ってかんじだったんで。だからパイセンと付き合ってるところみて、本当に驚いたっス。感情的になってて。普段の学校じゃない姿と表情なんで」
それは、うん。たしかにれみは俺と一緒にいるとおかしくなってる。幻聴みたいなこと聞こえてるみたいだし。俺が女の人と近いとヤバいし。あれかな。俺への矯正が負担になってるのかな。それとも男女の間柄についてお固い価値観持ってるから、テンパっちゃうのかな。
「あれ? でもそのときってパイセンとれみ・・・・・・ん? あれ?」
「なにお喋りしているんですか。変態発情犬さん」
「もう俺人間でもなくなってる」
「早く勉強教えてください。それとも女子高生とお話していたいんですか?」
気を取り直して、また戻っていく。さっきよりも余裕を持って二人に接せられる。自分のしなきゃいけないこととあの人、母に対する感情は変わっていないって再認識できたから。
空になった洗剤の容器の中身を見て残量から買い足さないといけないからメモ帳に記しておく。見違えた部屋にいると、気分が明るくなってくる。れみに目敏く矯正されてから大学に必要な教科書、書類、用紙類は置き場所を決めて取り出しやすいようにしているし、本とかパソコンとか食器とかも使い終わったら所定の場所に戻す癖がついている。矯正されているときはめんどうだったけど、今までどうしてできなかったかと今では不思議だ。
れみが一からやるんじゃなくて、俺自身にやらせているのが功を奏したんだろう。体を動かすことで習慣化させる。その甲斐あって最近では家に来ても改善点を言わなくなっている。まだ料理とかはれみには勝てないけど、人並みに自炊できるレベルだと自信がある。
布団も干しておかないと寝るとき違和感がするようになった。太陽の暖かさを充分に吸収していると錯覚する布団で寝ると気持ちがいい。逆にそうじゃないと落ち着かない。枕カバーも同様。
最初はどうなるかとおもっていたけど、振り返ってしまえば良いこと尽くめだ。俺にとっては。
だからこそ、もうそろそろれみに聞いてみていいかもしれない。れみが来なくてもう大丈夫なんじゃないかって。けど、迷ってしまう。迷いの正体は明白。また俺は自分の感情を優先しようとしている。れみと会いたい、れみに来てほしい、れみと過ごしたい。最近では一人の女の子として意識しそうになるけど、それでも俺にとっては妹。今まで会えなかった分の時間を取り戻しているように、楽しんではしゃいでいる。
けど、それは俺の勝手な都合でしかない。れみは俺のだらしなさが許せないだけなんだ。昔の関係性から義理立てしている気配もある。だから、俺と一緒に過ごす時間より自分のことを優先してほしい。毎回聞こうとしてなにかとトラブルがあって言えずじまいだけど、もう夏休みも終わる。俺だけじゃなくてれみも学校が再開する。そうなるとお互い忙しくなって自然消滅、また会えなくなるのが当たり前に戻る。終わらせるときは刻一刻と近づいている。
けじめはつけなきゃいけない。けじめが一体どんな形なのか。それは決められていない。過去の謝罪なのか。感謝なのか。れみは納得してくれるか。許してくれるのか。手持ち無沙汰になって、れみに送る連絡の文面を作ったけど送信できない。けじめの形について迷っているからじゃない。れみを優先したいのに、俺の気持ちを優先したがっている心が躊躇わせているんだ。
ポン、と小気味いい携帯音と共に先輩からの連絡が。
〈夏休み明け、抜き打ち試験あるの聞いてる?〉
初耳な内容に、ついそっちに意識をとられる。
〈知らないです〉
〈そっかぁ~。さっき教授とミーティングしているときチラッと聞いたから、どうなのかな~って〉
〈教授って、もしかして・・・・・・・・・〉
〈うん、構造力学の〉
頭が痛くなる。ただでさえ複雑で難しい分野、そして更に複雑化した試験を出すことに定評がある教授が抜き打ちなんて。
〈試験範囲ってわかります?〉
〈後期で使う教科書の最初の数ページじゃないかな。教授が休憩時ペラペラ捲ってたし〉
だとしたら、こっちのスケジュールが大幅に変わる。先輩の手伝い、課題、バイト、試験勉強。一夜漬けでどうにかできるだろうか。
〈ありがとうございました。キツいけど助かります〉
先輩からのサムズアップの絵文字とほぼ間断なく、もじもじした顔文字が連続で届く。こんな面白い顔文字を使ったりするのが小田先輩だってイメージすると先輩と顔文字がどうしても結びついて微笑ましい。
〈どうかしました?〉
〈試験勉強するでしょ? きっと皆で〉
〈ええ。オフコースっす」
〈じゃあ大学でしない? 自習室なら何人でも泊まれるし、申請しなくても使えるし〉
ありがたいアドバイスに文面を打ち返そうとするけど、ピタッととめてしまう。流れが順調すぎる。それに申請しなくても、とか何人でも泊まれるってところが引っかかる。
〈早めに確保したほうがいいとお姉ちゃんおもうなぁ~〉
その後くるチラ、チラ、という顔文字が不安を煽る。それは俺が、俺たちが泊るのを期待しているように見える。
〈なにか企んでます?〉
ビクつき、驚き、最後に汗マークかの顔文字が届いて確信する。
〈実は、私の実験のデータが間違ってたの〉
やっぱり。
〈どこからですか?〉
〈夏休みに入る前にやった風洞実験と湿度の比較実験のやつ、あと計算式も最初から間違ってたから・・・・・・・・・〉
「なにやってんの!?」
つまり、研究内容全体の三分の一。まだ少ない内容だけど、それでも文面ではなく、声で突っ込んだことは褒めてほしい。哀願、泣き顔、土下座。連続してくる顔文字から先輩も切羽詰まっているのが伝わってくる。正直、悩む。だとすると時間はない。けど、先輩にはお世話になってるし。
〈わかりました。手伝いします〉
〈ありがとう、大好きっ〉
大好きに特別な意味はない。先輩は皆によく大好きと言っているのは一緒に過ごして周りと合わせて観察していればわかる。健なんかはおもっくそ勘違いしているけど。自他共に認めているけど、この人は姉気質だしほんわかしているし、うん。つまりこういうことを常日頃自然と言いまくってしまって許されるタイプなのだ。
〈このお礼は今度体で返すね〉
ハートマークとキス顔にも、苦笑いしか出ない。健と数人の同級生にも知らせて予定を決めていく。その最中、チャイムが鳴り響く。のぞき穴からはれみ、瞬間的に開けそうになって隣にいる意外な人物に目をとられる。
「やっほ~。パイセンお久しぶりっス」
「どうしたんだ?」
れみと一緒にやってきた友達、まりあちゃんは太陽に負けない笑顔とともに手土産だとアイスを差しだす。ひんやりとしているけど、外の熱気から中身の心配をしてすぐに冷蔵庫に。そのまま部屋に招き入れる。まりあちゃんは楽しそうだけど対照的にれみは浮かない表情。
「へぇ~。ここが男の人の一人暮らしっスか~」
物珍しいのか室内をキョロキョロと見渡している。夢中になっている合間にれみに耳打ちする。
「実はれみに勉強しようと誘われまして。けど兄さんのところに行くと答えたんですけど。その・・・・・・駄々をこねられまして」
「駄々?」
「ええ。友達よりも男を選ぶとか女同士の友情は脆いとか。あとズッ友だって約束してプリクラとったのに、とか。その流れで兄さんに勉強教えてもらったらいいんじゃないかと。断り切れなくて」
「そうか」
「断ったらネットの掲示板に私のコラ画像とか連絡先とか載せるって」
「女の嫉妬えげつなっっ!」
「それだけじゃなくって学校でも孤立させるとか学校に報告するとか」
「お前ら本当に友達!?」
「まぁ全部私が勝手に想像しただけですけど」
「嫌にリアリティある想像だなおい!」
「それで、どうでしょうか。兄さんがだめだと言ったら諦めるってまりあは」
「別にいいよ」
「え?」
れみは豆鉄砲喰らった鳩そのものの顔に。
「どうしてですか?」
「どうしてって、友達と過ごすのも大切だし」
「けど、兄さんに迷惑がかかるんじゃ」
「迷惑じゃないって」
「そうですか・・・・・・・」
なんだか落ち込んでいるけど、なんで?
「あ、パイセンエロ本とかないんスか?」
「ウチには一切そういうのはない。全部電子書籍としてパソコンに保存してある」
「ほほぉ~。ではパソコンはどちらに?」
「使わせねぇよ流石に!?」
ちぇ、と唇を突きだしてベッドに腰掛けるまりあちゃん。躊躇なくそっち座るのか・・・・・・。とにかく来訪の目的を知っているから勉強の準備を促す。鞄から荷物を取り出しているまりあちゃんを尻目に、れみをチラ見する。まだ落ち込んでいる。
「俺のとこ来たりするだけじゃなくて、友達とも一緒にいなきゃ。俺のことは後回しにしていいし」
「はぁ」
「まりあちゃんだって、この前れみが付き合い悪くなったってさみしがってたし。そういうの犠牲にしちゃあ、な?」
「そうですね」
「それに、こんなことくらいしか恩返しできないし」
「・・・・・・・・・恩返しって? なんですか?」
今度はガラッと変わる。暗い雰囲気と表情からいきなり怒っているって感情に染まっている。
「れみ、俺のところ来てくれてるだろ。いろいろ助けてくれて、ありがたいんだよ」
「・・・・・・・・・」
「今はもう自分でもちゃんとしようって掃除もするようになったし。れみのおかげだって。だからこんな形だけど恩返しできないかな~って」
「・・・・・・・・・私が兄さんを矯正しているのが恩だと?」
説明すればするほど怒りが強くなっていく。こっちがたじたじになるほどの迫力。今のれみを例えるなら背後からオーラが立ち上り、ゴゴゴゴゴゴって擬音をまとっている。
「つまり兄さんは私みたいな年下の女の子に矯正されて喜びをかんじる変態さんなんですね」
「言い方もそうだけど最後の変態さんって悪意しかないよな!?」
れみはぷいっと顔を背けながら机に向かう。なんだかれみは機嫌が悪い。原因は不明だけど、下手に刺激したら爆発する。距離をとってまりあちゃんの隣に腰掛ける。
「・・・・・・・・・どうしてそっちに座るんですか・・・・・・・・・・!」
けど、そんな気遣いも今のれみの火には油を注ぐ結果でしかないようだ。明らかに怒りの度合いが強くなってる。
「れみ、嫉妬っスか? ん? 嫉妬っスか?」
「違います。兄さんは女子高生とみると誰彼構わず発情するのでまりあを心配しているんです」
「え!?」
「ちょ、お前!」
「いやいや、冗談っスよね。それくらいわかるっスよ」
「今日制服じゃなくてよかったですね。まりあ」
「え!? どういうこと!?」
「不穏なワードを意味深に言うな!」
「私とこの前電話してたとき、そういえばまりあちゃんってもう来ないの? ってしきりに聞いてますし」
「ええ・・・・・・・パイセン、いえ上杉さん年下だったら誰でもいいんスか?」
「言い直さないで!」
「兄さん。いえ性欲の権化さんは私と会うとき必ず下着と制服を指定されます」
「不名誉な呼び方やめろ!」
「それと大学の小田先輩っているじゃないですか」
「まさかあの人も毒牙に!?」
「先輩を唐突に巻き込むな!」
「あの人と一緒にいると、この人眼光が鋭くなります。特に胸のあたりをチラ見しています」
「あ~。そういうのって周りと当人には丸わかりっスよね~。最低っス」
「あるある話と絡めて真実味持たせるなぁ! 頼むからもう勉強してくれぇ!」
さすがに疲れてしまった。とりあえず勉強に入るけど、二人にあらぬ疑惑を抱かせないように等分に距離をとる。その甲斐あってか二人は捗っている。れみはスラスラ解いていってるし。
「性欲の権化の上杉さん。ここ教えてもらえるっスか?」
「どれどれ・・・・・・ってナチュラルに呼ぶから答えちまったじゃないか」
「へへ」
「次からちゃんと呼ぶように。それでどこだっけ?」
まりあちゃんが教科書と一緒に近くに。別の紙を用いて解き方を教える。「ふんふん」「ほお~」「成程っス」と感心しながらうんうんと頷くけど、少し近いからか髪の毛の匂いがふわりと漂って鼻腔を刺激する。れみとは違う柑橘系だけど、香水か。それともシャンプーだろうか。判別できない。
ぺキ。
腕が不意に痛くなって反射的にびくつく。どうやらシャー芯が折れてしまったようだ。
「じゃあ次これわかります?」
「ああ、これは――」
ペキ。
シャー芯がまた飛んできて当たった。今度は顔に。れみは筆圧が強いんだろうか。
「じゃあこっちは?」
「まずは自分で解く努力しない?」
ペキ。ペキ。ペキ。
「ええ~。だってれみと違って私頭よくないっスから~」
「最初から諦めて投げだしてたら成長しないよ。努力の姿勢はみせないと」
ペキペキペキペキペキペキペキペキ。
「シャー芯大事にしない!?」
もうシャー芯の嵐かってくらい飛んでくる。わざとかって一瞬疑ったけど、れみがこんな嫌がらせする理由も必要もない。
「麦茶持ってきます。ロリ・ペド・ウェストハイマー・田中さん」
「急に懐かしいやつ持ち出すなおい! しかもパワーアップしてるし!」
「いやぁ、愛されてるっスねぇ」
台所のほうへパタパタと行ってしまうれみを目で追いかけながら、ニヤニヤとこちらを窺っている。この反応、なんでれみの反応がおかしいか知っている?
「愛されてたらあんな態度とらないだろ?」
「いやいやいや。きっと嫉妬してるんスよ。私が先輩に教えてもらってるの間近で。あんなれみ初めてだし。それってパイセンのこと愛してるからじゃないっスか?」
残念だけど、的外れな見解に苦笑い。それはありえない。本来恋人同士だったら通用するだろう。けど、俺たちが恋人だっていうのは嘘。れみが俺との関係を隠したいから咄嗟についてしまった。昔義理の兄妹だったっていう関係でしかない。よくよく考えれば最初から俺たちの関係を隠したいって事は、それだけ嫌なことだったからという証。最近ではそう自覚せざるをえない。
けど、もし仮にれみが嫉妬しているんだとしたら。俺を愛しているんだとしたら。やっぱりありえない。元義理の兄妹を、昔ひどい別れ方をした相手を異性として愛するはずがない。誰だってそうする。俺だってそうする。
れみはしっかりした考えで、異性との距離感についてバグっていたから俺とまりあちゃんのやりとりが不純とか破廉恥とか、そんな風に受取ったのかもしれない。うん、そのほうが自然だ。
「れみって学校だとどんな風なんだ?」
「皆から信頼されてるっスよ。勉強も運動もできるし。欠点もないし誰に対しても優しく接するし。先輩後輩問わずいつも人気者っス」
「へぇ。それはすごいな」
「先生が授業中間違えたこととか指摘するし。誰かが問題おこしたり喧嘩したら相手がどんな人でも止めに入ったり助けたり。まぁスーパーマンってかんじっス」
「スーパーウーマンじゃない? そこは」
「あと家族とも仲がよくて、お母さんともよく出掛けてるっス。料理教えてもらったとか」
「・・・・・・・・・へぇ」
「私もよく家に遊びに行くけど、優しいお母さんっスよ。よく悩み相談したり」
「・・・・・・そうか」
大丈夫だろうか。隠せているだろうか。あの人の話題になると、どうしても過剰に反応せざるを得ない。額のあたりに力が加わるのは血管が浮き出る前兆だろうか。頬が硬いのは愛想笑いを心が拒んでいる証拠か。けど、れみとあの人が仲良く過ごせていればいい。そう言い聞かせればほぐれていく。
「あ、そうだ。ストラップ」
「ん?」
「あれ、れみが携帯に付けてるやつ。あれパイセンがプレゼントしたんスよね?」
一気にあの人に対する感情の一切が抜けていく。予想していなかった話題に、頭がついていかず、カッカしていた熱がスーッ、と冷めていく。
「それどうしたのかって聞いたことあるんス。そうしたら大切な人にもらった、プレゼントされたって照れながら教えてくれたんで。パイセンかな~って。女子高生が付けるようなタイプのものじゃないし。れみもそういうの全然付けないし」
もしかして、こないだガシャガシャで勘違いしてあげたやつ? キモいとか好みじゃないって言ってたやつ? なんだかんだで大切にしてくれてるのか。けど、大切な人からもらったっていろいろな捉え方ができるぞ。まぁ、恋人だと説明しているまりあちゃんには、俺からもらった物を説明するには的確か。
「男女交際とかまったく興味なさそうだったのに。だから驚いたんスよ。恋する乙女ってかんじだったんで。だからパイセンと付き合ってるところみて、本当に驚いたっス。感情的になってて。普段の学校じゃない姿と表情なんで」
それは、うん。たしかにれみは俺と一緒にいるとおかしくなってる。幻聴みたいなこと聞こえてるみたいだし。俺が女の人と近いとヤバいし。あれかな。俺への矯正が負担になってるのかな。それとも男女の間柄についてお固い価値観持ってるから、テンパっちゃうのかな。
「あれ? でもそのときってパイセンとれみ・・・・・・ん? あれ?」
「なにお喋りしているんですか。変態発情犬さん」
「もう俺人間でもなくなってる」
「早く勉強教えてください。それとも女子高生とお話していたいんですか?」
気を取り直して、また戻っていく。さっきよりも余裕を持って二人に接せられる。自分のしなきゃいけないこととあの人、母に対する感情は変わっていないって再認識できたから。
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