【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい

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29.裁き

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一週間後、チェルニエとレオナルド、リリスの裁判が皇宮のホールで始まった。
三人の最も重い罪は、違法な薬を使用したことだ。
それに、子どもの父親を偽りセルジオと結婚したことや、フィレンツェ侯爵家の財産をラギラス商会に横流ししたことも含めると、数え切れない。

しかし、十数年掛けて集めた証言や違法薬の帳簿、資金の流れなど、確固とした証拠があった為に、その場で断罪された。
違法薬については皇帝陛下も見逃せず、帝国の裁判としては最速で結審した珍しい事例となった。

チェルニエは、セルジオとの離縁、使い込んだフィレンツェ侯爵家の財産の返還、ミルゼへの心理的虐待に対する慰謝料。

レオナルドには、ラギラス商会の権利と私財の没収、リリスとレオポルトをセルジオの子としていた期間の養育費の返還と、セルジオへの慰謝料。

更に二人には、自他への違法薬の使用と、取り引きにより違法薬を一部の帝国貴族に蔓延させたいうことで、帝国最北端の鉱山での強制労働が課せられた。
チェルニエとレオナルドは、死ぬまで強制労働からは逃れられないだろう。

そして、リリスはチェルニエに唆されたとはいえ、違法薬をラディアスに使用した罪で、帝国で一番規律が厳しい修道院に送られることとなった。
修道院への収容は一年間で、その後は、まだ若いリリスへの救済策として、ザヴァロフ辺境伯との婚姻が皇命で決定した。

ザヴァロフ辺境伯との婚姻は、以前リリスがミルゼを再婚させようとしていたことをラディアスが胸糞悪い記憶として思い出し、ハディウスに伝えたのだ。

ザヴァロフ辺境伯からすると「女は若ければ若いほど良い。一年位待つ。」とのことだったので、ハディウスはサクッと皇命を取り付けた。
ラディアスの策略を聞いたハディウスは、我が子ながら執念深い奴だと思った。

チェルニエもレオナルドもリリスも、否定したり泣いたり、いろいろ口にしていたが、皇帝陛下の「黙れ!」のひと言で戦意喪失状態となり、結審後、皇宮の地下牢に移された。
その後は、鉱山や修道院に送られるだろう。

レオポルトは、違法薬の取り引きの有力な情報提供者として、お咎めなしだった。
フィレンツェ侯爵家の嫡男という立場は剥奪されるが、シグネスティ公爵家が後見人を探し、真っ当に生きることを約束させることでレオポルトは裁かれなかった。

セルジオは、やっと終わったと思うと共に、これでミルゼに心から父親として接することが出来ると安堵した。
寂しくつらい想いをさせたミルゼは、セルジオの過去を許してくれたが、これからは家族として生きていきたいと、セルジオは切に願った。

そして、精神的にも物理的にも、全面支援してくれたシグネスティ公爵家にも、返し切れない恩を感じた。
ハディウスやアザリア夫人の協力がなかったら、自分の人生は閉ざされたままだったと、セルジオは思った。

人に傷付けられ、人に助けられ。
繰り返す人生の中で、損得ではなく、誰かの為に手を差し伸べられる生き方をしていきたいとセルジオはしみじみ思うのだった。
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