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10-1.宿での夜
しおりを挟む西陽が射す頃、小さな村の宿に着いた。
馬車の荷物を下ろし、ヴィルヘルム様は宿主に部屋を準備させた。
よくよく見ると、馬車にはヴィルヘルム様と私、馬で護衛の騎士三人という、少ない人数での移動だった。
部屋は二つしか取れず、ヴィルヘルム様と私、騎士三人が同室となる。
選択肢は、もちろん無い。
騎士に運ぶ荷物を指示して、ヴィルヘルム様は、抱っこしたまま私を部屋まで連れて行った。
「サラーシュ、申し訳ないけど今夜は俺と二人部屋な。」
「はい…そろそろ降ろしていただいても?」
こんなに長時間抱っこされたのは初めてなので、立ったら足が産まれたての子鹿のようだったのは否めない。
ヴィルヘルム様は、また一頻り爽やかなお顔で笑った。
笑うとお腹が空くのは何故かしら。
催促するのは恥ずかしいけど、聞いてみた。
「あのぅ…」
「ん?やっぱり同じ部屋は嫌?」
「いぇ、お腹空きました。」
またヴィルヘルム様が笑う。
「サラーシュはやっぱり面白いな!今、気にするの、そこなのかよっ!飯食いに行くか。」
ヴィルヘルム様は、この村を何度も訪れているようで、村の食堂に連れて行ってくれた。
村の食事とはいえ、特に好き嫌いのない私は、ヴィルヘルム様おすすめの料理を堪能した。
「食べる姿も愛らしいな!」
ヴィルヘルム様の言葉に戸惑った時、お肉が喉に詰まりそうになったのは内緒。
食事が終わり、お風呂をお借りして部屋に行くと、ヴィルヘルム様はまだ戻っていなかった。
急にいろいろあったし、疲れたなー。
ベッドにうつ伏せになり、そのまま寝ていたようだ。
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