【完結】 初恋を終わらせたら、何故か攫われて溺愛されました

紬あおい

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9.馬車の中で

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「サラーシュ、顔が赤いけど熱があるのか?寒気はしない?」

「しっかり抱っこされて、顔が近いまま聞かれても…恥ずかしいです。」

「あぁ、照れてるのか。馬車が揺れるから、このままでいてね。」

この状況を全く把握出来ず。
ただヴィルヘルム様は、決して悪いお方ではないだろうという思い込みだけで今に至る。

「私を売り飛ばしたりしないですよね?」

ビクビクしながらも、一応聞いてみる。

目をまん丸くして、ヴィルヘルム様は真顔に戻る。

「そんなことしないよ。優しくするし、大事にする。」

何の告白でしょうか。
これって、三年振りにあった人から、何の前振りもなく言われる言葉なの?
顔だけでなく、全身の血が沸騰して真っ赤になりそうなんですけど。

「領地に着いたら、ちゃんと話すから。今夜は近くの村の宿に泊まろう。着いたら起こすから、しばらく寝なさい。」 

ヴィルヘルム様の大きな手が頭を撫でる。
あぁ、また、あのあったかい手だ。

「この手、好き…」

いつの間にか意識が遠くなった。
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