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30.結婚式の朝
しおりを挟むいよいよ結婚式当日となった。
セルフォート公爵家は、朝から箝口令が敷かれ、レナリアとジークフリードの支度は秘密裏に行われた。
公爵家の結婚式としては異例の事態だが、父のウィルヘルムと母のヘライザが厳選した使用人達は、忠実に役割を果たした。
「レナリア、ジーク、とっても素敵よ!」
「二人が俺とヘライザの衣装を着てくれるなんてな…感無量だよ…とても似合っている。」
ヘライザはキラキラした瞳でレナリアとジークフリードを見つめ、ウィルヘルムは涙目だ。
(お父様が泣くなんて…初めて見たかもしれないわ。このウェディングドレスを着て良かったし、ジークも賛成してくれて感謝だなぁ。)
レナリアはもらい泣きしそうになったが、ギリギリ耐えた。
そして、笑顔で告げる。
「お父様、お母様、そろそろ行くね。」
「結婚おめでとう。今日は我慢するが、クロムウェル公国での結婚式には必ず参列するからな。」
「レナリア、ジークフリード公子様、おめでとう。レナリアを幸せにしてあげてくださいね。」
涙目のウィルヘルムは既にぽろぽろ涙を流し、ヘライザも薄ら涙を浮かべている。
「お父様、お母様、我儘な娘なのに、快く結婚を認めてくださって、ありがとうございます。お二人の娘に生まれて、とても幸せです。」
「レナリアがあのまま家を出てしまったら、この姿も見られなかったな。ジークフリード、ありがとう。娘を頼んだぞ。」
「はい、義父上、義母上。教会で誓うよりも、まずお二人に誓います。レナリアは、俺の全てを賭けて幸せにします。レナリアの幸せが俺の幸せですから、二人で手を取り合って、生涯寄り添っていきます。」
「ジークフリード公子様、レナリアをお願いします。あなたも、もう私達の息子ね。この先何があっても、皆で相談して乗り越えればいいから、遠慮なく言ってね。」
ウィルヘルムとヘライザは、これまでも、これからも、ジークフリードはレナリアを唯一の妻とし、守ってくれると確信した。
「それでは、行って参ります。結婚式後は、俺の家にしばらく滞在しますが、陛下の誕生パーティで、またお会いしましょう。その時は、こちらから一緒に行くつもりです。」
「分かった。あまりレナリアを疲れさせないようにな?ジークフリード。」
「は、はい…」
「お父様??」
(レナリア、ダメだ、そこは突っ込むな!義父上は初夜からの話を…全く、レナリアの純真さには頭が痛い…初夜、迎えられるかな…いや、結婚式が先だ!頑張れ、俺!!)
ジークフリードは顔を赤くして、レナリアの手を引き、馬車に乗り込んだ。
外から中が見えない仕様の馬車は、ゆっくりと教会へ向かった。
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