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35.平和な二人
しおりを挟む夜、目が覚めた時、薄暗い部屋でレナリアは一人だった。
あまりの筋肉痛に、寝返りも打てずひぃひぃ言っていると、ジークフリードが夕食を運んで来た。
「レナリア、大丈夫か!?無理をさせてすまない…夕食作ってきた。」
「体中が痛い…」
レナリアは、頬を膨らめて怒っているが、ジークフリードには可愛いとしか思えない。
「お嬢様、起き上がれますか?手をお貸ししましょう。」
護衛騎士の時のジークフリードのように、レナリアを恭しく扱う。
やっと起き上がると、途端に空腹感が襲ってくる。
「ジークフリード、お腹が空きましたわ。食べさせてちょうだい。ふふ。」
「仰せのままに。」
ジークフリードもノリノリでレナリアに食べさせる。
「んんー、ジーク、美味しい!何これ!?」
「薄焼きパンにチキンのトマト煮とチーズを乗せて焼きました。お嬢様のお口に合って良かったです。くくっ。」
「もう護衛騎士はいいわよ。熱々のうちに、一緒に食べましょ!」
「ああ、火傷するなよ?前みたいに。」
「分かってますー!」
ジークフリードは、朝からの暴挙は誤魔化せたと、ほくそ笑んでいた。
レナリアは美味しい物に釣られるタイプなのかと。
それはそれで、愛らしい妻なのだ。
「はあー、お腹いっぱい!ジーク、ありがとう。」
「チキンのトマト煮はたくさん作ったから、明日も食べような。」
「うん、楽しみ!で、ジークフリード様?」
ジークフリードは身の危険を感じた。
レナリアが挑むような目で見ている。
「な、何だ?」
「今朝からのあれは何なの!?確かに私が誘いましたけど!手加減とか自重って言葉はご存知かしら?」
「ゆ、豊かな愛情表現とか…ぜ、絶倫な夫とか…つ、つ、妻が好き過ぎる夫とか…」
「……はぁ…あれはやり過ぎです!しばらく禁止にしますよ?」
「ダメだ、それは良くない!そんなの絶対にダメだ!!夫婦たるもの、愛情は常に伝え合わねば!」
必死に言い訳するジークフリードを、レナリアはこれ以上怒れない。
惚れた弱みなのだろう。
「少し手加減してくださいね?取り敢えず、今夜はダメです!筋肉痛で、生まれ立ての子鹿みたいになってるんだからー!!」
「はい…申し訳ない…」
「でも、口付けは…してもいいわ。」
ジークフリードは、照れたレナリアをそっと抱き締め、頬擦りした。
「俺の妻、ほんと可愛い!」
レナリアの顔中にちゅっちゅっと口付けしまくり、また怒られるジークフリードだが、結局はデレデレいちゃいちゃな平和な夜だった。
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