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36.陛下の誕生パーティ
レナリアとジークフリードは、二人の家で楽しく穏やかな日々を送っていたが、いよいよホルヘン皇帝の誕生パーティを数日後に迎えた。
誕生パーティを終えたら、すぐにクロムウェル公国に旅立つ為の準備も万端だ。
二人の家にしばしの別れを告げ、馬車に乗った。
そして前日、久々にセルフォート公爵家を訪れ、父のウィルヘルムと母のヘライザと再会した。
「元気だった?顔色もいいし幸せそうね。」
「もちろん元気で幸せよ。」
ヘライザは娘の顔を見て、ちゃんと幸せに暮らしているのだとほっとする。
「夕食は豪華にしたから、たくさん食べて、今夜はゆっくりしなさい。明日皆で出掛けよう。」
ウィルヘルムも元気そうな娘に安心し、ジークフリードと微笑み合った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
夜が明けて、それぞれがパーティの支度にてんてこ舞いだったが、無事に皇宮の大広間に到着した。
五大侯爵家を始め、高位貴族が一堂に揃って賑わっていた。
和やかな会場の雰囲気が緊張へと一変し、ホルヘン皇帝が現れた。
皆から見て、ホルヘン皇帝の左には第一皇子のエステファン殿下と第二皇子のルーセント殿下、右にはセラフィ皇后が立っている。
見目麗しい一族に、会場内は静まった。
一瞬、ルーセント殿下がレナリアとジークフリードを険しい目付きで見たが、ホルヘン皇帝の挨拶が始まると、ぷいっと目線を逸らした。
「今日は私の為にたくさんの貴族の皆に集まってもらって礼を言う。皇帝となり二十年、皆のおかげで国も安泰で、今年も無事に誕生日を祝えている。ありがとう。せっかくなので、今日は祝いの場というだけでなく、皆で親交を深めようではないか。どうか気楽に過ごしてくれ。」
フランクな挨拶に、会場は拍手でいっぱいとなる。
皆が注目している中、ホルヘン皇帝は更に口を開く。
「私の誕生日を祝うついでに、めでたいことがあったので、皆に報告する。この度、五年前から消息不明と言われていたクロムウェル公国の第二公子が、今日この会場に顔を出している。ジークフリード公子、前へ。」
突然の発言に、会場は騒めく。
そして、ジークフリードはホルヘン皇帝の前に跪くと、ルーセント殿下は驚きの表情を隠せない。
「ジークフリード公子、久しぶりに姿を見せたと思ったら、良い知らせがあるだろう?」
「帝国の偉大なる太陽、ホルヘン皇帝陛下にご挨拶申し上げます。また、本日はお誕生日と即位二十年という悦ばしい場に居られますこと、光栄に思います。私事で大変恐縮ですが、長らく放浪の旅のように姿を隠しておりましたが、この度結婚し、今日は妻とお祝いに参りました。妻を紹介させていただきます。我が妻レナリア、こちらへ。」
ジークフリードが立ち上がり、振り返ってレナリアに手を差し伸べる。
この展開を予想していなかったレナリアは、一瞬戸惑ったが、昔の淑女を思い出し、にっこり笑ってジークフリードの手を取る。
「おう、レナリア。そなたも久しぶりだな。ジークフリード公子と結婚し、これでセルフォート公爵家も安泰だな。おめでとう、レナリア。」
「陛下、お誕生日おめでとうございます。そして、ありがとうございます。ジークフリード様と共に、これからも帝国の一員として精進していく所存でございます。」
「ジークフリードの兄のキルリードも結婚するそうだな。帝国とクロムウェル公国との絆も、より一層強まると期待している。ジークフリード、レナリア、これからも頼んだよ。」
「「はい!」」
会場は割れんばかりの拍手に包まれたが、ルーセント殿下だけは顔面蒼白で佇んでいた。
その顔をジークフリードは冷たい眼差しで、しばらく睨み続けた。
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