「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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可愛い悪戯

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 食堂は大理石の床に落ち着いた色味の絨毯が敷かれ、長方形のテーブルには白いクロスと銀食器が整然と並んでいた。

 煌びやかさはないが、どことなくクラウディオの人柄を感じさせる慎ましさが感じられた。

 案内された席に腰を下ろすと、静かに料理が運ばれてきた。

 だが――その光景に、レオノールは思わず眉を上げた。

 テーブルに並べられたのは、黒パンと乾燥ハーブのスープ、それに硬そうなヤギのチーズと果物がひと切れ。

 育ちが云々より、これで成人男性の腹が膨れるとは到底思えないボリュームだ。

「クラウディオ様は……?」

 問いかけると、配膳の手を止めた侍女が、あからさまに視線を逸らした。

「本日は公務にて、すでにお出ましでございます」

 つまり、これはレオノール専用の朝食との意味か。

「クラウディオ様も同じものを? これじゃあお腹が膨れないのでは?」

 そう尋ねると、侍女の返答を遮るように、後方から涼やかな声が響いた。

「王太子殿下は、妃殿下とは異なり、食事量の加減を心得ておいでです」

 声に振り返ると、そこに立っていたのはシャヘルだった。

 ずっと控えていたんだろうけれど、食事に注意を惹かれ過ぎてすっかり存在を忘れていた。

 呼吸も元通りに落ち着いた笑みの奥に、鋭利な棘が隠されている。

「王都では近年、“中庸こそが美”との考えが定着してまいりまして。お妃様のように、やや恵まれたお身体の方には、控えめな食事が望ましいのです」

「それ、本当? 他の人は? 見たの? 殿下の食事を」

 念を入れて周囲を見回す。

 壁際に2人の侍女と、給仕の男性が1人。合計3人しかいないが、言質は取っておきたい。

 給仕はサッと目を逸らし、曖昧に濁した態度でそそくさと退室した。

 残りの侍女2人はシャヘルに同調して頷く。

 盆を抱えているほうの子は、ニヤニヤと笑いを浮かべて感じが悪い。

 隠す気もない確信犯だ。

「へー、健康のためってこと。でも尚更心配だわぁ。これじゃあオオトカゲ一匹倒せないでしょうに」

 嫌味や身なりに関することならほとんど気にならなかったが、食事にまで手を回されたと知ると、途端に腹立たしくなる。

 レオノールは手を合わせて感謝の祈りを捧げると、用意された全てを、たちまちに平らげた。

 どれもこれも一口サイズだ。

 が、口にしてみればスープもパンもチーズも、見事に調理されていて滋味深い味がした。

(コックの腕は文句ない。だからこそ、腹立たしいわね。嫌がらせするには惜しいくらいの味なのに)

「ご馳走様でした! 料理長に、美味しかったと伝えておいて」

 用意してもらった身で傲慢かもしれないが、これではちっとも腹が満たされない。

 やや乱暴に席を立つと、ピリッと一瞬だけ場の空気が凍る。
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