「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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可愛い悪戯

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 ふぅん、とレオノールは相槌を打ちつつワンピースを身につけた。

 本来は頭から被って腰紐を結うだけなのだが、このワンピースにはご丁寧に背中に編み上げ紐が縫い付けてある。

 仕立ててくれた説が有効だ。

「まあーっ、なんて太いウエストでしょう。くっ、紐が……全然締まりませんわ」
 
 ぎゅうぎゅうと紐を縛り上げながら、シャヘルは上品な悪態をつく。

(そりゃあそうでしょう。これでも勇者ですからね。貴女ごときの細腕じゃあどうにもならんでしょうよ)

 背後で奮闘中のシャヘルを他所に、腕組みをしつつ、レオノールは部屋の姿見を探す。

 すると少し離れた壁際に、備え付けられた姿見を見つけた。

「ぐぅ、ふっ!」

 そこに映っているのは、腰から背中にかけて取り付けられた編み上げ紐を必死に縛り上げようとしているシャヘルの姿だった。

 歯を食いしばり、顔を真っ赤にさせて息を荒くしている姿がばっちり映っている。

 堪らずレオノールは吹き出してしまった。

「お妃様ッ? どうなさいました」

 シャヘルはようやく紐を引ききったものの、すっかり息が上がっている。

 パッと上げた額には玉のような汗、鼻息は荒く、頬は真っ赤――まるで戦を終えた後の従兵のようだ。

「もしや、苦しゅうございますか? こ……これくらいで音を上げている場合ではないんですけれど、本日は初日ですから、ここまでにしておきましょう」

 はー、はー、と息を荒くしながら呼吸を整えるように、シャヘルは胸に手を当てている。

 しかし多大な労力と共に、大事を成し遂げた満足感で瞳は煌めいていた。

「そりゃどうも。助かるよ……」

 その滑稽さと幼さに、ついレオノールは口元を抑えて俯く。

 だが、シャヘルはそれを「ようやく羞恥を感じた」と勝手に解釈したらしく、鼻を高くして一礼した。

「それでは、朝食の用意が整っております。お妃様、こちらへどうぞ」

 まるで自分が一矢報いたかのような勝ち誇った態度で部屋を出ていくシャヘルの背に、レオノールは小さく笑った。

(うくくっ、この子、面白すぎる……!)

 そんなふうに思えたのは、シャヘルが想像以上に単純で、目に見えて感情が動くからだ。

 いびられている立場としては不本意かもしれないが、こうもわかりやすいと対処も気楽になる。

(まあ、クラウディオ様はそっけないだろうし。当分は彼女がいてくれれば退屈しないで済みそうね)

 そう思いながら、レオノールは背筋を伸ばして部屋を出た。

 朝食の間へ案内されたのは、棟の一階奥にある食堂だ。

 王太子夫妻のために設けられた、小ぶりな食事専用の広間だった。

 辿り着くまでにすれ違う侍従たちに目を剥かれ、挨拶を受けた後にコソコソと何事かを囁かれる。

 180cmはあろうかという大女が浅布を身体に巻きつけて歩いているのだ。

 とてつもなく不恰好な自覚はある。

 予想通りの反応だ。でも、あまり気分の良いものではない。
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