「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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可愛い悪戯

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「お部屋までご案内します……!」

 シャヘルが慌てて先導に立つ。

(クラウディオ様がいなきゃ、きっと昼も夜もこの調子よね。他はどうとでもなるけどご飯だけは……!)

 昨晩は食卓こそ別々だったが、隣室にクラウディオがいたためか、部屋に運ばれた食事は満足いくものだった。

 食事は健康の源だ。

 もし、午後までこの調子ではさすがに動けない。

 そう考えたレオノールは、ひとまず朝食を終えてすぐ、自室に籠っているふりをした。

 あのひどい身なりでは、そうそう城内をうろつけまい。

 そう思われているだろう油断を逆手に、棟の裏手からこっそりと外へ抜け出した。



 ***




 昼近く。

 主塔の執務室で書状に目を通していたクラウディオの元へ、警備兵が駆け込んできた。

「殿下、大変です!」

「騒がしい。何事だ」

 机に肘をついたまま、目だけで兵を射すくめると、男は息を整えつつ答えた。

「西壁寄りの林にて、煙が上がっております。最初は不審火かと見回りを出したのですが……」

「不審者を捕えたのか。では尋問官にーー」

 報告を耳に留めながら、引き続き書状に目を走らせる。

 ここ数年、王城へ侵入する不届者はいなかった。

 捕えたなら、投獄し、尋問する決まりになっている。

 クラウディオはそこで指示を終えたつもりだったが、警備兵は遠慮がちに食い下がる。

「いえ……その……、不審火ではなく、焚き火のようです」

? まとを得ない発言だ」

 午前中に片付けてしまいたい案件は他にもある。

 中断させられた苛立ちが、表情に現れていた。

「事実確認くらい、どうして」

「た、焚き火をしていたのは、妃殿下なのです。それも、野兎を狩って、召し上がるつもりのようで……」

 沈黙。

 クラウディオの手が、無言で書状を置いた。

「済まない。認識が足りないのは俺のほうだった」

 次の瞬間には椅子を引き、黒い外套を羽織って立ち上がっていた。

「現場に向かう。案内しろ」




 ***




 足早に西壁の裏手へ向かうと――自然のままになっている林の中に、一筋の煙が上がっている。

 木立の間を抜けていくと、小さな空き地の中心に、焚き火と……赤髪の女の姿がある。

 焚き火の上には複雑に組まれた木材を設置し、吊るされた獣肉が香ばしく焼かれている。

 ここが王城の敷地内でなければ、牧歌的な、一般の光景だったろう。

 それに、火の番をしている女が、王太子妃でなかったならば。

「いったい何をしているんだ、お前は!?」

 感情をむき出してはいけないと戒めたばかりなのに、クラウディオはもう叫んでいた。

 レオノールが視界に入っただけで、全身の毛が逆立つ。
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