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11. いっそただお金を浪費する『金喰い虫』だと、国王に直訴してみればどうですか?
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「なぜ父上がここに?」
「邪竜に結界を喰い破られたという国家の重大な危機だ。
私が訪れるのは、そんなにおかしなことか?」
あまり顔を合わせたことはありませんが、この方は皇帝。
いまだに状況を飲み込めていない第三皇子を憐れむように、そう返しました。
「ここは聖女様が結界を張られた土地だ。
邪竜に結界を破られるなんて、何があったのかと興味があってね」
「そのようなこと、父上が自らお調べにならずとも……」
「邪竜の侵入という、有り得ないと言われていたことが起きたのだ。
この目で確かめないと気が済まなくてね」
――それともお前たちは、手柄欲しさに駆け付けたのか?
皇帝は薄く微笑みます。
「それにしてもおかしな話だ。
聖女による結界は万全だと、そう報告を受けていたのだがな?」
皇帝は、岩に叩き付けられた宰相たちにも容赦なく質問をぶつけます。
今回の事態の原因を追究する視線は鋭く――
「お、おおかた聖女が儀式に失敗したのだろう!
結界の綻びを突かれて邪竜の侵入を許したから、大慌てで証拠隠滅に来た。
そうに違いない!」
対外的には魔法による結界だ、と誇らしげに発表していたではないですか。
宰相の息子が滅茶苦茶な理屈で、私に罪をなすりつけようとします。
おやおや? 先ほどまでは、私が邪竜を倒したというのも"大ウソ"と言っていたではありませんか。
「……とのことですが。
申し訳ありません、アルシャ様。見解をお聞かせ願えますか?」
皇帝は、聖女の力を決して軽視しません。
なぜ宰相なんかに、聖女の扱いを一任してしまったのでしょうか。
『すべて邪魔したあいつらが悪いよ!』
『アルシャの儀式は完璧だったの~』
「……儀式に失敗、というのは事実無根です。
そもそも最後まで儀式をさせて頂くことすら、許されませんでしたから。
この地での儀式の最中に、宰相から『茶会を優先しろ』と強制帰還の命令を受けました。
雇い主には逆らえず、やむなく最低限の処置だけを行いお城に戻りました」
「その後に、この土地で儀式をやり直さなかったのか?」
「その必要はないの一点張りで、そのような機会は与えられませんでした」
そのようなことが……、と皇帝は頭を抱えました。
「ま、まさかこのような平民の言うことを信じるというのですか。
正気にお戻りください、ただの責任逃れです!」
宰相が立ち上がり説得しようとしますが、皇帝はどこまでも冷たい顔で見返すのみ。
「どうしたのですか?
いつものように聖女の力なぞ詐欺だと。
いっそただお金を浪費する『金喰い虫』だと、皇帝陛下に直訴してみればどうですか?」
「な、何のことかね……?」
どんどん険しくなる皇帝の顔を見て、宰相親子はだらだらと汗をかきます。
聖女の力を誰よりも理解しているからこそ。
もっとも効率的に運用できるという信頼があって、聖女のこと宰相に一任されていたわけで。
権力のための道具としか見ず、いい加減な扱いをしていたというのは知られたくない事実でしょう。
「この国は妖精たちから、見放されようとしています。
まあ、魔法の研究の成果があるので何も問題はありませんね?
すべてあなたたちの振る舞いのおかげです。大手柄じゃないですか!」
常日頃から言われ続けた鬱憤を晴らすように。
宰相から受けた扱いを告発します。
「邪竜に結界を喰い破られたという国家の重大な危機だ。
私が訪れるのは、そんなにおかしなことか?」
あまり顔を合わせたことはありませんが、この方は皇帝。
いまだに状況を飲み込めていない第三皇子を憐れむように、そう返しました。
「ここは聖女様が結界を張られた土地だ。
邪竜に結界を破られるなんて、何があったのかと興味があってね」
「そのようなこと、父上が自らお調べにならずとも……」
「邪竜の侵入という、有り得ないと言われていたことが起きたのだ。
この目で確かめないと気が済まなくてね」
――それともお前たちは、手柄欲しさに駆け付けたのか?
皇帝は薄く微笑みます。
「それにしてもおかしな話だ。
聖女による結界は万全だと、そう報告を受けていたのだがな?」
皇帝は、岩に叩き付けられた宰相たちにも容赦なく質問をぶつけます。
今回の事態の原因を追究する視線は鋭く――
「お、おおかた聖女が儀式に失敗したのだろう!
結界の綻びを突かれて邪竜の侵入を許したから、大慌てで証拠隠滅に来た。
そうに違いない!」
対外的には魔法による結界だ、と誇らしげに発表していたではないですか。
宰相の息子が滅茶苦茶な理屈で、私に罪をなすりつけようとします。
おやおや? 先ほどまでは、私が邪竜を倒したというのも"大ウソ"と言っていたではありませんか。
「……とのことですが。
申し訳ありません、アルシャ様。見解をお聞かせ願えますか?」
皇帝は、聖女の力を決して軽視しません。
なぜ宰相なんかに、聖女の扱いを一任してしまったのでしょうか。
『すべて邪魔したあいつらが悪いよ!』
『アルシャの儀式は完璧だったの~』
「……儀式に失敗、というのは事実無根です。
そもそも最後まで儀式をさせて頂くことすら、許されませんでしたから。
この地での儀式の最中に、宰相から『茶会を優先しろ』と強制帰還の命令を受けました。
雇い主には逆らえず、やむなく最低限の処置だけを行いお城に戻りました」
「その後に、この土地で儀式をやり直さなかったのか?」
「その必要はないの一点張りで、そのような機会は与えられませんでした」
そのようなことが……、と皇帝は頭を抱えました。
「ま、まさかこのような平民の言うことを信じるというのですか。
正気にお戻りください、ただの責任逃れです!」
宰相が立ち上がり説得しようとしますが、皇帝はどこまでも冷たい顔で見返すのみ。
「どうしたのですか?
いつものように聖女の力なぞ詐欺だと。
いっそただお金を浪費する『金喰い虫』だと、皇帝陛下に直訴してみればどうですか?」
「な、何のことかね……?」
どんどん険しくなる皇帝の顔を見て、宰相親子はだらだらと汗をかきます。
聖女の力を誰よりも理解しているからこそ。
もっとも効率的に運用できるという信頼があって、聖女のこと宰相に一任されていたわけで。
権力のための道具としか見ず、いい加減な扱いをしていたというのは知られたくない事実でしょう。
「この国は妖精たちから、見放されようとしています。
まあ、魔法の研究の成果があるので何も問題はありませんね?
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宰相から受けた扱いを告発します。
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