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扉が閉まり、私は一人取り残される。
そうは言ってもここは自室。
普段の状態に戻った、というのが適切な表現だろう。
一人ぼっち。
箱庭の中の少女。
ーーいや、もう少女という歳でもないか。
物を知り、恋を知り、愛を知ろうとしている。
それまでに幾分、社会の闇に穢されたが。
あくまで、精神的な意味で。
2回、深呼吸をする。
息を深く吐き、そして吸う。
自分の中からどす暗い靄のようなものが出ていくのを感じる。
そのまま、てくてくとベットの方へと歩き、ばたりと倒れ込む。
疲労、心労。
罪悪感。
あのお方を裏切っているという行為。
それが常に私にべったりと絡みつき、付き纏う。
どす暗い何かが私に中で行き場を失い彷徨っている。
さっきの吐き出したのは、そのほんの一部。
ーーまあ、あのまま吐き続けたところで、私の汚れは消えることなんてないのだけれど。
あの男の言葉を思い出す。
悪魔との契約と大差ない。
誰かを犠牲にして、自身の幸せを勝ち得る。
御伽噺なら、間違いなくバッドエンド。
私は、悪い女だ。
狡い女だ。
それでいて、弱い女だ。
天蓋を眺めながら、自責する。
ーー分かっている、こんなにはただの自己満足に過ぎない。
優しく木のナイフを首筋に当てているに過ぎない。
いくら力を入れても、
押しても引いても致命傷にはならない。
血が出ることすらない。
そのナイフを、従者に渡したところで同じこと。
だからこそ、この秘密は私のお腹の中に秘めておくしかない。
苦しくても、辛くても。
それは私の罪で、
それは私の罰だ。
私一人で受け止めるしかない。
天蓋に向けて手を伸ばす。
私の手は短く、届かない。
虚しく空を掴むだけ。
何もしなければ、私一人の力では、きっと同じなのだろう。
何も掴めず、一人ぼっちで果てる。
歴史ある公爵家の一人。
ただの歴史の一つとして収納される。
それで、良いのだろうか。
それで、私は良いのだろうか。
一度限りの私の人生。
私だけの人生。
これが終われば、次はない。
少なくとも、今の私としての人生はない。
あのお方に出会うことも、言葉を交わすこともない。
この私だけが、それらの選択肢を与えられている。
考えても、考えても。
答えは出ない。
だけれど、自ら何もしないということは、
他者から与えられた答えを受け入れるということに違いはない。
たとえーー
口で、
言葉で。
どれだけそんなつもりはなかったと否定しようとも。
私は違うのですと弁明しても。
その選択肢は、多分私の本心の一つ。
どうしようもなく、私の一つなのだから。
そうは言ってもここは自室。
普段の状態に戻った、というのが適切な表現だろう。
一人ぼっち。
箱庭の中の少女。
ーーいや、もう少女という歳でもないか。
物を知り、恋を知り、愛を知ろうとしている。
それまでに幾分、社会の闇に穢されたが。
あくまで、精神的な意味で。
2回、深呼吸をする。
息を深く吐き、そして吸う。
自分の中からどす暗い靄のようなものが出ていくのを感じる。
そのまま、てくてくとベットの方へと歩き、ばたりと倒れ込む。
疲労、心労。
罪悪感。
あのお方を裏切っているという行為。
それが常に私にべったりと絡みつき、付き纏う。
どす暗い何かが私に中で行き場を失い彷徨っている。
さっきの吐き出したのは、そのほんの一部。
ーーまあ、あのまま吐き続けたところで、私の汚れは消えることなんてないのだけれど。
あの男の言葉を思い出す。
悪魔との契約と大差ない。
誰かを犠牲にして、自身の幸せを勝ち得る。
御伽噺なら、間違いなくバッドエンド。
私は、悪い女だ。
狡い女だ。
それでいて、弱い女だ。
天蓋を眺めながら、自責する。
ーー分かっている、こんなにはただの自己満足に過ぎない。
優しく木のナイフを首筋に当てているに過ぎない。
いくら力を入れても、
押しても引いても致命傷にはならない。
血が出ることすらない。
そのナイフを、従者に渡したところで同じこと。
だからこそ、この秘密は私のお腹の中に秘めておくしかない。
苦しくても、辛くても。
それは私の罪で、
それは私の罰だ。
私一人で受け止めるしかない。
天蓋に向けて手を伸ばす。
私の手は短く、届かない。
虚しく空を掴むだけ。
何もしなければ、私一人の力では、きっと同じなのだろう。
何も掴めず、一人ぼっちで果てる。
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それで、良いのだろうか。
それで、私は良いのだろうか。
一度限りの私の人生。
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これが終われば、次はない。
少なくとも、今の私としての人生はない。
あのお方に出会うことも、言葉を交わすこともない。
この私だけが、それらの選択肢を与えられている。
考えても、考えても。
答えは出ない。
だけれど、自ら何もしないということは、
他者から与えられた答えを受け入れるということに違いはない。
たとえーー
口で、
言葉で。
どれだけそんなつもりはなかったと否定しようとも。
私は違うのですと弁明しても。
その選択肢は、多分私の本心の一つ。
どうしようもなく、私の一つなのだから。
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