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11.手がかり オルフェside
しおりを挟むアステリアはガラムーンに降伏し、第一王子が王となった。
リーヴェ様の予言通り、ガラムーン皇帝の後宮に入ることになり、アステリアは鉱山と、王国の至宝を失うこととなった。
リーヴェ様は、俺と身体をつなげた次の日から、もう覚悟が決まっていたのだろう、
国を旅立つその最後まで、一度も俺に弱音を吐かず、凛としていた。
主人がそのようであるのに、従者である俺は情けなくあの夜をずっと引きずったまま。
どうすることもできず、俺たちは引き裂かれた。
リーヴェ様を思わなかった日はない。
仕えるべき主人を失った俺は、抜け殻のような日々を送っていた。
そんな中でも、ガラムーンの動向にはずっと気を配っていた。
リーヴェ様は後宮の中で最も地位が高いはずだ。
何か公式の場では必ず皇帝と外交に出るのが普通である。
しかし、1年間一度も表舞台に出なかった。
ガラムーンも復興中のため、そう表舞台に出るような機会も多くはなかったが、それゆえに気づくのに遅れてしまった。
公表では、療養中としか発表されず、違和感は抱いていたのだ。
初めは、現実を直視したくなかっただけなのかもしれない。
3年間戦時中に身を置いていた過労が出たのではと、自分を誤魔化していた。
しかし、それから1年経つと、違和感は確信に変わる。
これは何か裏がある。
俺は影を抜け、隣国へ潜入して調査を始めた。
アステリアは敗戦国。勝手に降伏したガラムーンを探ろうとしている俺の動向がバレたら、同僚に殺されるのは確実だった。
しかし、手段は選んでいられない。
敵だらけの地で調査をすること半年、ようやく信ぴょう性のある情報に辿り着いた。
俺はあるバーに、少し前からバーテンダーとして働いていた。
目当ての男は、ガラムーンで勢いのある宝石商で、鉱山がきっかけで莫大な富を得た。
今や国内で1、2を争うほどの財力を持ち、このバーによく入り浸っているとの噂を耳にした。
王族や貴族と厚意にしている彼なら何か掴めるかもしれない。そう思ったのだ。
「俺はさ、ついに認められたんだよ」
男と話すのは今日が初めてではない。
影仕込みの交渉術を使い、何度も接触をして信頼を勝ち取ったため、今や強い酒を何杯か飲ませるだけで簡単に色々と話してくれる。
「こりゃあ内緒だぜ、お前さんには特別だ」
「焦らさないで下さいよ旦那」
「ははは、わーったよ。ほらこれだ」
俺だけに見えるように、ジャケットの裾から見せられたのは招待状だった。
「それは一体?」
「おかみさんからだ。仮面舞踏会だとよ。貴族ってのは随分高尚な趣味をしてるこって」
仮面舞踏会。
皇帝に招待された者しか入れない会員制のパーティ。
要は仮面で素顔を隠してハメを外すための場だった。
「そりゃあすごい…。貴族、それも選ばれた一部しか呼ばれないような舞踏会になんて、旦那あなたはすごい方だ。
もしかして、俺の知らない功績をまだ隠しておられるのでは?」
「はっはっはっ、俺をおだてんのが上手いねあんた。それはねーけどよ、なんていってもただの舞踏会じゃねえんだぜ」
「……と言いますと?」
「『金の至宝』が出るらしい」
「……」
ぞくっと背筋が強ばる。
考えたくもない嫌な予感に叫び出してしまいそうだった。
だめだ、ここでボロを出しては、全てが水の泡になる。
耐えろ、耐えなければ――。
「あれ、あんた知らねえか?
この世の者とは思えねえほど別嬢らしいぜ。まあ俺ごときじゃせいぜい見るだけだろうがな。いいなぁ、一度は抱いてみたいもんだぜ。」
「……旦那、俺じゃ不満ですか?俺も結構、美人って言われるんですけどね」
眼鏡を外して男を誘惑する。
男の目の色が変わり、金を置くと俺の腰を抱いて店を出る。
あぁ、最悪な気分だ――。
全てを壊してしまいたくて仕方がないほどこの世が憎い。
ホテルに連れ込まれると、即座に男の息の根を止め、招待状を奪う。
仮面舞踏会で助かった。
この招待状があれば、見た目が違くてもバレやしない。
俺はこれから、商人に成り代わって、仮面舞踏会へ潜入する。
もとから後先など何も考えてない。
計画がうまくいかずにすぐ殺されるかもしれないし、リーヴェ様自身に拒まれるかもしれない。
だが、とにかく今すぐにでもガラムーン皇帝を殺してやらないと気が済まなかった。
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