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第4部 残酷すぎる天使のテーゼ
第6話 開幕、森実高校文化祭っ! ~1日目 オカマ喫茶へようこそ♪ 編~
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1学期期末テストも無事に終了し、終業式が終わった翌日の土曜日の早朝にて。
俺たち2年A組男子一同は、我らが双子姫の姉君が率いる2年A組女子一同の前に、黙って整列させられていた。
「まぁ、ざっとこんなモノでしょうかね?」
「お、おぉ……っ!?」
「これはっ!?」
「す、すごいや会長っ! あの残念を通り越して、もはや殺意すら抱きかねない2年A組の男共が、ここまで可愛くなるなんてっ!」
教室のあちこちで、女の子たちのキャーキャーッ! 喚く黄色い声が、五月雨のように肌を叩く。
が、残念なことに男子一同のテンションは、地を這うほどに低い。
その表情はみな、どこか死地に向かう戦士のように暗く、重い……。
「どうしたんですか、みなさん? そんな泣きそうな顔をして? 今日は待ちに待った森実祭なんですから、もっとテンションを上げていきましょうっ!」
おーっ! と猫を被った芽衣が、可愛らしく拳を天に掲げてみせる。
普段のバカどもであれば「かわEEEEEEEEッッ!!」と狂喜乱舞し、無意味に腰を振っているところだろうが……残念ながら、今日は誰も歓喜の声をあげなかった。
そう、今日は待ちに待った森実祭。
それはつまり、2年A組の女の子に制服エプロンを着て貰いながら、あわよくばコスプレもして貰い、このクソッたれな世の中を生きていくための活力を補充する日になるハズだった。
……ハズだったんだ。
なのに、それなのに……。
「どうして、こんなコトになったんや……?」
俺の横に居た元気が――いや、もはや元気と呼ぶのもおこがましい『ナニカ』が、泣きそうな声で、ココに居る男たちの心の声を代弁した。
ピッチピチ♪ のバニーガールの衣装を無理やり着こんだ、ガタイのいい親友の視線の先には、これから教室で行われる狂乱の宴を告知するべく、ドアの前に置かれるであろうデカい立て看板があった。
『コスプレ女装おにぎり喫茶【バーバリアン♪】』
「ほんと、どうしてこうなったんだろうね……?」
悲しみに暮れる俺の声が、ポロリと唇からまろびでる。
その魂の叫びに同調するように、元気の隣に居たアマゾンが、死んだ魚のような目で頷いた。
「本当なら今頃、コレは女の子たちが着てくれているハズだったのに……」
そう言って、婦警さんの格好をしたアマゾンが、ガックリと肩を落とした。
いや、アマゾンだけではない。
他の野郎共も、面白がった女の子たちの巧みの技術により、なんということでしょうっ!?
チアガールやら猫耳メイド服、チャイナドレスにマジカル☆チェンジ!
1人残らず即席コスプレイヤーに魔界転生♪
結果、教室内は魑魅魍魎が跋扈する、モンスター展覧会へと早変わりしていた。
「ヤベェよ、今年は弟が見に来るのに……」
「まだマシな方だ。オレなんか親が来るんだぞ? 今晩、家族会議確定だよ……」
「どうしよう? ちょっと気持ちよくなってきちゃった……」
新たな性癖の扉をノックしかけているクラスメイトを尻目に、俺は自分の格好を見下ろした。
そこには純白のナース服に身を包んだ、ガチムチの男が居り……うん。
一言で言って、死にたくなった。
「なぁ芽衣? 俺は1つ悟ったよ」
「どうしたんですか、士狼? そんな今にも死にそうな顔をして? ナニを悟ったんです?」
「マンガやアニメじゃさ? 主人公の男が女装すると、それはもう美少女と言っても差し支えないくらい、とびきり可愛くなるワケじゃん? でもさ? 逆説的に言えば、主人公以外のモブキャラが女装したところで、それはもう『バケモノ』以外の何者でもなくてね――」
「……相棒。もういい、やめるんや」
「あぁ、ソレ以上は悲しくなる」
元気とアマゾンが、揃って首を横に振る。
その姿が妙にツボに入ったのか、女の子たちが再びキャーキャー喚き出す。
「いやぁ~んっ! 2人ともキモ可愛い~♪」
「写真撮るからコッチ向いてぇ~っ!」
「ヤッバ! キモ過ぎて、逆に笑えてきたっ!」
「「「「「…………」」」」」
その日、俺は確かに野郎共の心がへし折れる音を聞いた。
「もう、そんな顔しないでくださいよ皆さん。大体その服、皆さんが用意したんじゃありませんか?」
芽衣がそう口にした瞬間、我が意を得たりと言わんばかりに、女の子たちが「そーだっ! そーだっ!」と声をあげ始める。
「どうせ、あたし達にソレを着せて、エロい妄想でもしようとしてたんだろ?」
「そんなの、お見通しだっての!」
「自分たちで用意したんだがら、ちゃんと責任を持って、自分たちで着なさいよね!」
「大丈夫。裏方はアタシらがやるから。あんたらは、その格好でホールを駆けずり回っていればいいわ!」
そう言って幾人かの女子生徒は高笑いと共に、おにぎりを準備するべく教室をあとにしていく。
芽衣ちゃん率いる残ったメイク担当の女子生徒たちは、今にも死にそうな顔を浮かべる俺たちボーイズに向かって、今日の予定を説明し始めた。
「それでは皆さん。時間もありませんし、手短に今日わたし達のやる『コスプレ女装おにぎり喫茶【バーバリアン♪】』のお仕事の流れを説明しますね?」
テキパキと本日の業務内容を口にする芽衣。
その内容を簡単に要約すると、まぁこうなる。
まず受付をしている女子生徒が、教室に入ろうとするお客さんに『おまかせ』か『指名』を選んでもらう。
『指名』を選ぶと、受付からカタログを手に入れることが出来る。
もちろんカタログに載っているのは、俺たち2年A組の野郎共の顔写真である。
いつの間に撮影したのか、パソコンで修正・加工しているおかげで、それはもう、どこに出しても恥ずかしくないイケメンへとメタモルフォーゼ♪
そして、そのイケメン☆パラダイスな花盛りな俺たちの中から、1人の野郎を選ぶと、ようやく席へと案内される。
席についてしばらく待てば、『指名』された野郎が【おひつ】とおにぎりの具を持って現れる。
野郎はお客さんを楽しませるべく、目の前でおにぎりを握りながら、軽快なトークで心もお財布も軽くさせ、たくさんおにぎりを注文させる。
「――というのが、今日の皆さんのお仕事の流れです。ちなみに『おまかせ』の場合、手の空いている男の子が来ます。『おまかせ』は『指名』よりも値段が安いので、おそらく最初の方は『おかませ』メインになると思います」
そう言って、ニッコリと微笑む芽衣。
……あぁ、分かっている。
みなの言いたいことは、分かっている。
このシステムはもう、完全に『アレ』である。
頭の最初が『キャ』で始まり『ブ』で終わる、8文字の風俗営業の……。
「おや? ナニか言いたそうな顔ですね、皆さん?」
「ねぇ芽衣ちゃん? 色々と言いたいことはあるんだけどさ? このカタログ……完全にパネルマジックだよね? というか『キャバクラ』だよね、コレ?」
「キャバクラではありません。コスプレ女装おにぎり喫茶です」
「いやキャバクラだよっ! 純然たるキャバクラ・システムだよ、コレ!?」
なんでコイツ、こんなにキャバクラに詳しいんだよ!?
というツッコミを何とか堪え、支店長に逆らうキャバ嬢の心持ちで、俺は芽衣に喰ってかかった。
「ちょっと芽衣ちゃ~んっ!? 分かってる!? 今回の森実祭は、クラス展示で1位になったら、豪華賞品が貰えるんだよっ!?」
「えぇっ、もちろん分かってますよ?」
「いいや、分かってないね! こんな悪ノリのお店、絶対に繁盛しないよ! 絶対1位取れないよ!?」
「いいえ。分かっていないのは、士狼の方です」
芽衣は「やれやれだぜ……」と某奇妙な冒険に出てくる第三部の主人公のように、肩を竦めてみせると、何故か勝ち誇った笑みを顔に張り付け、
「断言します。この『コスプレ女装おにぎり喫茶【バーバリアン♪】』は、確実に繁盛します。これは確定事項です」
そう言って、ニンマリッ! と笑みを深める芽衣。
そんな会長閣下を前に、俺たち野郎共は、心の中でこう思った。
絶対に繁盛しない、と。
俺たち2年A組男子一同は、我らが双子姫の姉君が率いる2年A組女子一同の前に、黙って整列させられていた。
「まぁ、ざっとこんなモノでしょうかね?」
「お、おぉ……っ!?」
「これはっ!?」
「す、すごいや会長っ! あの残念を通り越して、もはや殺意すら抱きかねない2年A組の男共が、ここまで可愛くなるなんてっ!」
教室のあちこちで、女の子たちのキャーキャーッ! 喚く黄色い声が、五月雨のように肌を叩く。
が、残念なことに男子一同のテンションは、地を這うほどに低い。
その表情はみな、どこか死地に向かう戦士のように暗く、重い……。
「どうしたんですか、みなさん? そんな泣きそうな顔をして? 今日は待ちに待った森実祭なんですから、もっとテンションを上げていきましょうっ!」
おーっ! と猫を被った芽衣が、可愛らしく拳を天に掲げてみせる。
普段のバカどもであれば「かわEEEEEEEEッッ!!」と狂喜乱舞し、無意味に腰を振っているところだろうが……残念ながら、今日は誰も歓喜の声をあげなかった。
そう、今日は待ちに待った森実祭。
それはつまり、2年A組の女の子に制服エプロンを着て貰いながら、あわよくばコスプレもして貰い、このクソッたれな世の中を生きていくための活力を補充する日になるハズだった。
……ハズだったんだ。
なのに、それなのに……。
「どうして、こんなコトになったんや……?」
俺の横に居た元気が――いや、もはや元気と呼ぶのもおこがましい『ナニカ』が、泣きそうな声で、ココに居る男たちの心の声を代弁した。
ピッチピチ♪ のバニーガールの衣装を無理やり着こんだ、ガタイのいい親友の視線の先には、これから教室で行われる狂乱の宴を告知するべく、ドアの前に置かれるであろうデカい立て看板があった。
『コスプレ女装おにぎり喫茶【バーバリアン♪】』
「ほんと、どうしてこうなったんだろうね……?」
悲しみに暮れる俺の声が、ポロリと唇からまろびでる。
その魂の叫びに同調するように、元気の隣に居たアマゾンが、死んだ魚のような目で頷いた。
「本当なら今頃、コレは女の子たちが着てくれているハズだったのに……」
そう言って、婦警さんの格好をしたアマゾンが、ガックリと肩を落とした。
いや、アマゾンだけではない。
他の野郎共も、面白がった女の子たちの巧みの技術により、なんということでしょうっ!?
チアガールやら猫耳メイド服、チャイナドレスにマジカル☆チェンジ!
1人残らず即席コスプレイヤーに魔界転生♪
結果、教室内は魑魅魍魎が跋扈する、モンスター展覧会へと早変わりしていた。
「ヤベェよ、今年は弟が見に来るのに……」
「まだマシな方だ。オレなんか親が来るんだぞ? 今晩、家族会議確定だよ……」
「どうしよう? ちょっと気持ちよくなってきちゃった……」
新たな性癖の扉をノックしかけているクラスメイトを尻目に、俺は自分の格好を見下ろした。
そこには純白のナース服に身を包んだ、ガチムチの男が居り……うん。
一言で言って、死にたくなった。
「なぁ芽衣? 俺は1つ悟ったよ」
「どうしたんですか、士狼? そんな今にも死にそうな顔をして? ナニを悟ったんです?」
「マンガやアニメじゃさ? 主人公の男が女装すると、それはもう美少女と言っても差し支えないくらい、とびきり可愛くなるワケじゃん? でもさ? 逆説的に言えば、主人公以外のモブキャラが女装したところで、それはもう『バケモノ』以外の何者でもなくてね――」
「……相棒。もういい、やめるんや」
「あぁ、ソレ以上は悲しくなる」
元気とアマゾンが、揃って首を横に振る。
その姿が妙にツボに入ったのか、女の子たちが再びキャーキャー喚き出す。
「いやぁ~んっ! 2人ともキモ可愛い~♪」
「写真撮るからコッチ向いてぇ~っ!」
「ヤッバ! キモ過ぎて、逆に笑えてきたっ!」
「「「「「…………」」」」」
その日、俺は確かに野郎共の心がへし折れる音を聞いた。
「もう、そんな顔しないでくださいよ皆さん。大体その服、皆さんが用意したんじゃありませんか?」
芽衣がそう口にした瞬間、我が意を得たりと言わんばかりに、女の子たちが「そーだっ! そーだっ!」と声をあげ始める。
「どうせ、あたし達にソレを着せて、エロい妄想でもしようとしてたんだろ?」
「そんなの、お見通しだっての!」
「自分たちで用意したんだがら、ちゃんと責任を持って、自分たちで着なさいよね!」
「大丈夫。裏方はアタシらがやるから。あんたらは、その格好でホールを駆けずり回っていればいいわ!」
そう言って幾人かの女子生徒は高笑いと共に、おにぎりを準備するべく教室をあとにしていく。
芽衣ちゃん率いる残ったメイク担当の女子生徒たちは、今にも死にそうな顔を浮かべる俺たちボーイズに向かって、今日の予定を説明し始めた。
「それでは皆さん。時間もありませんし、手短に今日わたし達のやる『コスプレ女装おにぎり喫茶【バーバリアン♪】』のお仕事の流れを説明しますね?」
テキパキと本日の業務内容を口にする芽衣。
その内容を簡単に要約すると、まぁこうなる。
まず受付をしている女子生徒が、教室に入ろうとするお客さんに『おまかせ』か『指名』を選んでもらう。
『指名』を選ぶと、受付からカタログを手に入れることが出来る。
もちろんカタログに載っているのは、俺たち2年A組の野郎共の顔写真である。
いつの間に撮影したのか、パソコンで修正・加工しているおかげで、それはもう、どこに出しても恥ずかしくないイケメンへとメタモルフォーゼ♪
そして、そのイケメン☆パラダイスな花盛りな俺たちの中から、1人の野郎を選ぶと、ようやく席へと案内される。
席についてしばらく待てば、『指名』された野郎が【おひつ】とおにぎりの具を持って現れる。
野郎はお客さんを楽しませるべく、目の前でおにぎりを握りながら、軽快なトークで心もお財布も軽くさせ、たくさんおにぎりを注文させる。
「――というのが、今日の皆さんのお仕事の流れです。ちなみに『おまかせ』の場合、手の空いている男の子が来ます。『おまかせ』は『指名』よりも値段が安いので、おそらく最初の方は『おかませ』メインになると思います」
そう言って、ニッコリと微笑む芽衣。
……あぁ、分かっている。
みなの言いたいことは、分かっている。
このシステムはもう、完全に『アレ』である。
頭の最初が『キャ』で始まり『ブ』で終わる、8文字の風俗営業の……。
「おや? ナニか言いたそうな顔ですね、皆さん?」
「ねぇ芽衣ちゃん? 色々と言いたいことはあるんだけどさ? このカタログ……完全にパネルマジックだよね? というか『キャバクラ』だよね、コレ?」
「キャバクラではありません。コスプレ女装おにぎり喫茶です」
「いやキャバクラだよっ! 純然たるキャバクラ・システムだよ、コレ!?」
なんでコイツ、こんなにキャバクラに詳しいんだよ!?
というツッコミを何とか堪え、支店長に逆らうキャバ嬢の心持ちで、俺は芽衣に喰ってかかった。
「ちょっと芽衣ちゃ~んっ!? 分かってる!? 今回の森実祭は、クラス展示で1位になったら、豪華賞品が貰えるんだよっ!?」
「えぇっ、もちろん分かってますよ?」
「いいや、分かってないね! こんな悪ノリのお店、絶対に繁盛しないよ! 絶対1位取れないよ!?」
「いいえ。分かっていないのは、士狼の方です」
芽衣は「やれやれだぜ……」と某奇妙な冒険に出てくる第三部の主人公のように、肩を竦めてみせると、何故か勝ち誇った笑みを顔に張り付け、
「断言します。この『コスプレ女装おにぎり喫茶【バーバリアン♪】』は、確実に繁盛します。これは確定事項です」
そう言って、ニンマリッ! と笑みを深める芽衣。
そんな会長閣下を前に、俺たち野郎共は、心の中でこう思った。
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