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第4部 残酷すぎる天使のテーゼ
第7話 好きな男の子には、イジワルをしたくなる『お年頃』なのですっ!
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――大繁盛である。
森実祭1日目、開始1時間が経過した校内にて。
我ら2年A組のクラス展示『コスプレ女装おにぎり喫茶【バーバリアン♪】』は、他クラスの追随を許さないレベルで、大繁盛していた。
「……マジかよ」
「ほらね。アタシの言った通りになったでしょう?」
猫を被るのやめた芽衣の、どやぁっ! と言わんばかりの自慢げな声が鼓膜を揺さぶる。
現在、俺は芽衣と一緒になって、教室の扉からひょっこり顔を出して廊下の受付を見ているのだが……もう、凄いぞ?
俺たち従業員の心境とは裏腹に、我がクラス展示は、とんでもない盛り上がりを見せていた。
開店1時間後だというのに、もう人足は途絶えることなく、外に行列が出来ている。
おかげで、さっきから『指名』が入りっぱなしの元気とアマゾンが、忙しなく【おひつ】とおにぎりの具を持って、教室を駆けずり回っており……控えめに言って、クラス展示は大成功である。
「すげぇな芽衣。なんでコレが繁盛するって、分かったんだよ? エスパーなの? エスパー芽衣さんなの?」
「各クラスの展示内容を確認した時から、思ってたのよ。みんな真面目に喫茶店し過ぎだなってね。だから、絶対にこういう『ゲテモノ枠』がバズるって、アタシには確信があったワケ」
にしし♪ とイタズラが成功した少年のように素朴に笑う、芽衣。
チクショウ、可愛いじゃねぇか……。
なんだが負けた気分になり、落ち着かないでいる俺の心に追い打ちをかけるかの如く、芽衣は他人にはめったに見せない無邪気な笑みを、俺に向けてきて。
「どうせミスコンはアタシが1位になるから、これで豪華賞品はアタシたちのモノよっ!」
「お、おぅ……そうだな」
「……なんで顔を赤くしてるの、士狼?」
「な、なんでもないっ!」
「???」
怪訝そうな瞳を向ける芽衣から逃げるように、ついっと視線を明後日の方向へ向ける。
が、何故かそんな俺の視線を「逃がさんっ!」と言わんばかりに、芽衣の顔が追いかけてきて……ちょっ、やめて!?
今、俺の顔を見ないでっ!
恥ずかしくて、死んじゃうっ!?
「かいちょーっ! そろそろ体育館でミスコンの予選審査するから、準備の方をお願いって、運営委員会の人が言ってるよぉ~っ?」
「はーいっ! 今いきまぁーすっ!」
教室内に振り返ると、ボーイのマネゴトをしていたウチの女子生徒の隣で、気が弱そうな男子生徒がモジモジと俺たちの方を見て、ダンゴ虫よろしくマゴマゴしていた。
芽衣は素早く『生徒会長モード』の笑顔を顔に張り付けながら、背後に桜の花びらを散らして、2人に応じる。
が、視線を切った瞬間、いつもの気怠げな表情で「チッ」と小さく舌打ちをこぼした。
「いい所だったのに……。もうそんな時間なのね」
「相変わらず、精神状態が気になる切り替えの速さだよなぁ……」
「うるさいわよ、駄犬? いい? アタシが居なくても、ちゃんと仕事すんのよ?」
「うるせぇ、うるせぇ。おまえは俺の母ちゃんか? というかミスコンの準備、早くねぇか? 確か、お昼からだったよな?」
「アタシは去年の優勝者だから、打ち合わせのためにも、他の出場者より1時間入りが早いのよ」
「こ、古羊芽衣さーん? 最終確認もあるので、早くしてくださ~い」
気弱そうな男子生徒が焦れたような声を出して、芽衣を急かしにかかる。
芽衣は「ごめんなさーい、すぐ行きまーす!」と甘い声を作りながら、男子生徒の方へ駆け出す――ことなく、何故か再確認するように、俺の方へと振り返った。
「あっ、そうだ士狼。明日は朝から予定を空けておきなさい」
「いいけど、なんで?」
「……察しの悪い鈍犬ねぇ。そんなの、一緒に周るからに決まっているでしょ?」
にひっ♪ と屈託なく笑う芽衣に、思わず心臓がドクンッ! と高鳴った。
だ、だからさぁ!?
そうやって油断しているところに強襲してくるのは、よくないと思うんだよなぁ、俺はさっ!
男心は繊細なんだぞ?
ちょっとのコトで、簡単に恋が走り出すんだからな!?
「あっ! 一応言っておくけど、勘違いするんじゃないわよ? これは士狼のデリカシーの無さを矯正するための特訓なんだからね?」
「特訓?」
芽衣は「そっ」と小さく頷きながら。
「士狼のデリカシーの無さは筋金入りでしょ? このままじゃ、将来ゼッタイに大変な目に合うのは分かりきっているから、ここらで1発、アタシが一肌脱いで、デリカシーについて学ばせてあげようと思ってね。どう? 嬉しいでしょ?」
ありがた迷惑なんだよなぁ……。
「だから洋子にはくれぐれも……く・れ・ぐ・れ・もっ! 明日のコトは喋るんじゃないわよ? 分かった? 分かったなら返事は!?」
「へ、へいっ! 了解いたしましたっ!」
「んっ、よろしい♪」
俺の返事に満足したのか、芽衣は上機嫌な足取りで、例の気弱そうな男子生徒のもとへ歩いていく。
そのまま一言二言、会話を交わすなり、2人して教室をあとにした。
俺は去って行く芽衣の後ろ姿を眺めながら、1人「はて?」と首を捻る。
なんで明日のコトは、よこたんにはナイショなんだろ?
別に隠すような事でもないような気がするんだけど……。
う~ん?
「ダメだ、さっぱり分からん」
「大神ぃ~っ! 『指名』が入ったから準備しろぉ~っ?」
「おっ? やっとか。ほいほ~いっ!」
思考の迷路に彷徨いかけた意識を一旦リセットし、俺はボーイ役の女子生徒の方まで歩いて行った。
なにはともあれ、森実祭1日目っ!
気合を入れて頑張るぞいっ!
森実祭1日目、開始1時間が経過した校内にて。
我ら2年A組のクラス展示『コスプレ女装おにぎり喫茶【バーバリアン♪】』は、他クラスの追随を許さないレベルで、大繁盛していた。
「……マジかよ」
「ほらね。アタシの言った通りになったでしょう?」
猫を被るのやめた芽衣の、どやぁっ! と言わんばかりの自慢げな声が鼓膜を揺さぶる。
現在、俺は芽衣と一緒になって、教室の扉からひょっこり顔を出して廊下の受付を見ているのだが……もう、凄いぞ?
俺たち従業員の心境とは裏腹に、我がクラス展示は、とんでもない盛り上がりを見せていた。
開店1時間後だというのに、もう人足は途絶えることなく、外に行列が出来ている。
おかげで、さっきから『指名』が入りっぱなしの元気とアマゾンが、忙しなく【おひつ】とおにぎりの具を持って、教室を駆けずり回っており……控えめに言って、クラス展示は大成功である。
「すげぇな芽衣。なんでコレが繁盛するって、分かったんだよ? エスパーなの? エスパー芽衣さんなの?」
「各クラスの展示内容を確認した時から、思ってたのよ。みんな真面目に喫茶店し過ぎだなってね。だから、絶対にこういう『ゲテモノ枠』がバズるって、アタシには確信があったワケ」
にしし♪ とイタズラが成功した少年のように素朴に笑う、芽衣。
チクショウ、可愛いじゃねぇか……。
なんだが負けた気分になり、落ち着かないでいる俺の心に追い打ちをかけるかの如く、芽衣は他人にはめったに見せない無邪気な笑みを、俺に向けてきて。
「どうせミスコンはアタシが1位になるから、これで豪華賞品はアタシたちのモノよっ!」
「お、おぅ……そうだな」
「……なんで顔を赤くしてるの、士狼?」
「な、なんでもないっ!」
「???」
怪訝そうな瞳を向ける芽衣から逃げるように、ついっと視線を明後日の方向へ向ける。
が、何故かそんな俺の視線を「逃がさんっ!」と言わんばかりに、芽衣の顔が追いかけてきて……ちょっ、やめて!?
今、俺の顔を見ないでっ!
恥ずかしくて、死んじゃうっ!?
「かいちょーっ! そろそろ体育館でミスコンの予選審査するから、準備の方をお願いって、運営委員会の人が言ってるよぉ~っ?」
「はーいっ! 今いきまぁーすっ!」
教室内に振り返ると、ボーイのマネゴトをしていたウチの女子生徒の隣で、気が弱そうな男子生徒がモジモジと俺たちの方を見て、ダンゴ虫よろしくマゴマゴしていた。
芽衣は素早く『生徒会長モード』の笑顔を顔に張り付けながら、背後に桜の花びらを散らして、2人に応じる。
が、視線を切った瞬間、いつもの気怠げな表情で「チッ」と小さく舌打ちをこぼした。
「いい所だったのに……。もうそんな時間なのね」
「相変わらず、精神状態が気になる切り替えの速さだよなぁ……」
「うるさいわよ、駄犬? いい? アタシが居なくても、ちゃんと仕事すんのよ?」
「うるせぇ、うるせぇ。おまえは俺の母ちゃんか? というかミスコンの準備、早くねぇか? 確か、お昼からだったよな?」
「アタシは去年の優勝者だから、打ち合わせのためにも、他の出場者より1時間入りが早いのよ」
「こ、古羊芽衣さーん? 最終確認もあるので、早くしてくださ~い」
気弱そうな男子生徒が焦れたような声を出して、芽衣を急かしにかかる。
芽衣は「ごめんなさーい、すぐ行きまーす!」と甘い声を作りながら、男子生徒の方へ駆け出す――ことなく、何故か再確認するように、俺の方へと振り返った。
「あっ、そうだ士狼。明日は朝から予定を空けておきなさい」
「いいけど、なんで?」
「……察しの悪い鈍犬ねぇ。そんなの、一緒に周るからに決まっているでしょ?」
にひっ♪ と屈託なく笑う芽衣に、思わず心臓がドクンッ! と高鳴った。
だ、だからさぁ!?
そうやって油断しているところに強襲してくるのは、よくないと思うんだよなぁ、俺はさっ!
男心は繊細なんだぞ?
ちょっとのコトで、簡単に恋が走り出すんだからな!?
「あっ! 一応言っておくけど、勘違いするんじゃないわよ? これは士狼のデリカシーの無さを矯正するための特訓なんだからね?」
「特訓?」
芽衣は「そっ」と小さく頷きながら。
「士狼のデリカシーの無さは筋金入りでしょ? このままじゃ、将来ゼッタイに大変な目に合うのは分かりきっているから、ここらで1発、アタシが一肌脱いで、デリカシーについて学ばせてあげようと思ってね。どう? 嬉しいでしょ?」
ありがた迷惑なんだよなぁ……。
「だから洋子にはくれぐれも……く・れ・ぐ・れ・もっ! 明日のコトは喋るんじゃないわよ? 分かった? 分かったなら返事は!?」
「へ、へいっ! 了解いたしましたっ!」
「んっ、よろしい♪」
俺の返事に満足したのか、芽衣は上機嫌な足取りで、例の気弱そうな男子生徒のもとへ歩いていく。
そのまま一言二言、会話を交わすなり、2人して教室をあとにした。
俺は去って行く芽衣の後ろ姿を眺めながら、1人「はて?」と首を捻る。
なんで明日のコトは、よこたんにはナイショなんだろ?
別に隠すような事でもないような気がするんだけど……。
う~ん?
「ダメだ、さっぱり分からん」
「大神ぃ~っ! 『指名』が入ったから準備しろぉ~っ?」
「おっ? やっとか。ほいほ~いっ!」
思考の迷路に彷徨いかけた意識を一旦リセットし、俺はボーイ役の女子生徒の方まで歩いて行った。
なにはともあれ、森実祭1日目っ!
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