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第4部 残酷すぎる天使のテーゼ
第5話 パンツだから恥ずかしくないもんっ!
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体育倉庫を整理し終え30分。
時刻はもうすぐ7時を回ろうかとする時間。
青と赤の境界線上と化した商店街へと続く坂道を、無言の男女がトボトボと歩いて行く。
もちろんわたくし大神士狼と、爆乳わん娘こと古羊洋子である。
よこたんは俺と目を合わせようともせず、俯いて、耳朶までほんわか♪ 桃色に染めあげたまま、トコトコと俺の横を歩いて行く。
途端に、肌を撫でるような優しげな風が吹き抜けていった。
ほんのり湿った風が、よこたんの柔らかな髪をふわふわとさらう。
それはまるで、今のよこたんの心と立場を表しているような、そんな気がした。
「あら? 2人とも今帰り?」
「……なんだ芽衣か」
「……メイちゃん、今日は遅くなるんじゃないの?」
「そのハズだったんだけどね、偶然はやく終わっちゃってね――って、どうしたのよ洋子? そんなリトルマーメイドみたいな目をして? らしくないわよ?」
死んだ魚のような目って言いたいのかな?
周りに俺たちしか居ないため、生徒会長の仮面を脱ぎ去って喋っていた芽衣の顔が、驚きの表情へと変わる。
そんな実姉の顔を、この世の終わりみたいな顔で眺めながら、よこたんは「ハハッ……」乾いた笑い声をポロリと溢す。
その声は、そのままコロコロと坂道を転がって行き、どこかへ消えていった。
「何でもないよ、メイちゃん……」
「いや、その顔で『何でもない』は無理があるでしょ?」
「ほんと何でもないの……。ただ今日、ボクが女の子を辞めただけだから……」
「この数時間で一体何があったのよ……?」
聞いてやるな、と芽衣を優しく諭していると、ふいにポケットに入れていたスマホが、激しく震えだした。
『ヘイ、ラッシャーイ! ラッシャーイ! 柔らかいヨ~ッ! とても柔らかいヨ~っ!』
「おっ、電話だ。誰だ、こんな時間に?」
「ちょっと待って? なによ、そのイカれた着信音は?」
「肉屋のダニエルだよね?」
「あぁ、肉屋のダニエルだ」
「誰っ!? 肉屋のダニエル誰っ!?」
数十分前の妹とまったく同じリアクションをする姉君を尻目に、ポケットからスマホを取り出す。
着信者は……なんか知らない番号だなコレ?
俺は小首を傾げながらも、通話ボタンをタップして。
「はい、もしもし。こちらハードボイルド大神のスマホです。どちら様ですか?」
『んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ❤❤❤』
「さようなら」
ピッ! と通話を切り、天を仰ぐ。
あぁ……出来ることなら、今すぐこの両耳を取り外して、聖水でジャバジャバ洗濯したい。
むしろ安易に電話に出てしまった、数秒前の自分をぶん殴りたい。
耳にこびりついた男のアヘ声に俺が苦しんでいると、芽衣が酷く驚いた声でスマホを凝視していた。
「な、なに? 今の猿の鳴き声みたいな男の声は? 士狼の知り合い?」
「断じて違う」
「で、でもししょー? さっきから、ダニエルさんの声が止まらないよ?」
俺の手の中でダニエルが『柔らかいヨ~ッ!』と狂ったように叫び続ける。
もうこの時点で嫌な予感しかしない。
「はやく出てあげなさいよ?」と芽衣がせっつくので、俺は仕方なく再び通話ボタンをタップ。
すると今度は荒い呼吸を繰り返す、くぐもった不快な男の声が鼓膜を揺さぶった。
『はぁはぁ……❤ ひ、酷いやないか喧嘩狼? なんですぐに切るぜよ?』
「酷いのはテメェの嬌声だ、テントマン。テメェのアヘ声が鼓膜にこびりついて離れねぇじゃねぇか、どうしてくれんだ?」
『はぁぁぁぁんっ❤❤❤ わ、ワシの声が、喧嘩狼の鼓膜を蹂躙してっ!? あっ、ヤバい……想像しただけで――イクッ!?』
『もういいですか、タカさん? そろそろ本題へ突入するので、スマホを返してください』
興奮した声音をあげるテントマンこと、九頭竜高校の頭である鷹野翼と入れ替わるように、芽衣とよこたん、ついでに我が親友を拉致したあのクソ野郎、大和田信愛の声音がスピーカから垂れ流される。
『お久しぶりですね、大神様』
「……なんで俺の番号知ってんだよ、おまえ?」
『はて、何ででしょうね?』
クスクスと、相変わらず人を小バカにしたような、癪に障る笑い方をする男だ。
俺は再び問答無用でスマホの通話を切ろうかとしたが、なにやら大和田が意味深なコトを口にし始めたので、黙って耳を傾けてみることにした。
『先日は鷹野共々、大変お世話になってしまって……。このお礼は近いうちに必ずさせてもらいますので、楽しみにしていてくださいね?』
「……また何か仕掛けてくる気かよ。しつこい男は嫌われるぞ?」
電話の向こう側で『シャーッ!』と口角を引き上げ、蛇のように笑う大和田の姿が簡単に想像出来て、思わず辟易してしまう。
どうやら、どうあがいても、俺たちは敵対する運命にあるらしい。
なんで俺は男といい女といい、ロクでもないヤツに好かれてしまうのだろうか?
神様はそんなに俺のコトが嫌いなの?
『それでは大神様、近々また会いましょう。では』
『待てノブッ! 最後にワシにも喋らせて――んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉ❤❤❤』
ブツン! と一方的に通話が切れる。
……なんかまた、メンドクセェ事になってきたなぁ。
小さくため息を溢していると、俺たちの会話が聞こえていたのだろう、芽衣が「また厄介事を持ちこんできて……」と、同じくため息をこぼしていた。
「失礼なっ!? 別に俺だって、好き好んでトラブルに巻き込まれているワケじゃないやい! ダークネスなんか起こしてないやい!」
「はいはい。……それにしても、九頭竜高校の鷹野くんに大和田くんね。士狼も面倒な相手に狙われたわねぇ~」
「ほんとな。みんな俺のこと好きすぎだろう? モテ期到来か?」
「まぁ全員、男なんだけどね」
ほんとソレな! と、芽衣に向かってため息をこぼす。
いやさ? なんで俺という男はさ、厳つい男にしかモテないんだろうね?
そんなに前世で悪いコトした、俺?
「まぁ先のことを今考えたってしょうがないし、さっさと帰りましょ。あっ、そうだ! 実はさっき、狛井先輩に美味しいラーメン屋が駅前に出来たって教えて貰ったんだけどね? 今からみんなで――」
行かない? と続くハズだった芽衣の言葉は、突如吹き荒れた一陣の風によって遮られた。
途端に、重く、垂れ下がったカーテンを取り払うような、ねっとりとした神風が吹く。
そして物語の幕が開くかのように、運命が産声をあげた。
うん、頑張って詩的に表現してみたけどアレだねっ!
詰まる所、よこたんのスカートが強風によってめくれ上がったよね!
おい、ナイス風! マジでよくやった!
ただ残念なことに、俺の位置取りからでは、ギリギリ中身が見えない。
おい、何やってんだ俺!?
はっ倒すぞ!?
代わりに芽衣の位置からは、バッチリくっきり! と、よこたんのよこたんが見えたらしく、その紅玉のような瞳を大きく見開いて、口をパクパクさせていた。
「よ、洋子!? あ、アンタっ!? パ、パパッ、パン、パンツ、パンツがッ!?」
「メイちゃん……。ボク、汚れちゃった……」
ツツー、と夕日に照らされながら、無表情で涙を流す、よこたん。
まるでどこかの映画のワンシーンのようだ。
そのそこはかとなく儚い神秘的な光景に目を奪われていると、急にグィッ! と何者かに襟首を締め上げられる。
おやおやぁ~?
なんで俺は今、襟首を握り締められているんだろう?
皆目見当もつかないなぁ?
……いや、もう自分を騙すのはよそう。
現実と向き合う時間が、やってきたんだ。
「おい犬? これはどういうことかしら?」
はい『犬』いただきました。
ちょっとした心臓の弱いおじいちゃん、おばあちゃんなら、一発で昇天しそうな素敵な笑顔を浮かべる会長殿
ほんと素敵な笑顔だなぁ……目、以外は。
「もう1度聞くわよ? これは一体どういうことかしら? キチンと説明してくれるんでしょうね? えぇっ?」
「うげぇっ!? え、襟首を握らないでっ! こ、これにはマリアナ海溝よりも深い事情があるんだよっ!」
「どういう事情があったら、洋子が男物のパンツなんか履くことになるのよ!」
俺の首を前後にガクガク揺らしながら、説明しろ! と迫ってくる我らが生徒会長さま。
そう、今のよこたんは俺の使用済みボクサーパンツを着用している状態なのだ。
必然的に今の俺はノットパンティで、なんともサービス精神溢れる素晴らしい状況なワケなのだが……まあこの話は横に置いておこう。
事ここに至った経緯は、出来れば説明したくない。
というか、よこたんの名誉のためにも、言うワケにはいかないので、俺は「へへへっ♪」と誤魔化すような笑みを浮かべて、芽衣に言った。
「だ、大丈夫! エロいことは一切していないから! 心配するようなことは、何もしてない! なんなら、よこたんの臀部に誓ってもいい!」
「どこに誓ってんのよ、このドスケベ!? そんなの信じらるワケがないでしょうが!」
「ですよね?」
うん、知ってた。
絶対に信じてもらえないなって、シロウ、知ってた☆
だって俺が芽衣の立場でも、全力で俺を疑う自信があるもん♪
ほんと、どうしてこうなったんだろうね?
芽衣のこめかみに青筋の稲妻が落ち、場の空気が一気に蒸発していく。
ふぇぇ……もうお家に帰りたいよぉ。
「こうなったら、ラーメンは中止よ。士狼には、事の詳細を洗いざらい吐いてもらうまで、絶対に逃がさないから。ほら、ウチに行くわよ、この駄犬っ! キリキリ歩きなさいっ!」
キャインッ!? と小さく吠えながら、大人しく、半泣きよこたんと一緒に、芽衣の後をついて行く。
どうやら今日は長い1日になりそうだ。
そんなことを思いながら、俺たちは商店街へと続く坂道を下って行った。
時刻はもうすぐ7時を回ろうかとする時間。
青と赤の境界線上と化した商店街へと続く坂道を、無言の男女がトボトボと歩いて行く。
もちろんわたくし大神士狼と、爆乳わん娘こと古羊洋子である。
よこたんは俺と目を合わせようともせず、俯いて、耳朶までほんわか♪ 桃色に染めあげたまま、トコトコと俺の横を歩いて行く。
途端に、肌を撫でるような優しげな風が吹き抜けていった。
ほんのり湿った風が、よこたんの柔らかな髪をふわふわとさらう。
それはまるで、今のよこたんの心と立場を表しているような、そんな気がした。
「あら? 2人とも今帰り?」
「……なんだ芽衣か」
「……メイちゃん、今日は遅くなるんじゃないの?」
「そのハズだったんだけどね、偶然はやく終わっちゃってね――って、どうしたのよ洋子? そんなリトルマーメイドみたいな目をして? らしくないわよ?」
死んだ魚のような目って言いたいのかな?
周りに俺たちしか居ないため、生徒会長の仮面を脱ぎ去って喋っていた芽衣の顔が、驚きの表情へと変わる。
そんな実姉の顔を、この世の終わりみたいな顔で眺めながら、よこたんは「ハハッ……」乾いた笑い声をポロリと溢す。
その声は、そのままコロコロと坂道を転がって行き、どこかへ消えていった。
「何でもないよ、メイちゃん……」
「いや、その顔で『何でもない』は無理があるでしょ?」
「ほんと何でもないの……。ただ今日、ボクが女の子を辞めただけだから……」
「この数時間で一体何があったのよ……?」
聞いてやるな、と芽衣を優しく諭していると、ふいにポケットに入れていたスマホが、激しく震えだした。
『ヘイ、ラッシャーイ! ラッシャーイ! 柔らかいヨ~ッ! とても柔らかいヨ~っ!』
「おっ、電話だ。誰だ、こんな時間に?」
「ちょっと待って? なによ、そのイカれた着信音は?」
「肉屋のダニエルだよね?」
「あぁ、肉屋のダニエルだ」
「誰っ!? 肉屋のダニエル誰っ!?」
数十分前の妹とまったく同じリアクションをする姉君を尻目に、ポケットからスマホを取り出す。
着信者は……なんか知らない番号だなコレ?
俺は小首を傾げながらも、通話ボタンをタップして。
「はい、もしもし。こちらハードボイルド大神のスマホです。どちら様ですか?」
『んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ❤❤❤』
「さようなら」
ピッ! と通話を切り、天を仰ぐ。
あぁ……出来ることなら、今すぐこの両耳を取り外して、聖水でジャバジャバ洗濯したい。
むしろ安易に電話に出てしまった、数秒前の自分をぶん殴りたい。
耳にこびりついた男のアヘ声に俺が苦しんでいると、芽衣が酷く驚いた声でスマホを凝視していた。
「な、なに? 今の猿の鳴き声みたいな男の声は? 士狼の知り合い?」
「断じて違う」
「で、でもししょー? さっきから、ダニエルさんの声が止まらないよ?」
俺の手の中でダニエルが『柔らかいヨ~ッ!』と狂ったように叫び続ける。
もうこの時点で嫌な予感しかしない。
「はやく出てあげなさいよ?」と芽衣がせっつくので、俺は仕方なく再び通話ボタンをタップ。
すると今度は荒い呼吸を繰り返す、くぐもった不快な男の声が鼓膜を揺さぶった。
『はぁはぁ……❤ ひ、酷いやないか喧嘩狼? なんですぐに切るぜよ?』
「酷いのはテメェの嬌声だ、テントマン。テメェのアヘ声が鼓膜にこびりついて離れねぇじゃねぇか、どうしてくれんだ?」
『はぁぁぁぁんっ❤❤❤ わ、ワシの声が、喧嘩狼の鼓膜を蹂躙してっ!? あっ、ヤバい……想像しただけで――イクッ!?』
『もういいですか、タカさん? そろそろ本題へ突入するので、スマホを返してください』
興奮した声音をあげるテントマンこと、九頭竜高校の頭である鷹野翼と入れ替わるように、芽衣とよこたん、ついでに我が親友を拉致したあのクソ野郎、大和田信愛の声音がスピーカから垂れ流される。
『お久しぶりですね、大神様』
「……なんで俺の番号知ってんだよ、おまえ?」
『はて、何ででしょうね?』
クスクスと、相変わらず人を小バカにしたような、癪に障る笑い方をする男だ。
俺は再び問答無用でスマホの通話を切ろうかとしたが、なにやら大和田が意味深なコトを口にし始めたので、黙って耳を傾けてみることにした。
『先日は鷹野共々、大変お世話になってしまって……。このお礼は近いうちに必ずさせてもらいますので、楽しみにしていてくださいね?』
「……また何か仕掛けてくる気かよ。しつこい男は嫌われるぞ?」
電話の向こう側で『シャーッ!』と口角を引き上げ、蛇のように笑う大和田の姿が簡単に想像出来て、思わず辟易してしまう。
どうやら、どうあがいても、俺たちは敵対する運命にあるらしい。
なんで俺は男といい女といい、ロクでもないヤツに好かれてしまうのだろうか?
神様はそんなに俺のコトが嫌いなの?
『それでは大神様、近々また会いましょう。では』
『待てノブッ! 最後にワシにも喋らせて――んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉ❤❤❤』
ブツン! と一方的に通話が切れる。
……なんかまた、メンドクセェ事になってきたなぁ。
小さくため息を溢していると、俺たちの会話が聞こえていたのだろう、芽衣が「また厄介事を持ちこんできて……」と、同じくため息をこぼしていた。
「失礼なっ!? 別に俺だって、好き好んでトラブルに巻き込まれているワケじゃないやい! ダークネスなんか起こしてないやい!」
「はいはい。……それにしても、九頭竜高校の鷹野くんに大和田くんね。士狼も面倒な相手に狙われたわねぇ~」
「ほんとな。みんな俺のこと好きすぎだろう? モテ期到来か?」
「まぁ全員、男なんだけどね」
ほんとソレな! と、芽衣に向かってため息をこぼす。
いやさ? なんで俺という男はさ、厳つい男にしかモテないんだろうね?
そんなに前世で悪いコトした、俺?
「まぁ先のことを今考えたってしょうがないし、さっさと帰りましょ。あっ、そうだ! 実はさっき、狛井先輩に美味しいラーメン屋が駅前に出来たって教えて貰ったんだけどね? 今からみんなで――」
行かない? と続くハズだった芽衣の言葉は、突如吹き荒れた一陣の風によって遮られた。
途端に、重く、垂れ下がったカーテンを取り払うような、ねっとりとした神風が吹く。
そして物語の幕が開くかのように、運命が産声をあげた。
うん、頑張って詩的に表現してみたけどアレだねっ!
詰まる所、よこたんのスカートが強風によってめくれ上がったよね!
おい、ナイス風! マジでよくやった!
ただ残念なことに、俺の位置取りからでは、ギリギリ中身が見えない。
おい、何やってんだ俺!?
はっ倒すぞ!?
代わりに芽衣の位置からは、バッチリくっきり! と、よこたんのよこたんが見えたらしく、その紅玉のような瞳を大きく見開いて、口をパクパクさせていた。
「よ、洋子!? あ、アンタっ!? パ、パパッ、パン、パンツ、パンツがッ!?」
「メイちゃん……。ボク、汚れちゃった……」
ツツー、と夕日に照らされながら、無表情で涙を流す、よこたん。
まるでどこかの映画のワンシーンのようだ。
そのそこはかとなく儚い神秘的な光景に目を奪われていると、急にグィッ! と何者かに襟首を締め上げられる。
おやおやぁ~?
なんで俺は今、襟首を握り締められているんだろう?
皆目見当もつかないなぁ?
……いや、もう自分を騙すのはよそう。
現実と向き合う時間が、やってきたんだ。
「おい犬? これはどういうことかしら?」
はい『犬』いただきました。
ちょっとした心臓の弱いおじいちゃん、おばあちゃんなら、一発で昇天しそうな素敵な笑顔を浮かべる会長殿
ほんと素敵な笑顔だなぁ……目、以外は。
「もう1度聞くわよ? これは一体どういうことかしら? キチンと説明してくれるんでしょうね? えぇっ?」
「うげぇっ!? え、襟首を握らないでっ! こ、これにはマリアナ海溝よりも深い事情があるんだよっ!」
「どういう事情があったら、洋子が男物のパンツなんか履くことになるのよ!」
俺の首を前後にガクガク揺らしながら、説明しろ! と迫ってくる我らが生徒会長さま。
そう、今のよこたんは俺の使用済みボクサーパンツを着用している状態なのだ。
必然的に今の俺はノットパンティで、なんともサービス精神溢れる素晴らしい状況なワケなのだが……まあこの話は横に置いておこう。
事ここに至った経緯は、出来れば説明したくない。
というか、よこたんの名誉のためにも、言うワケにはいかないので、俺は「へへへっ♪」と誤魔化すような笑みを浮かべて、芽衣に言った。
「だ、大丈夫! エロいことは一切していないから! 心配するようなことは、何もしてない! なんなら、よこたんの臀部に誓ってもいい!」
「どこに誓ってんのよ、このドスケベ!? そんなの信じらるワケがないでしょうが!」
「ですよね?」
うん、知ってた。
絶対に信じてもらえないなって、シロウ、知ってた☆
だって俺が芽衣の立場でも、全力で俺を疑う自信があるもん♪
ほんと、どうしてこうなったんだろうね?
芽衣のこめかみに青筋の稲妻が落ち、場の空気が一気に蒸発していく。
ふぇぇ……もうお家に帰りたいよぉ。
「こうなったら、ラーメンは中止よ。士狼には、事の詳細を洗いざらい吐いてもらうまで、絶対に逃がさないから。ほら、ウチに行くわよ、この駄犬っ! キリキリ歩きなさいっ!」
キャインッ!? と小さく吠えながら、大人しく、半泣きよこたんと一緒に、芽衣の後をついて行く。
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