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終わりのための旅
老夫婦との出会い
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建物の影にいたせいで、老夫婦の表情までは見えなかった。
けれど距離が縮まるにつれて、少しづつはっきりしてくる。
穏やかそうな顔。
柔らかい目元。
こちらを怖がらせないようにしているのが、表情からも伝わる。
その様子を見て、俺はさらに安堵する。
まともな人間に会えた気がした。
――ただ。
近づくにつれて、妙なものが目に入った。
老夫婦の背中に、細長いものが背負われている。
野球をやっていた人ならわかるかもしれない。
あれはバットを運ぶためのケースに似ている。
最初は「なんだろうな」と、軽い興味で眺めていた。
だが、距離が縮まるたびに、その形がはっきりしてくる。
、、、、違う。
布で巻かれてはいるが、隠しきれてない部分がある。
金属の縁。
はっきりと見える鍔。
あれは――刀だ。
それに気づいた瞬間に、背中を冷たいものが走った。
さっきまでの安心が、一気に裏返る。
穏やかな表情。
静かな足取り。
その背中に似合わぬ刀。
まるで気味の悪いホラー映画のようだった。
理由のわからない恐怖と、不安が胸いっぱいに広がっていく。
俺は無意識のうちに、背後の少女をさらに強く庇っていた。
よく考えてみればおかしいのだ。
やつらに支配された世界で、老夫婦二人が生き残っている。
それ自体がありえない。
胸の奥に言葉にならない恐怖が膨らむ。
俺は無意識に身構えていた。
その変化を老夫婦は一瞬で理解した。
男性の表情が、ふっと変わる。
さっきまでの穏やかな笑顔が消え、何かを察した目になる。
それだけで、この人たちが只者ではないことが伝わる。
そして、男性が口を開いた。
「そうですよね。はは、、、」
「こんな物騒なものを背負っていたら、警戒しますよね」
笑いながら。
軽い調子で、俺達の警戒を解くように。
その笑顔に悪意は感じなかった。
こちらを安心させて、騙そうとする感じでもない。
老夫婦は、そのまま歩みを止めない。
距離が近づく緊張とは裏腹に、二人の足取りは変わらず穏やかだ。
老人が、また口を開く。
「昔からね、抜刀術や剣術が趣味でしてね」
「ほら、こんな世界でしょ。なので、持ち歩いてるんですよ」
笑いながら言う口調は、まるで観光名所を案内してくれるガイドのようだった。
危機感も、誇示もない。
気づけば、老婆は俺の背後の少女のほうに回り込んでいた。
「こんにちは」
いつの間にか、二人は楽しそうに会話している。
少女の表情も和らいでいる。
そして、老婆は背中の刀に手を伸ばし、ためらいなく少女に手渡した。
少女は戸惑いながら受け取る。
その重さに驚いて、落としそうになっている。
「そうでしょ、重いでしょ」
老婆は笑いながら、少女の手元を軽く支える。
俺はその様子を見ていた。
予想もしていない展開に、言葉も動きもしばらく追いつかなかった。
けれど距離が縮まるにつれて、少しづつはっきりしてくる。
穏やかそうな顔。
柔らかい目元。
こちらを怖がらせないようにしているのが、表情からも伝わる。
その様子を見て、俺はさらに安堵する。
まともな人間に会えた気がした。
――ただ。
近づくにつれて、妙なものが目に入った。
老夫婦の背中に、細長いものが背負われている。
野球をやっていた人ならわかるかもしれない。
あれはバットを運ぶためのケースに似ている。
最初は「なんだろうな」と、軽い興味で眺めていた。
だが、距離が縮まるたびに、その形がはっきりしてくる。
、、、、違う。
布で巻かれてはいるが、隠しきれてない部分がある。
金属の縁。
はっきりと見える鍔。
あれは――刀だ。
それに気づいた瞬間に、背中を冷たいものが走った。
さっきまでの安心が、一気に裏返る。
穏やかな表情。
静かな足取り。
その背中に似合わぬ刀。
まるで気味の悪いホラー映画のようだった。
理由のわからない恐怖と、不安が胸いっぱいに広がっていく。
俺は無意識のうちに、背後の少女をさらに強く庇っていた。
よく考えてみればおかしいのだ。
やつらに支配された世界で、老夫婦二人が生き残っている。
それ自体がありえない。
胸の奥に言葉にならない恐怖が膨らむ。
俺は無意識に身構えていた。
その変化を老夫婦は一瞬で理解した。
男性の表情が、ふっと変わる。
さっきまでの穏やかな笑顔が消え、何かを察した目になる。
それだけで、この人たちが只者ではないことが伝わる。
そして、男性が口を開いた。
「そうですよね。はは、、、」
「こんな物騒なものを背負っていたら、警戒しますよね」
笑いながら。
軽い調子で、俺達の警戒を解くように。
その笑顔に悪意は感じなかった。
こちらを安心させて、騙そうとする感じでもない。
老夫婦は、そのまま歩みを止めない。
距離が近づく緊張とは裏腹に、二人の足取りは変わらず穏やかだ。
老人が、また口を開く。
「昔からね、抜刀術や剣術が趣味でしてね」
「ほら、こんな世界でしょ。なので、持ち歩いてるんですよ」
笑いながら言う口調は、まるで観光名所を案内してくれるガイドのようだった。
危機感も、誇示もない。
気づけば、老婆は俺の背後の少女のほうに回り込んでいた。
「こんにちは」
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少女の表情も和らいでいる。
そして、老婆は背中の刀に手を伸ばし、ためらいなく少女に手渡した。
少女は戸惑いながら受け取る。
その重さに驚いて、落としそうになっている。
「そうでしょ、重いでしょ」
老婆は笑いながら、少女の手元を軽く支える。
俺はその様子を見ていた。
予想もしていない展開に、言葉も動きもしばらく追いつかなかった。
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