AFTER DEAD「最後の帰路」

ハンドアイランド

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終わりのための旅

金の鯱が見守る街

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巨大な街に足を踏み入れた瞬間、空気が変わる。
道の幅。建物の高さ。
そして、遠くに見える屋根の上の金色の飾り。
あの飾りを見て、場所を間違えていないとわかる。
金の鯱。
誇り高く、街を見下ろすように残っている。

この規模の街はただ歩くだけで神経を使う。
やつらが完全に終わったと、断言はできない。
それでも俺達はこの街を経由することにした。

理由は二つ。
食料の確保。
それと車だ。

長い距離を歩き続けるのは、少女に限界がある。
俺一人なら問題はないが。

車があれば、かなり楽になる。
また大量の荷物も運べるだろう。

俺は周囲を警戒しながら、街の奥へと足を進める。
少女は少し緊張した様子で俺のあとに続く。

巨大な街は静まり返っている。
だが、その静けさが一番信用ならない。

俺達はその不気味さの中、探索を始めた。


予想以上に、食料の調達が上手くいった。
缶詰。水。乾物。
かなりの量だ。

ただ一点、引っかかる部分がある。
食料や資材が点々と「まとめて」置かれてある。
一箇所にあるわけではないが、無秩序に散らばっているわけでもない。

まるで誰かが、意図的に分散して管理してあるようだった。

胸の奥に嫌な感覚が広がる。

この街には誰かが、もしくは集団の人間がいる。
俺は周囲を見渡す。
今のところ、生きている人間に遭遇して良いことは一つもない。
あの自衛隊の男のような存在がいるのであれば、たまったもんじゃない。
思い出すだけで、体の痛みが強くなる。

それにしても、こんな大きな街を拠点にする人間がいることが不思議だ。
やつらが多いだろう大都市で。
安全とは思えない。

今はやつらよりも、俺の神経は生きている人間に向いている。
多分、生きている人間が一番危ない気がする。

俺は少女を見た。
俺よりも先に少女が俺の方を見ていた。
本当に感の良い子だと思った。


「おーい!!!!」

唐突な声が、静まり返った街に響く。

二人ともビクッと体を震わせる。
まるで、ここまでの流れが、誰かに見つかるために用意されていたようだ。

少女の方が俺よりも先に振り返る。
反射的な動きだった。

それに気づいた俺は、少女の手を掴み引き寄せるように自分の後ろへ隠す。
俺も声の正体を確認しようと振り返る。
逃げ場はもうない。

だがそこにいたのは、老夫婦だった。
多分、そう。
まだお互いの距離が遠いので、感覚だが。

二人ともこちらを刺激しないように、はっきりわかる足取りで近づいてくる。
まるで「安全ですよ」と、無言で伝えるような距離の詰め方だった。

そういえば、さっきの声も怒鳴るような響きではなかった。
今思えば、悪意の感じない呼びかけだった。
警戒が消えたわけではないが、少し胸の奥が緩んだ。

俺は少女を背後に庇ったまま、老夫婦の方を見つめていた。
だんだん近づいてくるその二人を。
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