AFTER DEAD「最後の帰路」

ハンドアイランド

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終わりのための旅

恐怖の余韻

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少女は待ってましたとばかりに、白米を口に運ぶ。
夢中でがっついている。
今まで見れなかった少女の子供っぽさが、愛おしく見えた。

いただきます。
そんな言葉いつぶりだろうか。
視界が少し滲んだ。
家族と食卓を囲めた過去を思い出す。
涙が出そうなのを、黙ってこらえながらゆっくりと箸を取った。

食事をしながら、他愛のない会話が続いた。
誰かと食卓を囲みながら言葉を交わすだけ、だけどその空間が懐かしかった。

しばらくして、老人が箸を止め、

「ちなみに、、、」

「私たちの家族を惨殺した犯人に、何か心当たりはあるかね?」

空気が一瞬だけ張り詰める。

「ないですね、、、」

「この街に着いたのも、つい先程ですし」

俺は答えた。

「そうですよね、、、」

老人は軽く頷いた。
その答えを最初から知っていたかのように。

全く心当たりがないわけではない。
少女を襲った、あの自衛隊の男だ。

だが違う。
あの男は確かに冷酷で、大人数を相手に負かすことができるだろう。
でも無差別に人を殺すようなタイプではない。

それに、

「生きている人間に発砲する気はない」

その言葉を思い出す。
もし仮に、その人達が噛まれていたなら話は別だが、そうではないだろう。

あの男は歪んではいるが、軸がある。
あの男なりの正義を持っているのであろう。

――あの男ではない。
そう思った。


少しの沈黙の後、

「この先は、どうするんだい?」

老人が問う。

俺はこの先の予定を話した。
家に帰るつもりだと。
もちろん少女の時と同様、家に帰ってどうするかは除いて。

老夫婦は顔を見合わせて、老婆がにこりと笑った。

「私たちも、ご一緒しても?」

断る理由はなかったし、ここまで良くしてくれている分、断れなかった。

「ええ、もちろん」

少女と老夫婦。
本来であれば、この旅にはお荷物であろう。
でも悪くない話だと思った。
自分の目的を果たすには、いずれ少女と一緒にはいられなくなる。
その時に、任せられる大人がいるのは好都合だ。

老婆が続ける。

「そちらの方角に私たちの息子が住んでるんですよ」

「多分もう、生きてはいないでしょうが、、、」

間を置く。

「最後に、供養だけでもできればと思いまして」

なるほど。
ここからでも長旅なのに、それでも同行したい理由がわかった。
その理由に違和感はないし、むしろ納得できる。

「そうだったんですね」

俺は短く返した。
それ以上は何を言っても軽くなりそうだから。

少し重たくなった空気を感じたのか、少女の箸の動きが鈍くなる。

やつらが動かなくても、この世界には悲しさが残っている。
恐怖や不安がなくなったからこそ、余裕が生まれ、思い出さなければいけないことが多くある。
多分この先、俺も多くを思い出すだろう。

俺は思った。
やはり、最後は家で命を絶とう。
悲しみを思い出し、過去にすがるのは耐えられない。
もう会いたい人には会えない。

やつらは全てを奪った。
動かなくなったと思ったら、別の角度から攻撃してくる。
言葉にできない感情が湧き上がってきた。
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