AFTER DEAD「最後の帰路」

ハンドアイランド

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大柄なヒーロー

この世界の創造主

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「川路、落ち着いて聞いてくれ」

その表情は、いつもの無表情ではない。
川路に向けた、親友の顔だった。

「、、何が、どうなっているんだ、、?」

川路は問い返す。

紅林は一歩近づき、腰の抜けた川路に手を伸ばした。

「俺と一緒に“多数派”になろう」

川路は、意味も分からないまま固まった。
伸ばされた手を、恐怖の目で見つめることしか出来ない。

「この世界で、俺たちが多数派になるんだ」

紅林は淡々と続ける。

「そうすれば、もう劣等感を抱かなくてもいい」

紅林の目は、まっすぐ川路を捉えている。

「なあ、川路。
  俺たちがどれだけ我慢してきたか、覚えているだろう?」

「、、、多数派?」

川路は、震える声で聞き返した。

「何の話だ?
  お前、何を言っているんだ、、、?」

紅林は返答しない。

その背後で不気味な男が、微笑む。

「俺たちは、ずっといじめられてきた。
  それは、今も変わらない」

「俺たちが警察官として、誰かの役に立とうとしてもだ。
  周りの扱いは、何一つ変わらない」

紅林は一度、視線を落とし続ける。

「雄太の父親のことは、知っているか?」

川路は何のことだ?と眉をひそめる。

「そいつは、俺たちの中学の同級生だ」

川路の表情がわずかに揺れる。

「俺が一人で飯を食っていた時だ。
  たまたま、後ろの席にそいつが座ったんだ」

紅林の表情が、怒りの表情に変わる。

「あいつは、俺に気づいた」

拳が震えている。

「そして一緒にいた連れに話す素振りをして、俺に聞こえるように言ったんだ」

川路は次に来る言葉を、直感的に察した。

『あいつな、俺の中学の時の同級生なんだ』

『今は警察官をしてるらしい』

ニタニタと笑いながら、まるで馬鹿にするように、

『人を助ける仕事なんて、ご立派だよな』

『でもさ――』

川路は目を伏せる。

『まずは、自分を助けてもらうのが先だろ?』

完全な侮辱だった。
後ろで高笑いをする、雄太の父親。

紅林はまだ続ける。

「お前は知らないと思うが」

紅林は歯を食いしばった。

「この街の連中は、今でも俺たちを蔑んでいる。
  雄太の父親だけじゃない。
  大人になっても、あいつらは変わらない」

紅林の声が強くなる。

「俺たちは一生、こっち側だ!
  ただ親がいないだけ、ただ施設育ちなだけで!」

「俺たちがどれだけ変わろうとしても、周りは変わらない」

その言葉を、不気味な男は横で聞いている。
まるで楽しんでいるように、わざとらしく何度も大きく頷いている。

そして、紅林は唐突に言った。

「雄太を罠にはめたのは、俺だ」

時間が止まる。

「、、、、は?」

川路の目が見開かれる。

「いつもは罠を置いていない場所に、仕掛けた」

やってやった、とでも言うような表情だった。

「、、、お前、、、、」

川路の声が震える。
恐怖ではなく、怒りだ。

その時、不気味な男が唐突に会話に割って入った。

「ねえねえ、
  僕も紅林くんも。そして川路くんも!
  一緒なんだ、僕たちは!!」

川路は男を見る。
何が一緒なのか、まるで理解できないという表情だった。

「紅林くんと川路くんは、生まれながらの境遇だよね」

「施設育ち。親がいない。周りと違う」

そこで一度、言葉を切る。

「僕は、、、、」

間が空く。
男の口元が、わずかに歪む。

「まあ、
  それは後で話すよ」

男が一瞬、苛立つ。
だが、それはすぐに消えた。

そこから、男は満面の笑みに変わる。

「だからさ!」

両手を大きく広げ、天井を仰ぎ見る。

「だから僕たちは、“この世界を作ったんだ”!!」

声が反響する。

男はまるで神でもなったかのように天井を見続ける。


「この世界を、、、、作った?」

川路の思考は完全に追いついていない。


“この世界”ーーやつらが溢れている、この世界のことか?
理解しようとすればするほど、頭の中が軋む。

「ど、どういうことだ?!」

なんとか喉の奥から絞り出した。
その瞬間、男は心底楽しそうに目を細めた。

「お! やっと興味を持ったね!」

子供が秘密を打ち明ける前のような、無邪気さ。


男は川路の方へ一歩近づく。
その横で、紅林はこれから何が語られるのかを知っている表情をしている。

男は川路の耳元で、低くねっとりした声で語り始める。

川路の視界から、だんだんと周囲の景色が消えていく。
言葉だけが、頭の中に流れ込んでくる。


やがてーー男は話すのをやめた。
静寂。

川路は、微動だにしない。
だが、だんだん血の気が引き、目が見開かれていく。
理解したくない。

「、、、そんな、、、」


声にならない呟きが、かすかに漏れた。
不気味なほど静かな廊下に響く。
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