41 / 60
大柄なヒーロー
最後の会話
しおりを挟む
どれだけ泣いたかわからない。
やっと、少し落ち着いてきた。
静かにドアが開く。
雄太の母親だった。
多分、私が泣き終わるのを待ってくれていたのだろう。
気を使ってくれたのだ。
しばらくは、無言の時間が続く。
私からは何も話せない。
そんな余裕は無かった。
やがて、母親がポツリ、ポツリと話し始めた。
それは残りの仲間のこと。
住処に残った、男性二人と女性一人。
彼らは、三階でやつらの侵入を防いでいたらしい。
だが、
「その後は、、、、わからないんです、、」
下を向きながら話す母親。
私は、ゆっくりと顔を上げる。
廃校の出来事を話した。
川路と紅林の死。
理由のわからない紅林の裏切り。
母親は一度、はっきりと驚いた表情をした。
だが、その表情はすぐに崩れ、悲しみに変わる。
「紅林さんが、、、、」
それだけを、呟いた。
その後は、長い沈黙。
私も、雄太の母親も、それぞれの心の整理が必要だった。
私は、英花を火葬しようと決めた。
やつらと同族になってほしくない。
なぜ急にやつらが動かなくなったのか、それはわからない。
だが、この先何が起きるかもわからない。
もしーー。
もし、英花がやつらになって立ち上がることがあれば。
それだけは、絶対に嫌だった。
私は念の為、バットを手に持ち部屋を出た。
どの階も、動かないやつらで埋め尽くされている。
まるで時間が止まったようだった。
外も同じような状況。
マンションの辺り一面、やつらが積み重なるように倒れている。
それでも、何も感じれなかった。
他の全てが、どうでもよかった。
辺りを見渡す。
火葬できそうな場所を探す。
火葬ができる場所はいくらでもあるが、英花を送りたいと思える場所はなかった。
やつらで埋め尽くされた場所は、この世界の醜さの塊だった。
ふと、気配を感じ後ろを見る。
雄太と、その母親が立っている。
子供の前で、重い空気を出してはいけない。
そんなことを、無意識に考えてしまう自分がいた。
「英花を、、、、火葬してあげようと思いまして」
頭を掻く。
この癖は、苦笑いする時に出るもの。
だが、全く笑えなかった。
「屋上はどうですか?」
母親が、静かに言った。
「ここだと、英花ちゃんも居心地が悪いでしょうし、、、」
やつらを見ながら、そう続けた。
「屋上ですか、、、」
私は、マンションの上を見上げた。
真っ青な空。
雲ひとつない、良い天気だった。
「英花、今日は天気が凄くーー」
そこまで言いかけて、止まる。
そういえばいつも、どうでもいいことを英花に話していたな。
それに毎回、英花は応えてくれていた。
『もう! 呑気なんだから、確かに良い天気だけど』
上を見上げたまま、涙がこぼれる。
もうこの先、小さな出来事さえ、共有できる相手はいない。
今になってようやく、はっきりと理解した。
英花が、もう隣にはいないことを。
私は、屋上で英花を火葬することに決めた。
英花を抱きかかえ、階段を上がる。
屋上の扉を開けると、心地の良い風が顔に当たる。
眩しい。
下を見れば、マンションの周囲はやつらでいっぱいだ。
まるで地獄絵図。
なのにーー、
空は驚くほど綺麗だった。
どこまでも青く、何事もないように澄んでいる。
こんな世界になっても、空だけは何も変わらない。
私は腕の中の英花を、そっと抱き直す。
そして、さっきは言い切れなかったことを英花に話した。
「ほら、英花、、、」
声が、上手く出せない。
喉が震える。
「今日、、、は、
すごく、、良い天気だぞ、、、」
返事はない。
それでも、言わずにはいられなかった。
これが最後の、何気ない英花との会話になるからだ。
やっと、少し落ち着いてきた。
静かにドアが開く。
雄太の母親だった。
多分、私が泣き終わるのを待ってくれていたのだろう。
気を使ってくれたのだ。
しばらくは、無言の時間が続く。
私からは何も話せない。
そんな余裕は無かった。
やがて、母親がポツリ、ポツリと話し始めた。
それは残りの仲間のこと。
住処に残った、男性二人と女性一人。
彼らは、三階でやつらの侵入を防いでいたらしい。
だが、
「その後は、、、、わからないんです、、」
下を向きながら話す母親。
私は、ゆっくりと顔を上げる。
廃校の出来事を話した。
川路と紅林の死。
理由のわからない紅林の裏切り。
母親は一度、はっきりと驚いた表情をした。
だが、その表情はすぐに崩れ、悲しみに変わる。
「紅林さんが、、、、」
それだけを、呟いた。
その後は、長い沈黙。
私も、雄太の母親も、それぞれの心の整理が必要だった。
私は、英花を火葬しようと決めた。
やつらと同族になってほしくない。
なぜ急にやつらが動かなくなったのか、それはわからない。
だが、この先何が起きるかもわからない。
もしーー。
もし、英花がやつらになって立ち上がることがあれば。
それだけは、絶対に嫌だった。
私は念の為、バットを手に持ち部屋を出た。
どの階も、動かないやつらで埋め尽くされている。
まるで時間が止まったようだった。
外も同じような状況。
マンションの辺り一面、やつらが積み重なるように倒れている。
それでも、何も感じれなかった。
他の全てが、どうでもよかった。
辺りを見渡す。
火葬できそうな場所を探す。
火葬ができる場所はいくらでもあるが、英花を送りたいと思える場所はなかった。
やつらで埋め尽くされた場所は、この世界の醜さの塊だった。
ふと、気配を感じ後ろを見る。
雄太と、その母親が立っている。
子供の前で、重い空気を出してはいけない。
そんなことを、無意識に考えてしまう自分がいた。
「英花を、、、、火葬してあげようと思いまして」
頭を掻く。
この癖は、苦笑いする時に出るもの。
だが、全く笑えなかった。
「屋上はどうですか?」
母親が、静かに言った。
「ここだと、英花ちゃんも居心地が悪いでしょうし、、、」
やつらを見ながら、そう続けた。
「屋上ですか、、、」
私は、マンションの上を見上げた。
真っ青な空。
雲ひとつない、良い天気だった。
「英花、今日は天気が凄くーー」
そこまで言いかけて、止まる。
そういえばいつも、どうでもいいことを英花に話していたな。
それに毎回、英花は応えてくれていた。
『もう! 呑気なんだから、確かに良い天気だけど』
上を見上げたまま、涙がこぼれる。
もうこの先、小さな出来事さえ、共有できる相手はいない。
今になってようやく、はっきりと理解した。
英花が、もう隣にはいないことを。
私は、屋上で英花を火葬することに決めた。
英花を抱きかかえ、階段を上がる。
屋上の扉を開けると、心地の良い風が顔に当たる。
眩しい。
下を見れば、マンションの周囲はやつらでいっぱいだ。
まるで地獄絵図。
なのにーー、
空は驚くほど綺麗だった。
どこまでも青く、何事もないように澄んでいる。
こんな世界になっても、空だけは何も変わらない。
私は腕の中の英花を、そっと抱き直す。
そして、さっきは言い切れなかったことを英花に話した。
「ほら、英花、、、」
声が、上手く出せない。
喉が震える。
「今日、、、は、
すごく、、良い天気だぞ、、、」
返事はない。
それでも、言わずにはいられなかった。
これが最後の、何気ない英花との会話になるからだ。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。
音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、
幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。
魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。
そして再び出会う幼馴染。
彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。
もういい。
密かにやってた支援も打ち切る。
俺以外にも魔道具職人はいるさ。
落ちぶれて行く追放したパーティ。
俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる