AFTER DEAD「最後の帰路」

ハンドアイランド

文字の大きさ
40 / 47
大柄なヒーロー

一輪の花

しおりを挟む
谷風は雄太の時と同じように、止血を続ける。

だが、腕、肩、脇腹、足。
どこも血が止まらず、包帯を巻いてもすぐに赤く染まる。

「、、、、くそ、、、」

大きな血管を損傷しているのか。
押さえても、押さえても、止まらない。

英花の呼吸が、だんだんと浅くなっていく。

部屋の隅で、雄太と母親が、祈るような目で見ている。

視界が涙で滲む。

英花の血で真っ赤に染まった手で、目を拭う。


「パ、パ、、、」

かすれた声。

「今助けるからな、、、!!」

英花が、ゆっくりと手を伸ばす。
その小さな手を、私は強く握った。

「パ、パ、、、、」

英花の目は、もう焦点が合っていない。


「私、、、は、、、?」

何かを伝えようとしている。

「え? どうした??」

その瞬間。

握っていたはずの英花の手が、するりと谷風の手から滑り落ちた。

「英花?」

英花の目は、半開きのまま。
瞬きもせず、どこか遠くを見つめている。

「、、、英花??」

呼びかけても、反応がない。
呼吸の気配が感じられない。

握っていたはずの手は力無く、だらりとベッドの外に垂れている。


確かめたくない。

わかってしまうから。

震える手を、そっと英花の手首に添える。

脈を探す。


自分の鼓動だけが、やけに大きく響く。


ゆっくりと英花の手をベットの上に戻す。

力が抜けたように崩れ落ちた。

声が出ない。
泣いているのに、声はでない。
ただ涙だけが、ぼたぼたと床に落ちる。


『私、、、は、、、?』

最後に聞いた英花の言葉が、何度も頭の中で繰り返される。

私は?

、、、私は、何だ?

教えてくれよ、英花。


もし、住処に着いた時に、真っ先に英花の部屋に向かっていれば。
もし、救出作戦に英花を連れて行っていれば。
もし、大都会なんて目指さなければ。


ーーもし、私がヒーローなんて目指さなければ。

英花は、死ななかった。

全部、私のせいだ。


ーー『女の子か!!!!』

病室に響き渡る大声。

『ちょっと! 病院よ!!』

ぴしゃりと叱る声。

『あ、わるいわるい、、、』

頭を掻きながら、苦笑いで謝る。

腕を組み、呆れたようにそっぽを向く妻。

『名前、決めなきゃね!
  ただ、あなたはセンスないからなー』

からかうように言う。

『はは、、、。何個か考えてみるよ』

突然、自信満々で妻が喋る。

『実は、、、もう考えているの!!』

『英雄の英に、花で“えな”っていう名前はどう?』

『あなたはヒーローになりたい、つまり英雄でしょ?』

『その英雄が守る一輪の大切な花。だからーー英花!』

自分のお腹を擦りながら、話す妻。

『英花、、、か』

私は何度も頷いた。

『そうしよう!! この娘にピッタリだ!!』

二人は顔を見合わせて、笑った。


「はっ、、、!」

ーー目が覚める。

薄暗い部屋。

雄太の病室か。

ゆっくりと体を起こす。


ベッドの上に横たわる英花。

血は拭き取られている。
きっと雄太の母親が、きれいな姿にしてくれたのだろう。

無言でベッドの横に座り、冷たくなった英花の手を握る。


その瞬間、ぽたりと涙が落ちた。

声が漏れる。

押し殺していたものが、全て崩れ落ちた。

まるで子供のように声をあげて泣いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

二十五時の来訪者

木野もくば
ライト文芸
とある田舎町で会社員をしているカヤコは、深夜に聞こえる鳥のさえずりで目を覚ましてしまいます。 独特でおもしろい鳴き声が気になりベランダから外を眺めていると、ちょっとしたハプニングからの出会いがあって……。 夏が訪れる少し前の季節のなか、深夜一時からの時間がつむぐ、ほんのひと時の物語です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...