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第二章 君は宰相になっていた
46.聖男、ネックレスの効果
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「ルシアン、そろそろ離れないかな?」
「嫌だ」
僕が騎士たちの健康管理をする仕事を引き受けると発言したら、ルシアンはすぐに僕を抱えて庭園を後にした。
自室に連れて行かれると特に話すこともなく、ずっと僕を後ろから抱きしめて放そうとしない。
それに声をかけても嫌だとしか言わないし、まるで拗ねた大きな子どもだ。
「何でそんなに拗ねてるの?」
「みにゃとは俺のこと頼りないと思ってるの?」
ん? なぜルシアンが頼りないという話になっているのだろうか?
昨日からルシアンに頼ってばかりなような気がするけど……。
「頼りない? そんなこと思ってないよ」
僕は振り返ろうとするが、ルシアンの腕がぎゅっと強くなる。
「……だって、みにゃとは何でも一人でできるし。どこでも誰とでも仲良くなれる。俺なんかいなくてもやっていける」
耳元で落ち着かない呼吸が聞こえる。
見た目は大人になっても、心はまだ子どものままのようだ。
「ルシアン、それは誤解だよ。僕が安心して動けるのは、ルシアンが側にいてくれたからだよ?」
「本当?」
僕が頷くと、ようやく少しだけ腕の力が緩む。
「……じゃあ、俺のみにゃとでいて」
「大丈夫だよ」
そう言うと、ルシアンはようやく僕の肩に顔を預けた。
さっきまでの冷たい空気が嘘のように、体温がじんわり広がっていく。
「本当に情けないよな。みにゃとがいなくなるって思うと、俺が俺じゃなくなりそうだ……」
震えるような声で呟くルシアンの頭に、そっと手を添える。
「ルシアンは今まで通りでいいよ。それがルシアンの良さだからね」
体が大きくなってもルシアンはあの頃のままだ。
見た目が変わり大人になったと思っていたのは僕だった。
それに宰相という精神的に負荷がかかるポジションで、誰にも甘えられなかったのだろう。
「嫌いにならないでね?」
「ふふふ、ルシアンって大きなわんちゃんみたいだね」
「ガウガウ!」
ルシアンはまるで本物の犬のように僕の頬にスリスリとしてくる。
相変わらず可愛らしい姿につい笑ってしまう。
「あのー、そういうのは私がいない時でお願いします」
まさか他に人がいるとは思いもしなかった。
あまりの恥ずかしさに僕は思わず顔を下に向けた。
「チッ! お前が出ていけばいい」
「ルシアン様が仕事をしてくれれば、今すぐに出て行きますよ」
同じ部屋にいたのはアシュレイだ。
ルシアンを庭園に呼びに行ったのもアシュレイだった。
国王に連れて行かれる時に、何か起こるかもしれないと察知したのだろう。
影が薄いから急に現れるのを忘れていた。
「ルシアンも早く仕事に戻ったらどう? やることたくさんありそうだよ」
机の上には山積みになった紙の束。
全て一日で確認して指示を出さないといけないものらしい。
さすがに恥ずかしいのを隠すためにルシアンに仕事を勧める。
「やっぱり僕には読めないね」
近くにある紙を覗いてみるが、僕には全く何が書かれているかはわからなかった。
何か手伝おうと思ったが、今の僕では邪魔者になるだろう。
「そういえば、文字はわからないのにアシュレイさんの言葉がわかるのは何でだろう?」
「ああ、それは俺からのプレゼントが関係している」
ルシアンは手を止めると、僕に近づいて首元に手を回す。
手に取ったのはルシアンからプレゼントされた鍵のペンダントトップがついたネックレスだ。
「ここに言葉がわかるように魔法がかけてある」
「そんな魔法もあるんだね。これをずっと着けてて良かった」
まさかネックレスにそんな効果があるとは思わなかった。
ただ、僕がずっと着けていたと言ったからか、ルシアンは嬉しそうに抱きついてきた。
やっぱりプレゼントした物をずっと着けていたって聞くと嬉しいもんね。
「はぁー、この人たちいつまでイチャイチャしてるんだよ……」
さすがに仕事はしないといけない。
それにこれってイチャイチャじゃなくて、ルシアンが甘えてるようなものだ。
昔からルシアンは変わらない。
「ルシアン、仕事頑張って!」
「うん。じゃあ、みにゃとはここに座っててね」
僕はルシアンの隣に座って、しばらく仕事をしている姿を眺めていた。
真面目に仕事をしている姿って、思ったよりも惹きつけられるものがあるね。
「もう帰りたい……」
そんな僕たちを見て、アシュレイは早く帰りたそうにしていた。
できるなら仕事ってしたくないもんね……。
「嫌だ」
僕が騎士たちの健康管理をする仕事を引き受けると発言したら、ルシアンはすぐに僕を抱えて庭園を後にした。
自室に連れて行かれると特に話すこともなく、ずっと僕を後ろから抱きしめて放そうとしない。
それに声をかけても嫌だとしか言わないし、まるで拗ねた大きな子どもだ。
「何でそんなに拗ねてるの?」
「みにゃとは俺のこと頼りないと思ってるの?」
ん? なぜルシアンが頼りないという話になっているのだろうか?
昨日からルシアンに頼ってばかりなような気がするけど……。
「頼りない? そんなこと思ってないよ」
僕は振り返ろうとするが、ルシアンの腕がぎゅっと強くなる。
「……だって、みにゃとは何でも一人でできるし。どこでも誰とでも仲良くなれる。俺なんかいなくてもやっていける」
耳元で落ち着かない呼吸が聞こえる。
見た目は大人になっても、心はまだ子どものままのようだ。
「ルシアン、それは誤解だよ。僕が安心して動けるのは、ルシアンが側にいてくれたからだよ?」
「本当?」
僕が頷くと、ようやく少しだけ腕の力が緩む。
「……じゃあ、俺のみにゃとでいて」
「大丈夫だよ」
そう言うと、ルシアンはようやく僕の肩に顔を預けた。
さっきまでの冷たい空気が嘘のように、体温がじんわり広がっていく。
「本当に情けないよな。みにゃとがいなくなるって思うと、俺が俺じゃなくなりそうだ……」
震えるような声で呟くルシアンの頭に、そっと手を添える。
「ルシアンは今まで通りでいいよ。それがルシアンの良さだからね」
体が大きくなってもルシアンはあの頃のままだ。
見た目が変わり大人になったと思っていたのは僕だった。
それに宰相という精神的に負荷がかかるポジションで、誰にも甘えられなかったのだろう。
「嫌いにならないでね?」
「ふふふ、ルシアンって大きなわんちゃんみたいだね」
「ガウガウ!」
ルシアンはまるで本物の犬のように僕の頬にスリスリとしてくる。
相変わらず可愛らしい姿につい笑ってしまう。
「あのー、そういうのは私がいない時でお願いします」
まさか他に人がいるとは思いもしなかった。
あまりの恥ずかしさに僕は思わず顔を下に向けた。
「チッ! お前が出ていけばいい」
「ルシアン様が仕事をしてくれれば、今すぐに出て行きますよ」
同じ部屋にいたのはアシュレイだ。
ルシアンを庭園に呼びに行ったのもアシュレイだった。
国王に連れて行かれる時に、何か起こるかもしれないと察知したのだろう。
影が薄いから急に現れるのを忘れていた。
「ルシアンも早く仕事に戻ったらどう? やることたくさんありそうだよ」
机の上には山積みになった紙の束。
全て一日で確認して指示を出さないといけないものらしい。
さすがに恥ずかしいのを隠すためにルシアンに仕事を勧める。
「やっぱり僕には読めないね」
近くにある紙を覗いてみるが、僕には全く何が書かれているかはわからなかった。
何か手伝おうと思ったが、今の僕では邪魔者になるだろう。
「そういえば、文字はわからないのにアシュレイさんの言葉がわかるのは何でだろう?」
「ああ、それは俺からのプレゼントが関係している」
ルシアンは手を止めると、僕に近づいて首元に手を回す。
手に取ったのはルシアンからプレゼントされた鍵のペンダントトップがついたネックレスだ。
「ここに言葉がわかるように魔法がかけてある」
「そんな魔法もあるんだね。これをずっと着けてて良かった」
まさかネックレスにそんな効果があるとは思わなかった。
ただ、僕がずっと着けていたと言ったからか、ルシアンは嬉しそうに抱きついてきた。
やっぱりプレゼントした物をずっと着けていたって聞くと嬉しいもんね。
「はぁー、この人たちいつまでイチャイチャしてるんだよ……」
さすがに仕事はしないといけない。
それにこれってイチャイチャじゃなくて、ルシアンが甘えてるようなものだ。
昔からルシアンは変わらない。
「ルシアン、仕事頑張って!」
「うん。じゃあ、みにゃとはここに座っててね」
僕はルシアンの隣に座って、しばらく仕事をしている姿を眺めていた。
真面目に仕事をしている姿って、思ったよりも惹きつけられるものがあるね。
「もう帰りたい……」
そんな僕たちを見て、アシュレイは早く帰りたそうにしていた。
できるなら仕事ってしたくないもんね……。
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