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第二章 君は宰相になっていた
47.聖男、異世界の食事事情
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「ご飯食べに行こうか」
「あぁ、もうこんな時間なんだね!」
ルシアンの執務室で勉強していると、ルシアンが声をかけてきた。
時計を見るとお昼の時間を超えていた。
「それにしてもこの世界の文字って覚えやすいね」
この世界の文字はどことなくローマ字に近かった。
母音と子音を覚えたら、あとは組み合わせるだけだし、形もそこまで複雑じゃないから安心した。
「みにゃとが頭良いからだよ」
ルシアンは僕の頭を優しく撫でる。
大きな手に撫でられると、どこか体を寄せてしまいたくなるほど心地よい。
「ごほん! 食事に行くんですよね?」
「お前一人で行ってこい!」
「はぁん!?」
そういえば、同じ部屋でアシュレイがいたのを忘れていた。
存在感が薄いから話さないと忘れてしまう。
決して、見た目の存在感薄いというわけではなく、物理的に気づきにくい。
息をする音も聞こえないし、動き一つ一つ物音を立てないからね。
「せっかくだからみんなと食べた方がおいしいよ?」
「そうですよ! さぁ、ミナトさん行きましょうか」
僕はアシュレイに引っ張られながら食堂へ向かう。
ニヤニヤと笑っているアシュレイは普段こき使われているから、ここぞとばかりにルシアンに仕返しをしているのだろう。
「俺のみにゃとを返してもらおうか」
急に声が聞こえたと思ったら、気づいたらルシアンは僕の隣に立っていた。
魔法があるとは聞いているが、今のも魔法なんだろうか。
ただ、アシュレイを見るルシアンの顔が想像以上に怖かった。
僕を見ている時は、ニコニコしていることが多いのにな……。
食堂に入ると、僕たちに視線が集まってくる。
まぁ、隣にルシアンがいれば仕方ないよね。
「聖男だぞ」
「あれで俺たちより年上かよ……」
話している声がやけに多いから、ざわざわして何を話しているかまでは聞こえない。
それにルシアンが僕を隠そうとして、マントをふわりとかけた。
きっと僕が気にしないように配慮してくれたのだろう。
こういうところは優しいよね。
歩きにくいから、僕はルシアンの腰に手を回す。
「くっ……みにゃとが自ら抱きついてきたぞ……」
ルシアンも何かボソボソと呟いているが、マントで隠れてうまく聞こえない。
チラッと見えた顔はそっぽ向いているしね。
「今日も肉焼きか……」
「気分ではないんだよね」
マントをずらして声がする方を見ると、国王は骨付き肉を皿に乗せて運んでいた。
国王もここで食事を食べているのだろう。
「あっ!」
僕に気づいたのか手を振っている。
さすがに隠れるのはいけないと思い姿を現すが、ルシアンの顔はムスッとしていた。
それを見て国王も楽しそうだ。
きっと普段と違うルシアンの姿を見れるから楽しいのだろう。
「僕たちも早く取りに行こう……?」
「ああ」
僕はルシアンを引っ張って食事を取りに行く。
昨日来た時はアシュレイが持ってきてくれたけど、定食屋のように食べられるものが選べる食堂のようになっているようだ。
「なんか……バランスが悪いね」
「みにゃとのご飯が懐かしいよ……」
昨日はある程度野菜もあったから気にならなかったが、今日は全体的に色が茶色なものが多い。
そのほとんどが肉を焼いたものばかりで、炭水化物は芋が中心らしい。
野菜はその日の収穫量によって左右されるのだろうか。
適当にお皿に盛って、座るところを探す。
「ここ空いてるよ」
もちろん僕たちはあの人たちから逃れることができないからね。
「おい、なぜそっちに座る」
「別に私がミナトさんの隣にいても問題はないよね?」
「えっ……そっ……そうだね?」
僕は国王とルシアンに挟まれながら、食事を食べることになってしまった。
左にはクスクス笑っている国王がいるし、右にはムスッとしたルシアンがいる。
アシュレイと騎士団長は特に気にしていないのか、肉を頬張っている。
「いただきます……」
居心地が悪い中、僕は肉を手に取り口に入れる。
うん……思ったよりも硬い。
筋張っているのか、噛み切るのにも時間はかかりそうだ。
ただ、国王やルシアンを見ても、普通に食べている。
僕だけが顎の力が弱いのだろうか。
「ミナトさん、どうしたの?」
「いや……みなさん顎が強いなーっと」
僕が一口食べるまでに四人は何食わす顔で食べ進め、半分程度まで食べ終えていた。
「みにゃとには硬いかな?」
「うーん……筋処理もしていないし、味が脂っこいからあまり食べられないかな。一度脂を落としてから、トマトと一緒に煮込み料理にすると良さそうだよね」
隣からは唾液を飲み込む音が聞こえてくる。
きっとルシアンは過去に食べた料理を思い出しているのだろう。
イメージ的には牛肉のトマト煮やトマトカレーとかになりそうだ。
トマトもルシアンの家には置いてあったから、作れそうだしね。
「ルシアン、作ってあげようか?」
「みにゃと――」
ルシアンは僕に抱きつこうとした瞬間、隣から手が伸びてきた。
気づいた時には顔は国王の方に向けられていた。
「よし、ミナトさんには明日それを作ってもらおうか!」
「「へっ……?」」
僕だけではなく、後ろからルシアンの驚いた声が聞こえてくる。
「その手を放せ!」
ルシアンはすぐに国王の手を払った。
そんなことをしても良いのかとヒヤヒヤするが、騎士団長もアシュレイもキラキラした目で僕を見ていた。
あれ……これって逃れられないやつじゃ……。
僕はルシアンに助けを求めたが、怒っているのは国王が僕に触れたことに対してだった。
「さすがに僕には荷が重すぎるかと……」
ただの料理好きが国王の食事を作るなんて、普通じゃ考えられない。
これは断るべきだろう。
「いや、みにゃとならできる」
いやいや、ルシアン。
そこはルシアンも協力して断るべきだろう。
僕と目が合うと、ニコッと笑っている。
きっと僕の味方をしているとでも思っていそうだ。
「だけどお前たちには食わせないからな! みにゃとの手料理は俺のだ!」
「ふふふ、できるなら作ってもらおうかな? 一応仕事だからね?」
国王はルシアンの話を全く聞いていないようだ。
それを言われたら僕も断りにくい。
なぜ、国王からの仕事を一つでも引き受けることにしたのか今頃になって後悔が襲ってくる。
「それにお昼にミナトさんのご飯が食べられてルシアンも嬉しいよね?」
「んっ……それもそうだが……」
おい、もっと言い返してよ!
そう思っていた頃には、すでにルシアンも丸め込まれていた。
「みにゃと、明日楽しみにしてるね?」
「はぁー」
どうやら僕は明日の昼食を作ることになったらしい。
「あぁ、もうこんな時間なんだね!」
ルシアンの執務室で勉強していると、ルシアンが声をかけてきた。
時計を見るとお昼の時間を超えていた。
「それにしてもこの世界の文字って覚えやすいね」
この世界の文字はどことなくローマ字に近かった。
母音と子音を覚えたら、あとは組み合わせるだけだし、形もそこまで複雑じゃないから安心した。
「みにゃとが頭良いからだよ」
ルシアンは僕の頭を優しく撫でる。
大きな手に撫でられると、どこか体を寄せてしまいたくなるほど心地よい。
「ごほん! 食事に行くんですよね?」
「お前一人で行ってこい!」
「はぁん!?」
そういえば、同じ部屋でアシュレイがいたのを忘れていた。
存在感が薄いから話さないと忘れてしまう。
決して、見た目の存在感薄いというわけではなく、物理的に気づきにくい。
息をする音も聞こえないし、動き一つ一つ物音を立てないからね。
「せっかくだからみんなと食べた方がおいしいよ?」
「そうですよ! さぁ、ミナトさん行きましょうか」
僕はアシュレイに引っ張られながら食堂へ向かう。
ニヤニヤと笑っているアシュレイは普段こき使われているから、ここぞとばかりにルシアンに仕返しをしているのだろう。
「俺のみにゃとを返してもらおうか」
急に声が聞こえたと思ったら、気づいたらルシアンは僕の隣に立っていた。
魔法があるとは聞いているが、今のも魔法なんだろうか。
ただ、アシュレイを見るルシアンの顔が想像以上に怖かった。
僕を見ている時は、ニコニコしていることが多いのにな……。
食堂に入ると、僕たちに視線が集まってくる。
まぁ、隣にルシアンがいれば仕方ないよね。
「聖男だぞ」
「あれで俺たちより年上かよ……」
話している声がやけに多いから、ざわざわして何を話しているかまでは聞こえない。
それにルシアンが僕を隠そうとして、マントをふわりとかけた。
きっと僕が気にしないように配慮してくれたのだろう。
こういうところは優しいよね。
歩きにくいから、僕はルシアンの腰に手を回す。
「くっ……みにゃとが自ら抱きついてきたぞ……」
ルシアンも何かボソボソと呟いているが、マントで隠れてうまく聞こえない。
チラッと見えた顔はそっぽ向いているしね。
「今日も肉焼きか……」
「気分ではないんだよね」
マントをずらして声がする方を見ると、国王は骨付き肉を皿に乗せて運んでいた。
国王もここで食事を食べているのだろう。
「あっ!」
僕に気づいたのか手を振っている。
さすがに隠れるのはいけないと思い姿を現すが、ルシアンの顔はムスッとしていた。
それを見て国王も楽しそうだ。
きっと普段と違うルシアンの姿を見れるから楽しいのだろう。
「僕たちも早く取りに行こう……?」
「ああ」
僕はルシアンを引っ張って食事を取りに行く。
昨日来た時はアシュレイが持ってきてくれたけど、定食屋のように食べられるものが選べる食堂のようになっているようだ。
「なんか……バランスが悪いね」
「みにゃとのご飯が懐かしいよ……」
昨日はある程度野菜もあったから気にならなかったが、今日は全体的に色が茶色なものが多い。
そのほとんどが肉を焼いたものばかりで、炭水化物は芋が中心らしい。
野菜はその日の収穫量によって左右されるのだろうか。
適当にお皿に盛って、座るところを探す。
「ここ空いてるよ」
もちろん僕たちはあの人たちから逃れることができないからね。
「おい、なぜそっちに座る」
「別に私がミナトさんの隣にいても問題はないよね?」
「えっ……そっ……そうだね?」
僕は国王とルシアンに挟まれながら、食事を食べることになってしまった。
左にはクスクス笑っている国王がいるし、右にはムスッとしたルシアンがいる。
アシュレイと騎士団長は特に気にしていないのか、肉を頬張っている。
「いただきます……」
居心地が悪い中、僕は肉を手に取り口に入れる。
うん……思ったよりも硬い。
筋張っているのか、噛み切るのにも時間はかかりそうだ。
ただ、国王やルシアンを見ても、普通に食べている。
僕だけが顎の力が弱いのだろうか。
「ミナトさん、どうしたの?」
「いや……みなさん顎が強いなーっと」
僕が一口食べるまでに四人は何食わす顔で食べ進め、半分程度まで食べ終えていた。
「みにゃとには硬いかな?」
「うーん……筋処理もしていないし、味が脂っこいからあまり食べられないかな。一度脂を落としてから、トマトと一緒に煮込み料理にすると良さそうだよね」
隣からは唾液を飲み込む音が聞こえてくる。
きっとルシアンは過去に食べた料理を思い出しているのだろう。
イメージ的には牛肉のトマト煮やトマトカレーとかになりそうだ。
トマトもルシアンの家には置いてあったから、作れそうだしね。
「ルシアン、作ってあげようか?」
「みにゃと――」
ルシアンは僕に抱きつこうとした瞬間、隣から手が伸びてきた。
気づいた時には顔は国王の方に向けられていた。
「よし、ミナトさんには明日それを作ってもらおうか!」
「「へっ……?」」
僕だけではなく、後ろからルシアンの驚いた声が聞こえてくる。
「その手を放せ!」
ルシアンはすぐに国王の手を払った。
そんなことをしても良いのかとヒヤヒヤするが、騎士団長もアシュレイもキラキラした目で僕を見ていた。
あれ……これって逃れられないやつじゃ……。
僕はルシアンに助けを求めたが、怒っているのは国王が僕に触れたことに対してだった。
「さすがに僕には荷が重すぎるかと……」
ただの料理好きが国王の食事を作るなんて、普通じゃ考えられない。
これは断るべきだろう。
「いや、みにゃとならできる」
いやいや、ルシアン。
そこはルシアンも協力して断るべきだろう。
僕と目が合うと、ニコッと笑っている。
きっと僕の味方をしているとでも思っていそうだ。
「だけどお前たちには食わせないからな! みにゃとの手料理は俺のだ!」
「ふふふ、できるなら作ってもらおうかな? 一応仕事だからね?」
国王はルシアンの話を全く聞いていないようだ。
それを言われたら僕も断りにくい。
なぜ、国王からの仕事を一つでも引き受けることにしたのか今頃になって後悔が襲ってくる。
「それにお昼にミナトさんのご飯が食べられてルシアンも嬉しいよね?」
「んっ……それもそうだが……」
おい、もっと言い返してよ!
そう思っていた頃には、すでにルシアンも丸め込まれていた。
「みにゃと、明日楽しみにしてるね?」
「はぁー」
どうやら僕は明日の昼食を作ることになったらしい。
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