異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた

k-ing /きんぐ★商業5作品

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第二章 君は宰相になっていた

45.聖男、国王に誘われる

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「ミナトくんはこれから何か予定はあるかな? よかったらこの後時間をもらえない?」

 国王からの突然の誘いに僕はチラッとアシュレイを見る。
 だが、アシュレイはジーッと見つめるだけで、何を伝えたいのかわからない。
 自分で判断しろってことだろうか。

「特に予定は――」
「それなら少しだけお茶でもしようか」
「ふぇ!?」

 国王は僕の手を掴むと強引に引っ張っていく。
 それを見てさすがに騎士団長やアシュレイも呆れているのか、二人でコソコソと話していた。

「では関係ない私はここで失礼します」
「えっ……」

 アシュレイは一礼すると、そのままどこかに去っていく。
 気づいた時には姿も見えない。
 相変わらず急にどこかへ消えてしまう。

「置いていかれた……」

 いきなり一人にされるとは思わなかった。

「あのー、まだこの城の構造がわかっていなくて――」
「それなら帰りはヴォルフラムに案内させよう。それで問題はないかな?」
「えっ……ええ」

 国王は思ったよりも強引な人のようだ。
 そのまま引っ張られて着いたのは、城から少し離れた庭園だった。
 周囲には綺麗な花が咲いており、どこか懐かしく思う。

「マリーゴールドにポピーがたくさんある……」
「ミナトくんもこの花を知ってるのかい?」
「あっ、はい。大事な人からもらったことがあるんです」

 ルシアンが最後に日本にきた時にもらった花束に入っていたのが、マリーゴールドとポピーだった。
 頑張って咲かせたと言っていたが、この世界では一般的な花になったのだろう。
 僕は国王に案内されると、中央に置いてある椅子に腰掛ける。
 すぐにメイドが駆けつけて、紅茶を入れてくれた。

「ミナトくんはルシアンの聖男なのかな?」
「ルシアンのですか……? いえ、僕にはわかりません」

 聖男という言葉の意味がわからないため、はっきりとは答えられない。
 憧れの人もしくは家族と似たような言葉なんだろうか。

「そうか……。それなら私の元で働く気はないかな?」
「ゴホッ! 国王様の元でですか!?」

 突然の誘いに僕も困惑する。
 思わず飲んでいた紅茶を国王の目の前で噴き出すところだった。
 まさかそんな誘いを受けるとは思いもしなかった。

「理由を聞いてもよろしいですか?」
「あぁ! ミナトくんの治療技術がすごいと思ったからね」

 きっと騎士に対して行った治療のことを言っているのだろう。
 ただ、僕がしたのは経口補水液を作ったのと、背中を摩ったぐらいだ。
 特に何かした記憶もない。

「すみません。僕には国王様の元で――」

――ガチャ!

 扉が開く音とともに、大きな手が僕の口を塞ぐ。

「俺のみにゃとに何のようですか?」
「ふーん、俺のミナトね……」

 ルシアンから聞いたことのない低い声が胸に響く。

「返答次第では国王……いや、ユリウスでも許さない」

 どこか嫉妬に沈んだような声が胸をざわつかせる。
 振り返る間もなく、背中に感じる体温が近づく。
 その腕はどこか震えており、何に怯えているのか僕にはわからなかった。

「僕はただお仕事に誘われただけだよ?」
「仕事に誘われた?」

 間違ったことを言った覚えはないのに、ルシアンの声がさっきよりも怒っているように感じた。
 さすがに宰相でも、国王に逆らうことは命に関わる気がする。
 僕はすぐにルシアンの頭を撫でる。

「大丈夫。僕は断るつもりだからね」
「うん……」

 顔は見えないけど、国王の反応を見ればルシアンが落ち着いたのはわかる。
 今は僕の肩に顔を埋めるように抱きついているからね。

「医者じゃないからそんな技術があるわけでも――」
「それは違う。みにゃとはすごい」

 ルシアンの言葉を聞き、国王はさらにニヤリと笑った。
 あえて否定をしたのに、ルシアンが僕を認めれば価値があるって言っているようなものだ。

「ルシアンもそう言ってるようだし、私の元が働きにくいなら騎士たちの健康管理でもしてもらおうか?」
「絶対ダメだ」

 ルシアンはどうしても僕を働かせたくはないようだ。
 騎士たちと話したけど、そこまで危ない人たちじゃなかった。
 むしろ、僕の年齢に驚いていた記憶しかない。

「ルシアンには聞いていない。私はミナトさんに聞いているんだよ?」

 やっと落ち着いたのに、庭園の中がバチバチとした冷たい空気を感じる。
 日が直接当たっているはずなのに肌が寒い。
 ただ、僕もルシアンの態度が気になっていた。
 国王の元で働くのを禁止しているのは、百歩譲って理解はできる。
 何も知らない僕が国王の元で働くのは危険だからね。
 だけど、今誘われたのは騎士たちの健康管理だ。
 それぐらいなら看護師の僕でもできるはず。

「ルシアンはなんで僕が働くのはダメなの?」
「いや……それは俺が嫌なだけだ」

 どうやら僕はルシアンの感情に縛られているらしい。

「僕だって何か役に立てるならしたいんだ。ずっとルシアンに甘えているわけにはいかないからね」

 これからどうなるのかも分からないのに、ずっとルシアンにおんぶに抱っこではダメなのは僕でも気づいている。
 今のルシアンなら物理的におんぶや抱っこもやってくれそうだけどね。

「みにゃとはそんなこと気にしなくても良い! お金ならいくらでもあるし、屋敷も用意してある! どこかに行かなくても――」

 ゆっくり振り返ると、ルシアンの瞳が揺れていた。
 いつも余裕そうな彼が、子どものように迷っている。

「……俺はみにゃとが怪我したり、危ないところに行くのが嫌なんだ」

 まっすぐな言葉に胸が締めつけられる。
 ただ、まさかそんな理由だとは思っていなくて、思わず笑いそうになった。

「大丈夫。僕がするのは健康管理だけですよ……ね?」

 僕の言葉に国王も頷いている。

「でも……あいつらちは忙しいし無茶もする。それにみにゃとに何をするかわからない」

 完全に過保護な発言だった。
 国王もそんなルシアンを見て、楽しそうに肘をつく。

「ルシアンがこんなに取り乱すのは珍しい。ミナトくん、君は相当大事にされているようだね」
「そうみたいです……」

 少し恥ずかしいが別にルシアンに大事にされて嫌な思いはしていない。
 だけど、今のままだと僕は僕を押し殺すことになりそうな気がする。

「国王様……その仕事を引き受けます」

 少し強引だけど、僕はルシアンの反対を押し切って騎士たちの健康管理を引き受けることにした。

✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦・━・✦
【あとがき】

いつのまにかBLコンテストが終わってました笑
これからはゆったりと更新していきます!
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