117 / 150
新章 魔導士シルドの成り上がり ~復縁を許された苦労する大公の領地経営~
第三十五話 城塞都市アーハンルドの闇 4
しおりを挟む(僕だけの騎士、か)
シルドは内心、嬉しさが溢れていることを楽しんでいた。
母上、あなたに捧げた言葉が、エイシャになり。
アルアドル卿はアルメンヌに‥‥‥
どうか善き仲になって欲しい。
亡き母の面影をアルメンヌにふと見出しながら、シルドは階下に降りていった。
「やあ、イルバン卿。
気分はどうだ?」
階下にはムスっとした顔で椅子に腰かけるイルバン卿と、ふん、仕方ない奴だ。
そんな視線で彼を見るアルム卿が控えていた。
イルバン卿はアルメンヌを見ると、やはり恨みがましい目でにらんでいる。
アルアドル卿がその視線を遮るように、アルメンヌの前に立ちふさがる。
若き騎士と、主への忠誠心を変えれない騎士との邂逅。
これは道中、また揉めるな。
シルドはそう嘆息した。
「旦那様‥‥‥」
アルメンヌは素直に怯えてシルドの腕にしがみついていた。
無理もない、殺されたのだから。
「大丈夫だ、お前。
安心しろ」
お前?
ああ、そうね、旦那様。
もう始まっているのね、わたしたちの演技は‥‥‥
「閣下、なぜ殺されないのですか――屈辱感を舐めて味わえと?
そうおっしゃりたいので?」
挑発しつつも、シルドにどこか怯えているイルバン卿はアルメンヌから見れば滑稽だった。
まるでかなわないと知りつつも、犬が尾を垂れ下げて吠えているようにしか見えなかったからだ。
「それくらにしておけ、イルバン。
ここには、客が他にもいるんだ。
騎士としてまた恥を上塗りする気が?」
「しかし、アルム卿。
なぜ、アルメンヌをかばう?」
言ってもよろしいので?
そう、アルム卿はシルドを見上げた。
かまわん、そう主がうなづいたのを見て、アルム卿はイルバン卿に宣告する。
「昨夜から、アルメンヌを閣下は側室に迎えることとされた。
わかるな?
子爵様よりも階位が上だ。
それがどういうことか、お前なら理解できるだろう?」
ふふんと不敵に笑って見せるシルドとアルメンヌをイルバン卿は狂ったものでも見るように叫んだ。
「ばっ、ばかな!?
そのような血筋すら!!」
「血筋?
ユニス殿下の母上は高家の出。
それに連なるならば、何も問題はない。
違うかな?」
「しかし、それは、いえ‥‥‥アルメンヌ様は――それに相応しい生い立ちでは‥‥‥」
「あのな、イルバン卿の主君への騎士道を貫いた。
それは誉めよう。評価もしている。
意味が分かるか?」
シルドの問いかけに彼は頭を捻った。
その意図がどうしても理解できないからだ。
「私の騎士道をお褒め頂き光栄ですが、閣下。
それがどう、関りが?」
「その主君からの本命は、このアルメンヌの命か?
それとも、僕の補佐か?
君の中での一番の課題は主命を成し遂げることだろう?
それは、正直に聞こう。
どちらだ?」
そんなことを聞かれて、アルメンヌの命です。
などとは口が裂けてもいえるものではない。
「かっ、閣下の御供を成すことです、シルド大公閣下‥‥‥」
だ、そうだ。
安心したか、アルメンヌ?
シルドは腕にしがみついて離れない彼女の頭をそっと撫でて言った。
「では、イルバン卿。
協力してくれ。
アルメンヌを守りながらな」
困惑する全員を引き連れて向かうは子爵家。
この城塞都市アーハンルドの闇の大元のところであった。
0
あなたにおすすめの小説
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
國樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった
佐藤 美奈
恋愛
セリーヌ・エレガント公爵令嬢とフレッド・ユーステルム王太子殿下は婚約成立を祝した。
その数週間後、ヴァレンティノ王立学園50周年の創立記念パーティー会場で、信じられない事態が起こった。
フレッド殿下がセリーヌ令嬢に婚約破棄を宣言した。様々な分野で活躍する著名な招待客たちは、激しい動揺と衝撃を受けてざわつき始めて、人々の目が一斉に注がれる。
フレッドの横にはステファニー男爵令嬢がいた。二人は恋人のような雰囲気を醸し出す。ステファニーは少し前に正式に聖女に選ばれた女性であった。
ステファニーの策略でセリーヌは罪を被せられてしまう。信じていた幼馴染のアランからも冷たい視線を向けられる。
セリーヌはいわれのない無実の罪で国を追放された。悔しくてたまりませんでした。だが彼女には秘められた能力があって、それは聖女の力をはるかに上回るものであった。
彼女はヴァレンティノ王国にとって絶対的に必要で貴重な女性でした。セリーヌがいなくなるとステファニーは聖女の力を失って、国は急速に衰退へと向かう事となる……。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました
蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。
家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。
アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。
閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。
養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。
※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる