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新章 魔導士シルドの成り上がり ~復縁を許された苦労する大公の領地経営~
第三十四話 城塞都市アーハンルドの闇 3
しおりを挟む秘密だぞ?
そう悪戯心を出しながらシルドはアルアドル卿に提案をする。
「なあ、アルアドル卿。
君は、『騎士』、にはなりたくないか?」
「騎士、で、ございますか、閣下。
それでしたら既に‥‥‥」
いえ、その、まだ見習いから上がったばかりで頼りなく見えるのは事実ですが。
そう肩を落として言うアルアドル卿。
若者はこれくらい素直で、あのイルバン卿を斬ろうとした覚悟を見せれるくらいが丁度いい。
「いやいや、そうではないよ。
ただ、一人のためだけの、騎士だ」
ただ一人のためだけの騎士?
それは、御婦人がたが好む、英雄などの行う‥‥‥女性に愛を語る存在。
そして、その女性のためだけに命をかけて武勲を上げ、愛を証明する――
「つまり、閣下はアルメンヌの騎士になれ‥‥‥と?」
話が早いな。
頭の回転も良い。
良い部下を持ったなシェイルズめ。
シルドは少しだけ、シェイルズが羨ましくなった。
王国においてきた部下たちを思い返してしまう。
あの馬小屋も‥‥‥
「ああ、そうだ。
アルアドル卿。だが、剣を捧げる必要はない。
イルバン卿はこの旅が終わりまで同行させる」
シルドのその発言に、少年は難色を示した。
「そんな、閣下‥‥‥いつ寝返るやもしれない相手を――」
仲間と呼べ、などと‥‥‥アルアドル卿は悲しそうな顔をする。
彼だって、あの場で剣を振り上げた時。
悲しみがあったはずだ。
数日とはいえ、仲間だったのだから。
「いや、それがなあ。
いるんだよ、あれが。あのイルバン卿がな。
アルメンヌの怒りも恨みも晴らしてやりたい」
ついでに、あの高家が管理できないのならば。
飛び地として、彼の主とやらとその傭兵団すら平らげてやり、その後に処断してやろうかと。
そう、シルドは心に決めていた。彼は言葉を続ける。
「なあ、アルアドル卿。
これはまだ、アルム卿にもアルメンヌにも。
いや、君にだけ話すことだ。
だが、誰に話しても報告しても構わない。
アルメンヌは仲間だ。
多分、これからこの五人は十年にも及ぶ長い時間を共に背中を預けるようになる。
だから、話しておく。
殿下は十年後。復活なさる。
その際には、反乱がいる。どこかに引きこもっていた殿下を引っ張り出すほどの反乱だ。
意味がわかるか?」
突然の恐ろしい計画に、アルアドル卿は顔を青ざめさせる。
それはつまり――
「まさ、か。
閣下とエイシャ様‥‥‥お二人で、の御計画ですか?」
「いや、もっと上だ」
「上?
では、ユニス様など‥‥‥???」
「残念。
皇帝陛下とユンベルト宰相殿だな」
閣下ーそんな大事を悠長にしゃべられては困ります!!!
アルアドル卿は泣きそうになっていた。
「では、この旅はなんのための‥‥‥???」
「うん?
これか?
これはな、もうユンベルト宰相殿も若くはないだろう?」
「はい、それは確かに‥‥‥」
「それでだ、いまのブルングド大公がグレン殿下が僕を倒した後にこの大公家に入る」
「で、ではー??
ブルングド大公家はどなた様が‥‥‥?」
ああ、それか。
聞いて驚くなよ。シルドは前置きをして告げた。
「ニーエ様とグレン殿下の間の御子だ。
実は生きておられる」
アルアドル卿はもう卒倒しそうになっていた。
「シルド様、もうご勘弁を‥‥‥死にそうです。
アルメンヌの騎士の件、承りました。
この一命を賭けてー‥‥‥」
そして、ふと、アルアドル卿は疑問を持つ。
「では、閣下夫妻はその後は???」
シルドは、困った顔をした。
「形ではどこかエシャーナ公領の田舎で生きるとは言われているが――
まあ、生きていることはないだろうな。
エイシャもその心づもりだ。
この事は、僕たち夫婦が死ぬ可能性の話だけは、胸の内に秘めていて欲しい」
では、アルメンヌを頼む。
そう言い、シルドはアルアドル卿と共に部屋をでた。
(閣下、なぜそこまでユニス様とグレン殿下に?
あの夜のことをすべて背負われる気なのですか?)
いざとなれば、アルメンヌを説得し、自分も彼らを守る盾になる日がくるかもしれない。
アルアドル卿は、隣を歩く心を寄せる女性に視線をやりながらそう感じていた。
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