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新章 魔導士シルドの成り上がり ~復縁を許された苦労する大公の領地経営~
第三十六話 城塞都市アーハンルドの闇 5
しおりを挟む「子爵家とは聞いていたが‥‥‥」
なんとも呆れ果ててものが言えなくなるほどに立派な門構え。
辺境に行けば、砦代わりにでも使えそうなほどに高い壁。
内側には、玄関に続く道が広く間取りを取り、大樹が道路脇に同じ間隔で植えられ、まるで王城のようなたたずまいだ。
「贅沢をしているというのも度を越えているのでは‥‥‥???」
アルム卿はあれを、と指差す先には下水に繋がる水路への地下に降りる道まで完備されている。
この城塞都市の周囲を流れる運河の水脈を上手く利用しているのだろうが‥‥‥
「こんなもの、この付近の上流階級の貴族邸宅には見れなかったな‥‥‥」
どれほどの金を溜め込んでいるんだ、ここの主は。
門扉が開き、これまた衛士ではない着飾った貴族子女としか思えないうら若い女性たちが出迎えに来る。
「なんだ、あれは?
見習いでも雇っているのか?」
シルドはアルアドル卿にそっと耳打ちした。
すると、彼はいいえ、と首を振る。
「全員、側室ですよ、閣下。
中には十二歳の少女までそんな扱いを受けているとか‥‥‥」
「十二歳?
まあ、貴族子女の結婚年齢にしては珍しくないが‥‥‥レグアル子爵はおいくつなのだ?」
アルアドル卿ははあ、とため息をついて報告する。
「もう五十代間近というお話です。
まともな貴族がすることではありませんよ、閣下。
愛人として連れ込むにしても‥‥‥」
そうだな、あまりにも趣味が悪い話だ。
だが、そうでないと困るんだがな。
そうもシルドは思う。
ここでまともな人物であれば――この喜劇は即、終幕となるからだ。
「おい、つねるなよ?」
一声だけ先にアルメンヌに予防線を張って置く。
まだ、あのつねられた跡が痛い。
エイシャに報告された日には‥‥‥本当に切り落とされかねない。
そんな不安がシルドの脳裏をよぎった。
案内される間に確約を取らねば、あとあと命取りになる。
しかし、そんなシルドの心を知ってか知らずか。
演技とはいえ、アルメンヌはシルドにべったりと張り付いて離れない。
「まあ、旦那様。
なにをおっしゃっているのかアルメンヌにはわかりませんわ‥‥‥。
奥様にはすべて、そう全て――。
お伝えいたしますから‥‥‥」
嫌なら、今夜抱いて下されば黙っていますよ?
そう、耳もとでささやかれ、シルドは真っ青になりかけた。
「あ、ああ‥‥‥そう、だな。
アルメンヌよ、お前は美しいなあ――」
ふざけるな、そんなことできるか。
そうささやきかえすが、
「あら嫌だ、大公閣下。
まだ、陽も高いうちからそのようなことを望まれて――
今夜が楽しみですね」
にっこりと微笑むアルメンヌは妖艶な美しさを見せていた。
イルバン卿が怒りを見せ、アルアドル卿はシルドに嫉妬しつつアルメンヌに見惚れ‥‥‥
「僕はいつでもお前を愛しているさ、ああ。
そうだな‥‥‥」
エイシャに殺される。
そう、シルドは心の中で叫んでいた。
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