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今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです!
悪者にしないでよ。
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あたしはこんなにもあたしを大事にしてくれる人たちに囲まれている‥。
その日、あたしはフワフワした気持ちで眠りについた。
そういえば、こんな時間からゆっくり眠りにつくのなんて久しぶりだな~なんて思いながら‥
その夜、夢を見た。
担当さんの夢。
担当さんは何も言わずあたしをあったかい笑顔を浮かべて見ているだけだった。
何も言ってくれないことに、物足りないとは思わなかった。寧ろね、今は担当さんのアドバイスは要らないかな~なんて。
担当さんはあたしが何したとか、全部知ってるからあたしから報告することはない。
別に嫌じゃない。話したこととか全部聞かれてるわけじゃないし、したことも、今日誰と会って何したとかまで細かく知られているわけではない。「ああ知り合いが増えたんだな」程度の認識しかないと思う。流石にあたしが凄く落ち込んでたりしたら、夢で様子をうかがってきたり、担当さんの判断で「どうやら重大な何かがあったな」とか思ったら、「過去を遡って」調べることがある‥らしい。
そういうこと聞くと「あ~あたしってホントに実験体なんだな~」って思う。そしてこの世界がホントに作り者だってことも‥実感する。でも、そんなことどうでもいい。あたしにはどうしようもないし、関係のないことだから。
ホントやら、天然ってことがそんなに大事なことでもない。
担当さんはあたしのことをよく見ている。
あたしのすることを、じゃなくて、「あたしの気分」や「感情」「あたしの顔色を」をよく見ているんだ。
そんな担当さんから見て、近頃のあたしは心配ないって判断になるようだ。
体調のことは家族や友人が気にしてくれてるって分かってるみたい。
有難いね。
親とはまた違う、でも、本当に親しい「親の様な」存在。(あたしの親って神様ってことになるのかな?? それなら、育ての親の担当さんが親で間違いないな。それも、お父さんじゃなくて、お母さん(笑))
そういう存在も身近にいるあたしは幸せ者だ。
次の日、あたしは騎士団にお休みを貰った。昨日倒れた人間が「もう大丈夫です」って言っても信用してもらえないだろうし、あたしにはすることがあったからだ。
あたしをもう一日ベッドの住人にしたがるメイドさんたちに苦笑いして、あたしは
「ちょっとそこまで散歩に行くだけ」
と普段着でふらっと外にでた。庭には夏の花が競演のように咲き乱れてあたしはしばし言葉を失った。「あたしが小さな世界に閉じこもっている間に、周りはこんなに変わっていたんだ」ってちょっと反省はしたけど、小さく息を吐いて気分を入れ替える。
気合を入れなおすって言い方が正しいのかも。
「よし、行こう」って呟いて、あらかじめ外の物置に用意しておいたお忍び用のローブと財布を持ちだし、それをわざわざ可愛い蓋つきの籠にいれて、あたしは堂々と門から家を出た。ローブは「いつも通り」家を出る前に引っ掛ける。
ちょっとした街ブラスタイル。そんな風を装う。
だけど、メイドさんには見られない様に細心の注意も忘れない。メイドさんに見つかったら「ちょっとお庭を散歩なのに、ローブ‥要りますか? 」って怖い顔されて‥最悪引き戻されちゃうだろうから、会わない様に注意しながら‥でも、堂々と門を出る。
あくまで「いつも通り」だ。変にこそこそしたら、かえって門番とかの記憶に残る。それは良くない! (← さりげなくさりげなくといいながら、めちゃ心の中はドキドキ。ハヅキは割と小心者なのだ)
流石に門番さん迄はあたしが倒れたって知らなかったようだ。「行ってらっしゃい」って快く見送ってくれた。
女の子が一人でふらりと街ブラする位なら大丈夫な程、この街は治安がいい。
現にハヅキは通勤の際には護衛を連れていない。だから街ブラだって「今日は一人なんだな」って位の感想しか持たれない。(ハズだ! )
ここで時間を取らない。とにかくさっさとここを離れる。これが重要!!
乗合馬車を捕まえて街に出て、更に馬車を乗り換えて向かう先は治療師協会。
初めて行く治療師協会は、閑静な住宅街の中にあった。
「意外。村はずれにポツンとあるのかと思ってた」
因みに、聖女協会はそういうところにある。聖女協会だけじゃない、魔術士が所属する協会は村はずれにある。村はずれっていうか、森の中に。曰く「森の中にはいい魔素があるから」らしい。でも、魔力が暴走して住人に迷惑を掛けたら困るからって方が大きいんだろうね。
治療師協会はその点、一番魔力を使わない職業だ。だから場所をそんなに選ばないってのはあるね。
「思ったより、小さい。もっと聖女協会みたいに「厳か~」って感じかと思ってた」
あっちはまあ、言うてもイメージ商売だからね。違うわな。例え張りぼてでも豪華な外観を作るわな。‥まあ、儲けてるから張りぼてにする必要なんかないか。
そんなことを思いながら治療師協会に入ったら、受付なんていなくって、そのまま事務机の前で仕事をする幹部たちの姿が目に飛び込んできた。皆書類に向き合ってて、そして、みんな顔色悪い。
うわ~ブラック企業~。
って苦笑い。ハヅキが来たことに気付いたのは一番若い幹部だった。きっと「一番下っ端が接客する」って決まってるんだろう。(皆人付き合いとか好きじゃなさそうな雰囲気してるから(笑))
学校から「協会巡り(見学)」をした時は、「それでも、もうちょっとは愛想良さそうだったけどな~」って、ちょっと思った。協会Topって言ってたから、やっぱ下はそうでもTopは流石にそんなこと言ってらんないんでしょう~て思ったんだけど‥どうやら無理してただけみたい。今は、「ザ・このブラック企業の親玉」みたいな険しい顔で書類を睨みつけ、あたしという来客が来たって言うのに書く手を止めもしないどころか、顔すら上げない。
来客って言っても、ここは普段一般人が来るような場所じゃない。だって治療院なわけじゃないんだもの。ここに用事があるのは、協会の会員とかそういう‥所謂一般人じゃない人々だけだ。(だからなんだろうね)
「何でしょう」
暫く経ってから、一番若い男の職員が、机からちょっと顔を上げて事務的に聞いて来た(「面倒だなぁ」て心の声が聞こえて来た!? おかしいな‥いつの間にあたし、人の心を読む力が!? ‥まあつまり、それっ位分かりやすい態度だったってこと! )。口調は丁寧だし、顔も一応笑顔なんだけど‥なんてぇかな‥目が笑ってない。「つまんない用事だったら叩き出すぞ」って顔に書いてある‥。目の下のクマ、えげつな~。
よく見るとこの前に会った幹部さんだった。あの時は落ち着いた雰囲気の、だけど「今どきの」お兄さん(と言うには微妙な歳? )だったのに、今はただの「目付き悪いオッサン」って感じになってる。(無精ひげ無精ひげ!! 朝からそれはヤバいでしょ! ‥もしかして、徹夜してる?? )
周りを見回すと、全員がそんな感じの風貌だった。
全員治療師に見てもらわなくちゃダメなレベルで顔色ヤバい人たちの集団だよ!! うわ~空気ヤバい!! なんか、どんよりしちゃってるよ!!
ってか、アンタら役職付きって言っても、治療師でしょう!? 治療師が体調管理出来ないとかさ~。マズいっしょ! 今は治療してないかもしれないけどさあ‥。
きっと普通の人だったら「すみません! お邪魔しました! 」って回れ右しちゃうところだろうけど、あたしは幸いそんなやわじゃない。にっこり笑って「シャリナールのハヅキです」と自己紹介(初めましてじゃないけど、自己紹介。覚えてないかもだからね)。幹部さんはあたしのことを認識していない様だったが、名前に憶えがあったらしく、「ああ、ハヅキ君ね」って言って席を立って、応接机(部屋があるわけではなく、ただ、机があるだけ)に案内してくれた。
お茶も幹部さんが自ら用意してくれた。
‥コーヒー? 出過ぎた紅茶?
よくわからない真っ黒な液体だった。あたしは無言でそれを見つめながら、『怪しい‥飲める気がしない‥せっかく用意してもらったけど‥』苦笑いした。
幹部さんはそれを(当たり前の様に)飲みながらハヅキが持って来た手土産のクッキーを無言でバリバリ食べた。かき込んでるって感じではないが、摘まむ手が止まらない。はじめは遠慮がちに伸ばされていた手が、次第に速くなる。その間終始、無言。一心不乱にポリポリ食べている。その食べっぷりは「摘まむ」というよりガチ食いって感じで、ハヅキは幹部さんに自分用に持って来ていたサンドイッチもそっと差し出した。
多分、食事をとる暇もない程忙しいのだろう。
幹部さんはあたしのサンドイッチをほんの少しの躊躇もなく(そして、何の疑問も抱かず)平らげた。そして、お腹が一段落して人心地ついたらしく、
「進級試験ね。了解しました。こちらで用意しときます」
と、この前同様落ち着いた口調で言った。顔色がちょっとよくなったようにも見える。(凄い。ご飯は偉大だ! あと、睡眠も取れたらいいんだけど! )
よかった。
(人心地ついたと同時に)我に返って、さっきまでの自分の醜態(?)を思い出したのか、ちょっと恥ずかしそうにしながら、上品に口の周りをハンカチでおさえる。慌てて食べたサンドイッチのクズに気が付いたのだろう。ハヅキは見ない振りをするために、例のお茶に口をつけた。
‥あ、これ、コーヒーだ。
やっぱ、眠気対策はコーヒーだよね~。
‥うわ~眠気対策で、すっごい濃く苦く淹れられてる~。身体に悪そ~。
傍から見ても、あからさまに苦そうな顔をしていたのだろう(それともサンドイッチのお礼か? )
「あ、砂糖いりますか? 」
幹部さんが聞いて来た。
‥砂糖より、ミルクかな。
ハヅキは首を振ってその申し出を辞退した。
『うん。これは‥眠気覚ましだと思って飲んでおこう。帰ったらまた仕事しなきゃだしね』
そして、要件を話し始める。幹部さんはあっさり、誰に許可を取ることなく、協会の事務所を会場に貸してくれる約束をしてくれた。
おや? 幹部さん、実は結構偉い人?? 一番若いパシリ的存在じゃなくて??
しかも‥すんごいあっさり承諾してくれたぞ? もしかして、機嫌がいい? だから、追加でお願い(ダメもとだ! )
「‥もう二人昇格試験希望者が増えても大丈夫ですか? 同じくシャリナールの治療師なんですが」
「勿論大丈夫ですよ。何なら、幹部を連れてシャリナールさんの方に行きましょうか? 」
ちょッとドキドキしながらきいたんだけど、これも、あっさり通った。
「是非! 」
あたしは前のめりで断言した。
なんと!! めちゃ親切だぞ!?
「‥いいんですか? あとで、なんか要求増やしてきたりしません? 」
つい、訝し気に聞いてしまったあたしに幹部さんはちょっとムカッと顔。
「‥私のこと貴女なんだと思ってるんですか!? 無理難題を言うヤバい上司とかですか? ‥別にね、貴女が出来ない様な事言ってませんよ。貴女なら出来ると思うから言ったんです。貴女は‥せっつかれないと動かないとこあるでしょ? 」
‥せっつかれないと動かない。‥何でアンタがそんなこと知ってる? いや、動きますよ!? ちゃんとせっつかれなくても。うん、そうせっつかれなくても‥。でも、こんなにはhardに動かんかったかな。(適正な仕事量が一番ですよね! )
つまり‥あたしは幹部さんに「せっつくとhardに動く人」って認識されて、幹部さんはそんなあたしにhardに動いて欲しかったってわけね‥。
‥え? イヤですよ?
ちらりと幹部さんを見ると、幹部さんは
「もう、悪者にしないでよ」
(冗談で? )「ヤレヤレ(笑)」みたいな顔するけど‥こちとら全然笑えねえぞ。アンタらのブラックさ、あたしたち下の者にも求めるのはヤメテよね!!
苦笑いしか出来ないハヅキだった。
その日、あたしはフワフワした気持ちで眠りについた。
そういえば、こんな時間からゆっくり眠りにつくのなんて久しぶりだな~なんて思いながら‥
その夜、夢を見た。
担当さんの夢。
担当さんは何も言わずあたしをあったかい笑顔を浮かべて見ているだけだった。
何も言ってくれないことに、物足りないとは思わなかった。寧ろね、今は担当さんのアドバイスは要らないかな~なんて。
担当さんはあたしが何したとか、全部知ってるからあたしから報告することはない。
別に嫌じゃない。話したこととか全部聞かれてるわけじゃないし、したことも、今日誰と会って何したとかまで細かく知られているわけではない。「ああ知り合いが増えたんだな」程度の認識しかないと思う。流石にあたしが凄く落ち込んでたりしたら、夢で様子をうかがってきたり、担当さんの判断で「どうやら重大な何かがあったな」とか思ったら、「過去を遡って」調べることがある‥らしい。
そういうこと聞くと「あ~あたしってホントに実験体なんだな~」って思う。そしてこの世界がホントに作り者だってことも‥実感する。でも、そんなことどうでもいい。あたしにはどうしようもないし、関係のないことだから。
ホントやら、天然ってことがそんなに大事なことでもない。
担当さんはあたしのことをよく見ている。
あたしのすることを、じゃなくて、「あたしの気分」や「感情」「あたしの顔色を」をよく見ているんだ。
そんな担当さんから見て、近頃のあたしは心配ないって判断になるようだ。
体調のことは家族や友人が気にしてくれてるって分かってるみたい。
有難いね。
親とはまた違う、でも、本当に親しい「親の様な」存在。(あたしの親って神様ってことになるのかな?? それなら、育ての親の担当さんが親で間違いないな。それも、お父さんじゃなくて、お母さん(笑))
そういう存在も身近にいるあたしは幸せ者だ。
次の日、あたしは騎士団にお休みを貰った。昨日倒れた人間が「もう大丈夫です」って言っても信用してもらえないだろうし、あたしにはすることがあったからだ。
あたしをもう一日ベッドの住人にしたがるメイドさんたちに苦笑いして、あたしは
「ちょっとそこまで散歩に行くだけ」
と普段着でふらっと外にでた。庭には夏の花が競演のように咲き乱れてあたしはしばし言葉を失った。「あたしが小さな世界に閉じこもっている間に、周りはこんなに変わっていたんだ」ってちょっと反省はしたけど、小さく息を吐いて気分を入れ替える。
気合を入れなおすって言い方が正しいのかも。
「よし、行こう」って呟いて、あらかじめ外の物置に用意しておいたお忍び用のローブと財布を持ちだし、それをわざわざ可愛い蓋つきの籠にいれて、あたしは堂々と門から家を出た。ローブは「いつも通り」家を出る前に引っ掛ける。
ちょっとした街ブラスタイル。そんな風を装う。
だけど、メイドさんには見られない様に細心の注意も忘れない。メイドさんに見つかったら「ちょっとお庭を散歩なのに、ローブ‥要りますか? 」って怖い顔されて‥最悪引き戻されちゃうだろうから、会わない様に注意しながら‥でも、堂々と門を出る。
あくまで「いつも通り」だ。変にこそこそしたら、かえって門番とかの記憶に残る。それは良くない! (← さりげなくさりげなくといいながら、めちゃ心の中はドキドキ。ハヅキは割と小心者なのだ)
流石に門番さん迄はあたしが倒れたって知らなかったようだ。「行ってらっしゃい」って快く見送ってくれた。
女の子が一人でふらりと街ブラする位なら大丈夫な程、この街は治安がいい。
現にハヅキは通勤の際には護衛を連れていない。だから街ブラだって「今日は一人なんだな」って位の感想しか持たれない。(ハズだ! )
ここで時間を取らない。とにかくさっさとここを離れる。これが重要!!
乗合馬車を捕まえて街に出て、更に馬車を乗り換えて向かう先は治療師協会。
初めて行く治療師協会は、閑静な住宅街の中にあった。
「意外。村はずれにポツンとあるのかと思ってた」
因みに、聖女協会はそういうところにある。聖女協会だけじゃない、魔術士が所属する協会は村はずれにある。村はずれっていうか、森の中に。曰く「森の中にはいい魔素があるから」らしい。でも、魔力が暴走して住人に迷惑を掛けたら困るからって方が大きいんだろうね。
治療師協会はその点、一番魔力を使わない職業だ。だから場所をそんなに選ばないってのはあるね。
「思ったより、小さい。もっと聖女協会みたいに「厳か~」って感じかと思ってた」
あっちはまあ、言うてもイメージ商売だからね。違うわな。例え張りぼてでも豪華な外観を作るわな。‥まあ、儲けてるから張りぼてにする必要なんかないか。
そんなことを思いながら治療師協会に入ったら、受付なんていなくって、そのまま事務机の前で仕事をする幹部たちの姿が目に飛び込んできた。皆書類に向き合ってて、そして、みんな顔色悪い。
うわ~ブラック企業~。
って苦笑い。ハヅキが来たことに気付いたのは一番若い幹部だった。きっと「一番下っ端が接客する」って決まってるんだろう。(皆人付き合いとか好きじゃなさそうな雰囲気してるから(笑))
学校から「協会巡り(見学)」をした時は、「それでも、もうちょっとは愛想良さそうだったけどな~」って、ちょっと思った。協会Topって言ってたから、やっぱ下はそうでもTopは流石にそんなこと言ってらんないんでしょう~て思ったんだけど‥どうやら無理してただけみたい。今は、「ザ・このブラック企業の親玉」みたいな険しい顔で書類を睨みつけ、あたしという来客が来たって言うのに書く手を止めもしないどころか、顔すら上げない。
来客って言っても、ここは普段一般人が来るような場所じゃない。だって治療院なわけじゃないんだもの。ここに用事があるのは、協会の会員とかそういう‥所謂一般人じゃない人々だけだ。(だからなんだろうね)
「何でしょう」
暫く経ってから、一番若い男の職員が、机からちょっと顔を上げて事務的に聞いて来た(「面倒だなぁ」て心の声が聞こえて来た!? おかしいな‥いつの間にあたし、人の心を読む力が!? ‥まあつまり、それっ位分かりやすい態度だったってこと! )。口調は丁寧だし、顔も一応笑顔なんだけど‥なんてぇかな‥目が笑ってない。「つまんない用事だったら叩き出すぞ」って顔に書いてある‥。目の下のクマ、えげつな~。
よく見るとこの前に会った幹部さんだった。あの時は落ち着いた雰囲気の、だけど「今どきの」お兄さん(と言うには微妙な歳? )だったのに、今はただの「目付き悪いオッサン」って感じになってる。(無精ひげ無精ひげ!! 朝からそれはヤバいでしょ! ‥もしかして、徹夜してる?? )
周りを見回すと、全員がそんな感じの風貌だった。
全員治療師に見てもらわなくちゃダメなレベルで顔色ヤバい人たちの集団だよ!! うわ~空気ヤバい!! なんか、どんよりしちゃってるよ!!
ってか、アンタら役職付きって言っても、治療師でしょう!? 治療師が体調管理出来ないとかさ~。マズいっしょ! 今は治療してないかもしれないけどさあ‥。
きっと普通の人だったら「すみません! お邪魔しました! 」って回れ右しちゃうところだろうけど、あたしは幸いそんなやわじゃない。にっこり笑って「シャリナールのハヅキです」と自己紹介(初めましてじゃないけど、自己紹介。覚えてないかもだからね)。幹部さんはあたしのことを認識していない様だったが、名前に憶えがあったらしく、「ああ、ハヅキ君ね」って言って席を立って、応接机(部屋があるわけではなく、ただ、机があるだけ)に案内してくれた。
お茶も幹部さんが自ら用意してくれた。
‥コーヒー? 出過ぎた紅茶?
よくわからない真っ黒な液体だった。あたしは無言でそれを見つめながら、『怪しい‥飲める気がしない‥せっかく用意してもらったけど‥』苦笑いした。
幹部さんはそれを(当たり前の様に)飲みながらハヅキが持って来た手土産のクッキーを無言でバリバリ食べた。かき込んでるって感じではないが、摘まむ手が止まらない。はじめは遠慮がちに伸ばされていた手が、次第に速くなる。その間終始、無言。一心不乱にポリポリ食べている。その食べっぷりは「摘まむ」というよりガチ食いって感じで、ハヅキは幹部さんに自分用に持って来ていたサンドイッチもそっと差し出した。
多分、食事をとる暇もない程忙しいのだろう。
幹部さんはあたしのサンドイッチをほんの少しの躊躇もなく(そして、何の疑問も抱かず)平らげた。そして、お腹が一段落して人心地ついたらしく、
「進級試験ね。了解しました。こちらで用意しときます」
と、この前同様落ち着いた口調で言った。顔色がちょっとよくなったようにも見える。(凄い。ご飯は偉大だ! あと、睡眠も取れたらいいんだけど! )
よかった。
(人心地ついたと同時に)我に返って、さっきまでの自分の醜態(?)を思い出したのか、ちょっと恥ずかしそうにしながら、上品に口の周りをハンカチでおさえる。慌てて食べたサンドイッチのクズに気が付いたのだろう。ハヅキは見ない振りをするために、例のお茶に口をつけた。
‥あ、これ、コーヒーだ。
やっぱ、眠気対策はコーヒーだよね~。
‥うわ~眠気対策で、すっごい濃く苦く淹れられてる~。身体に悪そ~。
傍から見ても、あからさまに苦そうな顔をしていたのだろう(それともサンドイッチのお礼か? )
「あ、砂糖いりますか? 」
幹部さんが聞いて来た。
‥砂糖より、ミルクかな。
ハヅキは首を振ってその申し出を辞退した。
『うん。これは‥眠気覚ましだと思って飲んでおこう。帰ったらまた仕事しなきゃだしね』
そして、要件を話し始める。幹部さんはあっさり、誰に許可を取ることなく、協会の事務所を会場に貸してくれる約束をしてくれた。
おや? 幹部さん、実は結構偉い人?? 一番若いパシリ的存在じゃなくて??
しかも‥すんごいあっさり承諾してくれたぞ? もしかして、機嫌がいい? だから、追加でお願い(ダメもとだ! )
「‥もう二人昇格試験希望者が増えても大丈夫ですか? 同じくシャリナールの治療師なんですが」
「勿論大丈夫ですよ。何なら、幹部を連れてシャリナールさんの方に行きましょうか? 」
ちょッとドキドキしながらきいたんだけど、これも、あっさり通った。
「是非! 」
あたしは前のめりで断言した。
なんと!! めちゃ親切だぞ!?
「‥いいんですか? あとで、なんか要求増やしてきたりしません? 」
つい、訝し気に聞いてしまったあたしに幹部さんはちょっとムカッと顔。
「‥私のこと貴女なんだと思ってるんですか!? 無理難題を言うヤバい上司とかですか? ‥別にね、貴女が出来ない様な事言ってませんよ。貴女なら出来ると思うから言ったんです。貴女は‥せっつかれないと動かないとこあるでしょ? 」
‥せっつかれないと動かない。‥何でアンタがそんなこと知ってる? いや、動きますよ!? ちゃんとせっつかれなくても。うん、そうせっつかれなくても‥。でも、こんなにはhardに動かんかったかな。(適正な仕事量が一番ですよね! )
つまり‥あたしは幹部さんに「せっつくとhardに動く人」って認識されて、幹部さんはそんなあたしにhardに動いて欲しかったってわけね‥。
‥え? イヤですよ?
ちらりと幹部さんを見ると、幹部さんは
「もう、悪者にしないでよ」
(冗談で? )「ヤレヤレ(笑)」みたいな顔するけど‥こちとら全然笑えねえぞ。アンタらのブラックさ、あたしたち下の者にも求めるのはヤメテよね!!
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