今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

文月

文字の大きさ
76 / 82
今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

皆と同じ感覚ってことですね! 

しおりを挟む
 あの人って、仕事が趣味なのかしら。嫌だね~潤いのない生活。寂しいネ!!

 思わずそんな「そんな訳ない」悪口が浮かんできた。
 そんな訳はない。勿論分かってる。ただ悪態ついただけだ。負け惜しみの類だ。全然彼に対して悪い感情はない。責任のある立場にあり、信頼され沢山の仕事を任され、そしてその仕事を遂行している彼が羨ましいだけだ。(嫌勿論全然「彼の様になりたい! 」とかではないけど、素直に「凄い」と認められるって感じ。いや‥あたしが認めるって‥上からか)
 今日じっくり話すことで、彼の人となりが分かった。‥気がする。ちょこっと。
 分かったからと言って、親近感が持てるようになったって感じはない。ほら、ライバルと戦って「お前の事‥認めるよ。(またこのセリフ「認める」だ。お前に認められてもねぇ‥)これからは邪魔し合うんじゃなくて、お互い切磋琢磨して高めあおうぜ☆」とかあるじゃん? そういうのじゃない。たださ、「苦手意識感じてたけど、そうでもないって分かった」って程度。

 上司の人となりが分かったことで「血の通ってない契約書を通したような命令」だったのが、上司からの直接の命令(血の通ったもの? )に変わった。
 あたしにとってはね。
 だけど、彼にとってのあたしの印象ってのが変わったかって言うと‥どうかなって感じ。

 多分彼にとってあたしの人格なんて(今でも、以前と変わらず)どうでもいい。あたしだから任せた、みたいなこと言ってたけど、そんな風に言われるほど、彼があたしのことを知っているわけがない。誰に対しても同じ命令をして、それを成し遂げた人間だけが彼に(この地点でやっと)信頼され、評価されるのだろう。(だから、今の地点ではあたしは彼に評価されていないどころか、信頼すらされていない)
 適当に「君なら出来る」って言っただけ。たぶんね、皆にそうしてるんだろう。馬鹿の一つ覚えみたいにね。
 何故って? 面倒だから。そこまでの愛情が他人に持てないから。
 きっとね、無事にあたしが彼の信頼を勝ち取ったところで、彼の中であたしの存在はきっと変わらない。
 「部下に任せた仕事が無事に完了してよかった」「彼女は信頼に値する人物だな。これからも任せよう」ってなるだけだ。
 あたしの結果を評価することはあっても、あたしという信頼するってことはきっとこの先ずっとないのだろう。

 だからといって、彼が部下を成果でしか評価しない「ダメ上司だ」って言っているのではない。
 愛される上司ではないが、信頼できる上司ではある。だってやることやってるんだから。ダメ上司ってのは、やることをやらない「不真面目な」上司のことを言う、とあたしは思う。その点、彼はまじめな人だ。
 そして、あの仕事量を見てたら誤解しちゃいそうになったけど、ワーホリとかでもないらしい。
 気が付いたら仕事をおし付けらえていた「間抜け」でも、進んでなんでもかんでも仕事を抱え込んじゃう「お人好し」でもない。あんな中でも、彼は「自分が任されて然る」仕事しか抱えていない。そしてそれを瞬時に、① 自分しか出来ない仕事、② 自分以外でも出来る仕事 ③ (自分の仕事に関係あるのだが)自分には出来ない仕事で分けて、それを意識して仕事している。分けたうえで、①、②は当たり前に自分でする。何故って、人に説明して手伝ってもらう方が彼にとって面倒だから。
 で、③を、運悪く彼の目に留まったあたしに丸投げされた‥ってことだろう。
 あたしの実力を評価されたわけではない。ただ、たまたま目に留まっただけだ。(報告書かなんかを読んでる時にあたしの不正(魔力譲渡)に気付いたとかだろう)

 たまたま、偶然、奇跡的もしくは、運命の出会いなんて、まあ、ない。
 
 雉も鳴かずば撃たれまいって話だ。雉が鳴いたところで気付かない人も居ようが(その他大勢の普通の人たち)雉を狙っている人間は雉の鳴き声(ここにいますよという状況証拠)を見逃さない。
 出る杭は打たれる同様、目立ちたくなかったら、じっと息を凝らして生きていかなければいけなかったんだ‥っ!
まあ、結果として、‥あたしにとって「悪いはなし」じゃなかった。
 ああいうのは、きっかけだ。
 あの人が無茶振りしてくれたことにより、あたしは「新しい技術」を考えるきっかけになった。
 さらに、あたしが作った治療の糸に麻酔(か? )の効果があることを指摘してくれた患者さんをきっかけに、治療の糸について、それ以前の原料である聖水について考えることになった。
 あの上司が「すぐS級上級治療師になれ」って無茶振りしてくれて、その為のbackupを約束してくれたから、予定より早くレベ上げする為努力した。‥努力することが出来た。
 だけど、S級上級治療師になることも、聖魔力とのコラボもあたしが目標としてきたことだ。それが、今回のことがきっかけで、早くに実現しそう‥って最高じゃないか? 

 何がきっかけでいい様に転ぶか分からない。苦しんだ時、困った時、一人で立ち止まって途方に暮れるんじゃなくて、周りを見渡せば助けてくれる人もいるかもしれないし、叱咤激励、自分を励まし更なる高みを目指すきっかけにもなり得る。
 人間、万事塞翁が馬ってほんとだよな。

 しかし‥(「雉も鳴かずば撃たれまい」然り)ことわざとかになって多くの人の共感を得てるってことを自分(偽物の魂)も「ホントにそう」って思ってるってことは‥あたしも随分普通の感覚になってきたってことですかね? 
 
 最後の最後に‥あたしは、皆と同じ感覚を持って生きることが出来たんだ‥。
 そう気付いた感想は‥でも、特にない。
 意外と「嬉しい! 」とも思わないし、「なのに、もう終わりなんだ」とも‥不思議と思わない。 
 そういうことを思うのが普通なのか、否かすら‥あたしにとってそれはどうでもいいことで、今のあたしにとっては「あたしという人間」を最後まで生き切ろう、ただ、それしかなかったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生しましたがモブが好き放題やっていたので私の仕事はありませんでした

蔵崎とら
恋愛
権力と知識を持ったモブは、たちが悪い。そんなお話。

異世界で悪役令嬢として生きる事になったけど、前世の記憶を持ったまま、自分らしく過ごして良いらしい

千晶もーこ
恋愛
あの世に行ったら、番人とうずくまる少女に出会った。少女は辛い人生を歩んできて、魂が疲弊していた。それを知った番人は私に言った。 「あの子が繰り返している人生を、あなたの人生に変えてください。」 「………はぁああああ?辛そうな人生と分かってて生きろと?それも、繰り返すかもしれないのに?」 でも、お願いされたら断れない性分の私…。 異世界で自分が悪役令嬢だと知らずに過ごす私と、それによって変わっていく周りの人達の物語。そして、その物語の後の話。 ※この話は、小説家になろう様へも掲載しています

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

夢でも良いから理想の王子様に会いたかったんです

さこの
恋愛
あれ?ここは? な、なんだか見覚えのある場所なんだけど…… でもどうして? これってよくある?転生ってやつ?? いや夢か??そもそも転生ってよくあることなの? あ~ハイハイ転生ね。ってだったらラッキーかも? だってここは!ここは!! 何処???? 私死んじゃったの?  前世ではこのかた某アイドルグループの推しのことを王子様なんて呼んでいた リアル王子様いるなら、まじ会いたい。ご尊顔遠くからでも構わないので一度いいから見てみたい! ーーーーーーーーーーーーーーーー 前世の王子様?とリアル王子様に憧れる中身はアラサーの愛され令嬢のお話です。 中身アラサーの脳内独り言が多くなります

前世を思い出した我儘王女は心を入れ替える。人は見た目だけではありませんわよ(おまいう)

多賀 はるみ
恋愛
 私、ミリアリア・フォン・シュツットはミターメ王国の第一王女として生を受けた。この国の外見の美しい基準は、存在感があるかないか。外見が主張しなければしないほど美しいとされる世界。  そんな世界で絶世の美少女として、我儘し放題過ごしていたある日、ある事件をきっかけに日本人として生きていた前世を思い出す。あれ?今まで私より容姿が劣っていると思っていたお兄様と、お兄様のお友達の公爵子息のエドワルド・エイガさま、めちゃめちゃ整った顔してない?  今まで我儘ばっかり、最悪な態度をとって、ごめんなさい(泣)エドワルドさま、まじで私の理想のお顔。あなたに好きになってもらえるように頑張ります! -------だいぶふわふわ設定です。

あなたの事は好きですが私が邪魔者なので諦めようと思ったのですが…様子がおかしいです

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のカナリアは、原因不明の高熱に襲われた事がきっかけで、前世の記憶を取り戻した。そしてここが、前世で亡くなる寸前まで読んでいた小説の世界で、ヒーローの婚約者に転生している事に気が付いたのだ。 その物語は、自分を含めた主要の登場人物が全員命を落とすという、まさにバッドエンドの世界! 物心ついた時からずっと自分の傍にいてくれた婚約者のアルトを、心から愛しているカナリアは、酷く動揺する。それでも愛するアルトの為、自分が身を引く事で、バッドエンドをハッピーエンドに変えようと動き出したのだが、なんだか様子がおかしくて… 全く違う物語に転生したと思い込み、迷走を続けるカナリアと、愛するカナリアを失うまいと翻弄するアルトの恋のお話しです。 展開が早く、ご都合主義全開ですが、よろしくお願いしますm(__)m

攻略対象者の婚約者を持つ姉の代わりに、エンディングを見てきました

犬野きらり
恋愛
攻略対象者の婚約者を持つ姉の代わりに、エンディングを見てきました… というタイトルそのままの話です。 妹視点では、乙女ゲームも異世界転生も関係ありません。 特に私(主人公)は出しゃ張たりしません。 私をアピールするわけでもありません。 ジャンルは恋愛ですが、主人公は恋愛していません、ご注意下さい

【完結】断りに行ったら、お見合い相手がドストライクだったので、やっぱり結婚します!

櫻野くるみ
恋愛
ソフィーは結婚しないと決めていた。 女だからって、家を守るとか冗談じゃないわ。 私は自立して、商会を立ち上げるんだから!! しかし断りきれずに、仕方なく行ったお見合いで、好みど真ん中の男性が現れ・・・? 勢いで、「私と結婚して下さい!」と、逆プロポーズをしてしまったが、どうやらお相手も結婚しない主義らしい。 ソフィーも、この人と結婚はしたいけど、外で仕事をする夢も捨てきれない。 果たして悩める乙女は、いいとこ取りの人生を送ることは出来るのか。 完結しました。

処理中です...