今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

文月

文字の大きさ
77 / 88
今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

物語の終わりと続き(side 「担当さん」・ヒツジ)

しおりを挟む
 天上の図書館には、試作品‥ハヅキたちの様な人口の魂‥の転生の記録が納められた棚がある。
 試作品毎に分けられ、棚は12庫。
 1番目のムツキの本は一冊。全くの悲劇だ。神様も悲しいからだろう。手垢も折癖も殆どついていない‥薄い本だ。だけど、「忘れないように」と神様もヒツジたち代行者(ハヅキの言うところの「担当さん」)たちもその本を大事にしている。
「同じ失敗は繰り返さないぞ‥」 
 とこころに刻みながら、ここに立ち寄った者は全員その本に敬礼をしていくのだ。
 2以降ハヅキに至るまでは、殆ど「神の試行錯誤」「努力の軌跡」みたいな感じだ。
 8ハヅキで神様は「元気ならそれでいいじゃない」って真理に行きついたようだ。‥まあ、ちょっと諦めた感もあるのかな。
 さて、そのハヅキの「転生のストーリー(物語)」は順調? に9冊目を終え、今10冊目の人生を送っている。
 そう。
 今まで、ハヅキたち試作品は、「魂が完全ではないので」仮の世界で仮に生活していたにすぎないのだ。
 (例えばハヅキだったら)ハヅキの人生の終了(死亡)と共に、ハヅキの住んでいた世界も終わっていた。その人生を記録したのが、「ハヅキ、X回目の人生」で、その時のハヅキが生まれた時から死ぬまでの「人生」が書かれている。
 伝票みたいに「何年何月何日 ハヅキ誕生」みたいなシンプルな記録ではない。ハヅキが見た世界。担当がハヅキを見守って思ったこと‥そういうもので構成されている。
 神の目って言うかな‥そういう「全てを見透かした」様な記録はない。
 ハヅキが見た「ハヅキ視点」と他人である担当が見た「他者の視点」によって書かれている記録書で、物語と言ったもののそこにエンタメ性はない。ノンフィクション小説ってやつかな。
 その記録は、ハヅキが実際に過ごして来た記録=ノンフィクションなのだが、ハヅキは「普通の魂」ではないし、生きて来た人生もまた「作られた世界」での記録だから‥あえて「物語」と表現しているのだ。

 一話完結。続編の存在しない物語。
 まるで、パタンと本を閉じるように‥
 ハヅキの人生の終了をもって、その世界は終了する。

 それはどういうことかと言うと、
 ハヅキの結婚相手のその後の人生‥「その後、彼は死ぬまでハヅキを想って生きました」やら、「再婚して、ハヅキの子供には異母兄弟が出来ました」という話(サイドストーリー)がこの世界中どこを探しても存在することもないってことなのだ。同じステージにハヅキが転生しても、ハヅキがハヅキの子孫にまた別の人生で出会うことも絶対にないし、それはナガツキや他の試作品の子孫についても言える。
 そのステージは、設定だけが同じで、(主人公の死後)リセットされた後だから。それが普通ってわけだ。(普通というか)それだけは守られなければいけない「絶対の」ルールといったらいいだろうか? 

 なのに‥
 今回運営側は、とんでもないことをしてしまった。
「‥手違いで、ナガツキとハヅキの「人生」が交わってしまった」
 それは「そんなこともあるわ」「一種のコラボ作品だ(笑)」で済まされるような単純な話ではない。
 純粋な実験の経過観察が出来なくなるのだ。
 ホントは、そんな無駄な実験すぐにやめさせたいのだが‥試験管の中の実験とは違ってこの実験は始まったら最後、どちらもが死亡するまでやめることが出来ない。
 せめて観察対象同士が関わり合いを持たなければ少しはましだったのに‥もうどうしようもない程二人は関わり合ってしまった。
 よりによって、観察対象A(ナガツキ)の息子と観察対象B(ハヅキ)が恋仲になるなんて‥。
 それに気付いた時、ハヅキの担当者・ヒツジは頭を抱えた。
「全然さ、‥俺のせいやないんやけど、後から来たのは俺で、俺かサル(ナガツキの担当者)のどっちがより悪くないかと言われると、元から物語を紡いでいたサルたちの方が‥より悪くない。
 俺たち(ヒツジ、ハヅキ)は言うならば、彼ら(サル、ナガツキ)の物語に割り込んだことになる」 
 ホンマに‥最悪や。
 通常なら、ナガツキの物語は、「人を美醜で判断しない女神の様な美人・ナガツキが周りの中傷やら差別に負けず、醜男で更に獣人である(が、ナガツキにとってはタイプドンピシャ)男と出会い、紆余曲折あってやがて結婚し、3人の子供を授かる。だけど、不幸にも三人目の子供(オズワルド)は父親似で彼だけは周りから差別され、不幸な人生を送るしかないかのように思われた。だけど、ナガツキたち家族‥特に家族に愛されるナガツキの努力の賜物‥のお陰で人生を悲観することなく、彼なりに幸せな人生を送るために努力することを彼の家族に誓う。そして、最愛の夫と、二人の息子(マルクスとシュナイエス)そして彼らの子供たちとオズワルド(独身)に囲まれて、その人生を終える‥みたいな所をサルなら狙っていたのだろう。狙って必ずしもそうなるわけではないだろうが(主演はあくまでもナガツキだから)「そうなればいいな」みたいなことを思っていたはずだ。
 狙いは「周りの差別にも負けない強い心」をはぐくむってところか? 
 まあ‥今回のことが無ければそうなっていただろう。
 なのに‥だ。
 ハヅキがその世界に迷い込むことによって彼らの物語はすっかり違うものに変わってしまった。
 ハヅキとオズワルドが恋仲になった。誰にも選んでもらえないはずだったオズワルドを選ぶ者が現れてしまった。それがハヅキだった。そして、彼らを中心に物語はどんどん別の方向に動き出している。今現在も、進行形で。今のまま、今後も二人の人生が交差したままだったら‥ナガツキの死後、オズワルドたち(三人の息子と彼女の夫)の人生を消し去ることが出来なくなる。
 その内二人に子供が出来たら?
 話はもっと大袈裟に変わっていくのだろう。
 考えただけで頭が痛くなる。

「ハヅキは今回、10回の転生の終えれば、「普通の魂」として‥通常なら「通常の世界」で生きていくことになる。ホース先輩の担当‥フミツキ同様、神様は「試作品が一番幸せを感じたであろう世界」での「物語の続き」を試作品にプレゼントするだろう。
 通常迄の「死んだらおしまい」と違って、フミツキの子供は世界に残り続け、再び「普通の魂」となったフミツキが輪廻転生したら‥もしかして、彼女の子孫と出会うこともあるかもしれない。
 だけど問題ない。フミツキは以前と容姿が違っているし、もうフミツキに以前の記憶はない。
 その世界は‥やがて穏やかに「通常の世界」と交じり合い、試作品もナチュラルに「普通の人間」となっていく‥
 続きの有り無し。そして、記憶の有り無し。我々担当が何か(容姿)を決めたり、アドバイスその他、手を貸すことが出来なくなること。
 それが今までの転生と「これから」の(輪廻)転生との違い。
 「試作品が一番幸せを感じたであろう世界」での「物語の続き」。それは‥ハヅキにとっては、確実に今回。
 ハヅキはこの世界で死を迎え、そして‥普通の魂となりこの世界で輪廻転生の機会を待つ。
 ハヅキの忘れ形見が存在するこの世界で‥」
 ロマンチックな話だ。
 世界丸ごと子供(試作品)にプレゼントする‥ホントに素晴らしく親バカでホントに‥ロマンチックな話だ。
「だけど、その「記念すべき世界」は今、別の試作品もログインしている世界で、そして‥ハヅキは別の試作品の息子と恋仲‥」
 もう、ため息しか出ない。
「もういっそ、ナガツキも一緒に(転生人生を)卒業しちゃって、この世界に残ってもらっちゃう?? 」
 ナガツキはまだ10回の転生を終えていないけれど、ナガツキは‥ハヅキの失敗(何度かの転生の記録)を踏まえて作られたハヅキの(ちょっとばかし)上位種だ。
「ハヅキのお祝いってことで‥サルにはちょっと折れてもらおうか‥」
 あ~サルになんて言おう。
「大丈夫、アンタんとこのナガツキさんやったら問題ないわ」
 って言う?
 うわ~、いややわ~。後輩やしな~。俺、アイツのこと苦手やしな~。(← 私情。そして、本音)
 俺は全然わるないのに、悪ないのに!! (あんまり悔しくて二度言いました)
 何で、俺がこんなことで悩まなあかんねん。ホンマ、運営の奴ええ加減にせえよな‥
 ヒツジは深い深いため息をついた。

 まあ、あの二人(ハヅキ、オズワルド)が別れてハヅキが「もう、オズワルドさんどころか、オズワルドさんの家族にも絶対会いたくないわ!! 」ってでもなったら、別やけどな。で、そのままナガツキが死んだら‥その瞬間にオズワルドたち‥ナガツキ関係者の記憶はハヅキたちの人生からその記憶ごとすっぱり消え去らせることができるんやけどね。
 その後は、「ナガツキの物語」「ハヅキ10回目の物語」という別々の物語として本に収められる。

「でも、オズワルドがいて、今のハヅキがある。この先‥もし、ハヅキとオズワルドが別れても、ハヅキの記憶からオズワルドを消し去ることは出来ない‥」
 だけど‥それがどうしたというだろう。
「別に、それでも構わない‥か。
 ハヅキにいい影響を与えてくれた、今後ハヅキが前向きに人生を過ごせる「切っ掛け」になってくれただけのことだ」
 オズワルドが「別れても尚ハヅキに付きまとう」とかハヅキの人生に迷惑を掛けない限り、二人のことは成り行きに任せたらいいか。
 もう一度深いため息をついたヒツジだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

十八歳で必ず死ぬ令嬢ですが、今日もまた目を覚ましました【完結】

藤原遊
恋愛
十八歳で、私はいつも死ぬ。 そしてなぜか、また目を覚ましてしまう。 記憶を抱えたまま、幼い頃に――。 どれほど愛されても、どれほど誰かを愛しても、 結末は変わらない。 何度生きても、十八歳のその日が、私の最後になる。 それでも私は今日も微笑む。 過去を知るのは、私だけ。 もう一度、大切な人たちと過ごすために。 もう一度、恋をするために。 「どうせ死ぬのなら、あなたにまた、恋をしたいの」 十一度目の人生。 これは、記憶を繰り返す令嬢が紡ぐ、優しくて、少しだけ残酷な物語。

セーブポイントに設定された幸薄令嬢は、英雄騎士様にいつの間にか執着されています。

待鳥園子
恋愛
オブライエン侯爵令嬢レティシアは城中にある洋服箪笥の中で、悲しみに暮れて隠れるように泣いていた。 箪笥の扉をいきなり開けたのは、冒険者のパーティの三人。彼らはレティシアが自分たちの『セーブポイント』に設定されているため、自分たちがSSランクへ昇級するまでは夜に一度会いに行きたいと頼む。 落ち込むしかない状況の気晴らしにと、戸惑いながらも彼らの要望を受け入れることにしたレティシアは、やがて三人の中の一人で心優しい聖騎士イーサンに惹かれるようになる。 侯爵家の血を繋ぐためには冒険者の彼とは結婚出来ないために遠ざけて諦めようとすると、イーサンはレティシアへの執着心を剥き出しにするようになって!? 幼い頃から幸が薄い人生を歩んできた貴族令嬢が、スパダリ過ぎる聖騎士に溺愛されて幸せになる話。 ※完結まで毎日投稿です。

没落令嬢の子育て記。12世紀ドイツに似た異世界で、拾った子犬がイケメン精霊犬になりまして

ねこまんまる
恋愛
私が転生してしまったのは、ユリウス歴1150年。 赤髭王フリードリヒ1世が在位する、12世紀中世ドイツに酷似した異世界だった。 この世界の中欧は、神聖ローマ帝国の皇帝権とローマ教皇の宗教的権威が激しくぶつかり合う、戦乱のただなかにある。   ボヘミア王国(※現在のチェコあたり)の辺境で、小領主に仕える下級騎士の娘として静かに生きていた16歳の私だったが―― 父は皇帝派と教皇派の争いに巻き込まれ、帰らぬ人となった。   こうして私は、領地も保護者も失った「居場所のない没落令嬢」へと転落する。 行き場をなくした私は、帝国の北東の果て、 森と丘陵が連なる寒冷地帯――シレジア地方へ向かい、ボヘミア系とドイツ系移民が入り混じる貧しい開拓村で、新しい生活をはじめることになった。   ところが、村へ到着したその日。 道ばたに置かれた木箱の中で震えていた、四匹の子犬と出会う。 「……かわいいけど、どうしよう。 私だって、明日をどう生きるかも分からないのに……」 没落令嬢の私には、金も身分もない。 けれど放ってはおけず、子犬たちを抱き上げた。 飢えた体を温め、必死に育てているうちに―― ある朝、彼らは犬耳の生えた少年たちに変わっていた。 どうやら彼らは、この異世界に古くから伝わる “森の精霊犬”の子どもだったらしい。 無邪気で、人懐っこくて、やたらと私に甘えてくる。 それなのに――。 反抗期がまったく来ない。 命がけで守った“子犬たち”は、すくすく育ち、戦闘能力が高い、耳もふわふわなイケメンに成長した。 そして、ますます慕い方が激しくなるばかり。 ……いや、育ての親としてはうれしいけど、そろそろ距離感というものを覚えてください。 (※年代、国、地名、物などは史実どうりですが、登場人物は実在してません。 魔法やモンスターなど、史実にはないものもあります)

【完結】ここって天国?いいえBLの世界に転生しました

三園 七詩
恋愛
麻衣子はBL大好きの腐りかけのオタク、ある日道路を渡っていた綺麗な猫が車に引かれそうになっているのを助けるために命を落とした。 助けたその猫はなんと神様で麻衣子を望む異世界へと転生してくれると言う…チートでも溺愛でも悪役令嬢でも望むままに…しかし麻衣子にはどれもピンと来ない…どうせならBLの世界でじっくりと生でそれを拝みたい… 神様はそんな麻衣子の願いを叶えてBLの世界へと転生させてくれた! しかもその世界は生前、麻衣子が買ったばかりのゲームの世界にそっくりだった! 攻略対象の兄と弟を持ち、王子の婚約者のマリーとして生まれ変わった。 ゲームの世界なら王子と兄、弟やヒロイン(男)がイチャイチャするはずなのになんかおかしい… 知らず知らずのうちに攻略対象達を虜にしていくマリーだがこの世界はBLと疑わないマリーはそんな思いは露知らず… 注)BLとありますが、BL展開はほぼありません。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

異世界で悪役令嬢として生きる事になったけど、前世の記憶を持ったまま、自分らしく過ごして良いらしい

千晶もーこ
恋愛
あの世に行ったら、番人とうずくまる少女に出会った。少女は辛い人生を歩んできて、魂が疲弊していた。それを知った番人は私に言った。 「あの子が繰り返している人生を、あなたの人生に変えてください。」 「………はぁああああ?辛そうな人生と分かってて生きろと?それも、繰り返すかもしれないのに?」 でも、お願いされたら断れない性分の私…。 異世界で自分が悪役令嬢だと知らずに過ごす私と、それによって変わっていく周りの人達の物語。そして、その物語の後の話。 ※この話は、小説家になろう様へも掲載しています

悪役令嬢だけど、私としては推しが見れたら十分なんですが?

榎夜
恋愛
私は『花の王子様』という乙女ゲームに転生した しかも、悪役令嬢に。 いや、私の推しってさ、隠しキャラなのよね。 だから勝手にイチャついてて欲しいんだけど...... ※題名変えました。なんか話と合ってないよねってずっと思ってて

【完結】恋につける薬は、なし

ちよのまつこ
恋愛
異世界の田舎の村に転移して五年、十八歳のエマは王都へ行くことに。 着いた王都は春の大祭前、庶民も参加できる城の催しでの出来事がきっかけで出会った青年貴族にエマはいきなり嫌悪を向けられ…

処理中です...