今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです! 

文月

文字の大きさ
14 / 88
担当者さんが途中経過を見て、ダメだししてきました。

12.今世はいっぱい考えるんです3。(もうちょっと8回目)

しおりを挟む
 クリスさんとのお付き合いは楽しかった。
 全然、ドキドキはしなかった。
 それはでも、クリスさんも同じだと思う。
 ただただ、楽しかっただけ。
 幼い子供たちのように手を繋いで走ったり、湖にお弁当を持って行ってピクニックして、熱くなったら飛び込んだり。
 そこにワクワクはあったけど、ドキドキはなかった。
 だけどね、それをあたしたちは不思議だとも不満だとも思わなかったんだ。
「恋なんてのをして、絵になるのは美男美女だけだ」
「そうそ、凡人がそんなことするの誰も見たくない」
 そう笑いあった。
 そうだ、美人になりたかったのは‥「美人になったらキラキラする恋愛物語の登場人物の資格」を得ることが出来るから。 
 あたしは‥
 キラキラした恋愛物語の登場人物になりたかったんだ。
 できれば‥キラキラ美しいヒロインになって見たかった。
 だけど、それは夢物語。
 あたしたち凡人は、凡人らしい楽しみ方をすればいい。
 キラキラした美人は、水浸しになって湖で遊んだり、「ドキドキなし」で手を繋いで走り回ったり出来ない。
 美人は美人だってだけで「自分で暮らしていく術」を考えないでいいから(← 偏見)裁縫とか覚えなかっただろうしね。
 そうそう‥
 今世では活躍の場がなかったけど‥
 あたしは裁縫が得意なんだ‥。

「実は裁縫が得意なんだ」 
 ってクリスさんに言ったら
「妹に服を作ってあげて! 」
 って頼まれて、妹さんを採寸してエプロンドレスを作ったり。
 妹さんも「ハヅキちゃんハヅキちゃん」って懐いてくれて‥
 すっごく楽しい毎日を送った。

 クリスさんは「付き合おう」とは言ったけど、「結婚しよう」とか「両親に会って」って言うことはなかった。どころか‥あたしのこと「好き」って言うことすらなかった。それは妹のムツミも同じで、あたしに凄くなついていたし「ハヅキちゃんがホントのあたしのお姉ちゃんだったらよかったのに」って言うことはあったが「お姉ちゃんになってくれたら嬉しいな」って言うことはなかった。
 二人は、初めっから一貫してたんだ。
 この付き合いは恋ではあっても、愛にはならないって‥。
 ‥そして、それはあたしも同じだったのかもしれない。

 将来結婚するわけじゃないから、今が楽しければいい。
 この恋が唯一の恋でも、ましては最後の恋でもないって‥。
 特にね、あたしの人生は「もしダメでも」やり直しがきくんだ。
 だって、まだ8回目だ。
 終わっちゃうまであと2回もある。

 ただ、今は‥
 この楽しさを失うのは嫌だって思った。
 この楽しい時間を「無駄なことしてる」って思うことだけは嫌だった。
 どうせ、死んで新しい人生が始まった時には忘れてしまう記憶だとしても‥
 あたしはこの楽しい気持ちだけは忘れないって思った。
 恋することを初めて楽しいって思えた。この気持ちだけは忘れない‥。

 楽しいまま、
 この時間は終わった。
 クリスさんの
「ハヅキちゃん、今まで楽しかった! やっと結婚する覚悟が出来た」
 一言で。
 クリスさんは彼の婚約者と結婚した。 
 クリスさんは実は貴族で、彼には生まれつき婚約者がいたのだってことを後でムツミちゃんから聞いた。
 結婚式の前、クリスさんは最後にあたしと会って
「碌に会ったこともない人と結婚して、自由に恋も出来ずに‥楽しいって思える時間もないまま年を取るのを強いられた人生が嫌で嫌で家を出たんだ。
 5年だけって約束で家族はそれを容認してくれた。
 ムツミはホントは妹じゃなくて、ボディーガード兼監視役だったんだ」
「ハヅキちゃんにはホント感謝している。
 僕のこと好きになることもなく、何も聞かずに僕の相手をしてくれてありがとう。
 ‥君は、これからも一番僕の大事な友だちだ」
 って言った。
 キラキラの笑顔‥「もう遊びきった」「満足した」って顔で。
 これからも、でも、あたしと「今まで通り友だちでいられる」って少しも疑ってない顔で。
 遊びきって満足して、これからは既婚者‥一人前の貴族として暮らしていく。今まで楽しい時間を共有した友だちであるあたしとはこれからもいい友だちとして続けていきたい。
 そして、いずれあたしが誰か他の人と結婚して子供が産まれたら、お互いの子供も含めて家族ぐるみで付き合っていこう。それはきっと楽しいだろう。
 そう語るクリスの目は、いつも通りキラキラしてたけど‥
 あたしは「そうだね」っていつものように言うことはなかった。

 好きになることもなく‥って、何でアンタが言うんだ?
 ‥決めつけるんだ?

 あたしが「ホントは好きだったんだよ。あたしの時間を返して! 」って泣きわめいて、婚約者に食って掛かったらどうするつもりだったんだ?
 ‥しないけど。
 そんなことしようとしたら、そこのムツミちゃん(ボディーガード兼監視役)に消されちゃうんでしょ?
 今は笑顔だけど‥あたしに殺意を向けて‥その顔が変わっちゃったら‥きっと、ホントに悲しいだろう。
 何より 
 今までの楽しい時間を無駄なものに変えちゃうのはホントに嫌だったから‥
 あたしは苦笑いして、無言で頷いた。
 「そうだね」って言葉は‥どうしても出なかったんだ。
 喉が張り付いたみたいに‥声が出なかった。
 あたしは、慌てて‥持ってた水を喉に流し込んだ。 
 あんまり慌てて飲んだから、むせ返りそうになったあたしにクリスさんは
「どうした? ハヅキちゃんはあわてんぼうだなあ」
 って笑った。
 優しい手つきであたしの背中をさする。
 相変わらず、恋愛の「レ」の感情もない行為。
「大丈夫」
 あたしはするり、とクリスさんの手を躱す。

 あたしの方こそ、今まで‥楽しかった。今まで生きてきた中で一番楽しかった。
 楽しかった。けど‥
 けどね。

「今まで楽しかったね。
 だけど‥
 これから先も友だち、は御免だ。
 楽しかったね、こんなこともあったね、
 で、終わりだ。
 もう、友だちだと思わないで欲しい」
 あたしは精一杯の笑顔で言って、振り返りもせずクリスさんと別れた。
 
 クリスさんは最後に傷付いたみたいに「ハヅキ‥? 」って一言呟いたが、でもそれ以上何も言わず席を立った。
 お互い、別の方向に向かって歩き出す。

 あたしたちの人生がその後交差することはなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

十八歳で必ず死ぬ令嬢ですが、今日もまた目を覚ましました【完結】

藤原遊
恋愛
十八歳で、私はいつも死ぬ。 そしてなぜか、また目を覚ましてしまう。 記憶を抱えたまま、幼い頃に――。 どれほど愛されても、どれほど誰かを愛しても、 結末は変わらない。 何度生きても、十八歳のその日が、私の最後になる。 それでも私は今日も微笑む。 過去を知るのは、私だけ。 もう一度、大切な人たちと過ごすために。 もう一度、恋をするために。 「どうせ死ぬのなら、あなたにまた、恋をしたいの」 十一度目の人生。 これは、記憶を繰り返す令嬢が紡ぐ、優しくて、少しだけ残酷な物語。

セーブポイントに設定された幸薄令嬢は、英雄騎士様にいつの間にか執着されています。

待鳥園子
恋愛
オブライエン侯爵令嬢レティシアは城中にある洋服箪笥の中で、悲しみに暮れて隠れるように泣いていた。 箪笥の扉をいきなり開けたのは、冒険者のパーティの三人。彼らはレティシアが自分たちの『セーブポイント』に設定されているため、自分たちがSSランクへ昇級するまでは夜に一度会いに行きたいと頼む。 落ち込むしかない状況の気晴らしにと、戸惑いながらも彼らの要望を受け入れることにしたレティシアは、やがて三人の中の一人で心優しい聖騎士イーサンに惹かれるようになる。 侯爵家の血を繋ぐためには冒険者の彼とは結婚出来ないために遠ざけて諦めようとすると、イーサンはレティシアへの執着心を剥き出しにするようになって!? 幼い頃から幸が薄い人生を歩んできた貴族令嬢が、スパダリ過ぎる聖騎士に溺愛されて幸せになる話。 ※完結まで毎日投稿です。

【完結】ここって天国?いいえBLの世界に転生しました

三園 七詩
恋愛
麻衣子はBL大好きの腐りかけのオタク、ある日道路を渡っていた綺麗な猫が車に引かれそうになっているのを助けるために命を落とした。 助けたその猫はなんと神様で麻衣子を望む異世界へと転生してくれると言う…チートでも溺愛でも悪役令嬢でも望むままに…しかし麻衣子にはどれもピンと来ない…どうせならBLの世界でじっくりと生でそれを拝みたい… 神様はそんな麻衣子の願いを叶えてBLの世界へと転生させてくれた! しかもその世界は生前、麻衣子が買ったばかりのゲームの世界にそっくりだった! 攻略対象の兄と弟を持ち、王子の婚約者のマリーとして生まれ変わった。 ゲームの世界なら王子と兄、弟やヒロイン(男)がイチャイチャするはずなのになんかおかしい… 知らず知らずのうちに攻略対象達を虜にしていくマリーだがこの世界はBLと疑わないマリーはそんな思いは露知らず… 注)BLとありますが、BL展開はほぼありません。

没落令嬢の子育て記。12世紀ドイツに似た異世界で、拾った子犬がイケメン精霊犬になりまして

ねこまんまる
恋愛
私が転生してしまったのは、ユリウス歴1150年。 赤髭王フリードリヒ1世が在位する、12世紀中世ドイツに酷似した異世界だった。 この世界の中欧は、神聖ローマ帝国の皇帝権とローマ教皇の宗教的権威が激しくぶつかり合う、戦乱のただなかにある。   ボヘミア王国(※現在のチェコあたり)の辺境で、小領主に仕える下級騎士の娘として静かに生きていた16歳の私だったが―― 父は皇帝派と教皇派の争いに巻き込まれ、帰らぬ人となった。   こうして私は、領地も保護者も失った「居場所のない没落令嬢」へと転落する。 行き場をなくした私は、帝国の北東の果て、 森と丘陵が連なる寒冷地帯――シレジア地方へ向かい、ボヘミア系とドイツ系移民が入り混じる貧しい開拓村で、新しい生活をはじめることになった。   ところが、村へ到着したその日。 道ばたに置かれた木箱の中で震えていた、四匹の子犬と出会う。 「……かわいいけど、どうしよう。 私だって、明日をどう生きるかも分からないのに……」 没落令嬢の私には、金も身分もない。 けれど放ってはおけず、子犬たちを抱き上げた。 飢えた体を温め、必死に育てているうちに―― ある朝、彼らは犬耳の生えた少年たちに変わっていた。 どうやら彼らは、この異世界に古くから伝わる “森の精霊犬”の子どもだったらしい。 無邪気で、人懐っこくて、やたらと私に甘えてくる。 それなのに――。 反抗期がまったく来ない。 命がけで守った“子犬たち”は、すくすく育ち、戦闘能力が高い、耳もふわふわなイケメンに成長した。 そして、ますます慕い方が激しくなるばかり。 ……いや、育ての親としてはうれしいけど、そろそろ距離感というものを覚えてください。 (※年代、国、地名、物などは史実どうりですが、登場人物は実在してません。 魔法やモンスターなど、史実にはないものもあります)

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

異世界で悪役令嬢として生きる事になったけど、前世の記憶を持ったまま、自分らしく過ごして良いらしい

千晶もーこ
恋愛
あの世に行ったら、番人とうずくまる少女に出会った。少女は辛い人生を歩んできて、魂が疲弊していた。それを知った番人は私に言った。 「あの子が繰り返している人生を、あなたの人生に変えてください。」 「………はぁああああ?辛そうな人生と分かってて生きろと?それも、繰り返すかもしれないのに?」 でも、お願いされたら断れない性分の私…。 異世界で自分が悪役令嬢だと知らずに過ごす私と、それによって変わっていく周りの人達の物語。そして、その物語の後の話。 ※この話は、小説家になろう様へも掲載しています

悪役令嬢だけど、私としては推しが見れたら十分なんですが?

榎夜
恋愛
私は『花の王子様』という乙女ゲームに転生した しかも、悪役令嬢に。 いや、私の推しってさ、隠しキャラなのよね。 だから勝手にイチャついてて欲しいんだけど...... ※題名変えました。なんか話と合ってないよねってずっと思ってて

【完結】恋につける薬は、なし

ちよのまつこ
恋愛
異世界の田舎の村に転移して五年、十八歳のエマは王都へ行くことに。 着いた王都は春の大祭前、庶民も参加できる城の催しでの出来事がきっかけで出会った青年貴族にエマはいきなり嫌悪を向けられ…

処理中です...